地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年9月中央の動き

◎空き地の「管理」を法定化し活用推進へ ― 国交省

国交省の土地政策研究会は7月3日、中間取りまとめを公表した。土地の有効利用と継続的管理のため「管理」を国土・土地利用の法体系に位置付け、空き地の活用推進など新たな制度創設を盛り込んだ。具体的には、空き地等の利活用・管理のノウハウを持つ組織を法的に位置付け活動を支援するほか、遠隔地の所有者が土地管理を安心して任せられる法人・団体を自治体が登録し紹介する。また、宅地化抑制や空き地等の利用転換など今後の土地利用・管理の方針を自治体が明記し土地利用を誘導するほか、グリーンインフラを法的に位置付けて空き地等の農園・菜園利用を推進する。このほか、管理不全土地に対する勧告・命令・代執行などの是正措置の法的根拠を整備するとした。

一方、国交省は6月26日、「土地の戸籍」の調査実施状況を発表した。2023年度末の調査実績は692平方キロ㍍で、進捗率は全国の地籍調査対象地域で53%、優先実施地域で80%となった。また、新たに導入された「航測法」が22年度は27市町で41平方キロ㍍、23年度は36市町村で44平方キロ㍍で実施された。

◎事務次官に旧郵政省の竹内芳明氏が就任 ― 総務省

総務省は7月5日付で幹部人事を発令した。退任する内藤尚志総務事務次官の後任に旧郵政省出身の竹内芳明総務審議官が就任。また、総務審議官に就任した原邦彰消防庁長官の後任に池田達雄自治税務局長が就任。自治税務局長には寺﨑秀俊復興庁統括官付審議官が就任。復興庁統括官に出向した山野譲自治行政局長の後任には阿部知明デジタル庁統括官付審議官が就任した。なお、大沢博自治財政局長は続投する。

このほか、大臣官房審議官(地方行政・個人番号制度、地方公務員制度、選挙担当)に新田一郎自治財政局財政課長、同審議官(財政制度・財務担当)に須藤明裕内閣審議官(内閣感染症危機管理統括庁)、同審議官(税務担当)に伊藤正志地方税共同機構審議役兼事務局長、同審議官(公営企業担当)に清田浩史自治行政局選挙課長がそれぞれ就任した。

◎主権者教育を国民運動へリーフレット ― 3議長会

全国都道府県議会議長会は7月5日、第1回主権者教育リーフレット有識者会議を開いた。昨年4月の地方自治法改正で地方議会の役割と議員の職務等が明記されたことを受けて、同会など議会3団体はさらなる地方議会への関心・理解を高めるため主権者教育を国民運動として進めることにし、その一環としてこのほど「地方議会が進める主権者教育事例集」を作成。さらに、各地方議会で今後実施する主権者教育事業で配布する「主権者教育リーフレット」を作成する。

一方、総理大臣主催の都道府県議会議長との懇談会が7月25日、首相官邸で開催された。毎年開催しているもので、岸田首相は「DX(デジタル・トランスフォーメーション)やAI(人工知能)の活用で行政サービスの持続可能性の確保に取り組む。こども・子育て支援を抜本的に強化する。地方も連携した取組をお願いする」と述べた。これを受けて山本全国都道府県議会議長会会長は「地方創生の更なる前進や主権者教育、多様な人材が地方議員に立候補しやすい環境整備に取り組んでいる」などと述べた。

◎消火用ドローンなどの整備を提言 ― 総務省消防庁

総務省消防庁は7月5日、輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方で報告書をまとめた。令和6年能登半島地震で明らかになった課題に①半島部での大規模火災のため早期対応が困難②消防施設の被災・管内での同時発生による消防力の低下③古い木造建物密集地域での大規模火災 ― などを挙げた。このため、今後の対応策に①無人走行放水ロボットや消火用ドローンなどの整備②空路・海路での応援部隊や車両・資材の投入③老朽木造家屋や避難・消防活動上重要な沿道の建築物等の耐震化促進 ― などを提言した。

また、政府は7月26日、国土強靱化年次計画2024を閣議決定した。国土強靭化の4つの基本目標に①人命の尊重②国家・社会の重要機能が致命的障害を受けず維持③国民の財産・公共施設の被害最少化④迅速な復旧復興 ― を掲げた。そのうえで、国土強靱化を推進する上での基本的な方針「5本柱」に「防災インフラの整備」「ライフラインの強靭化」「官民連携強化」のほか、新たに「デジタル等新技術の活用による国土強靭化施策の高度化」「地域における防災力の一層の強化(地域力の発揮)」を挙げた。

◎子ども政策で「国と地方の協議の場」開催 ― 政府

政府は7月8日、「こども政策に関する国と地方の協議の場」を開催。加藤こども政策担当相と全国知事会など地方3団体が参加し、成立した改正子ども・子育て支援法をめぐり意見交換した。加藤担当相は、都道府県・市町村が策定する「自治体こども計画」について、「こども・子育て支援事業債の対象事業など地域の実情に応じた計画策定を検討してほしい」と要請。これを受けて、地方側から「全国一律で行う施策の地域間差の解消と専門的人材の確保・育成」(全国知事会)、「各施策は着実に実施できるよう制度設計。子ども・子育て支援金の意義を国民に周知」(全国市長会)、「計画策定では地方の相談に応じる体制整備。こども誰でも通園制度では地域実情に合わせた制度設計とする」(全国町村会)などの意見・要望が出た。

一方、こども家庭庁は7月19日、「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」の初会合を開いた。結婚し子どもを生み育てたいとの若い世代の希望を支えるための課題などを検討し、夏にも「中間取りまとめ」をまとめる。

◎大学の再編・統合、縮小・撤退を支援 ― 文科省

文科省の中央教育審議会は7月12日、大学分科会・高等教育特別部会を開き、「急速な少子化進行を見据えた高等教育のあり方」中間まとめ案を大筋了承した。年度内に答申する。急速な少子化進行で18歳人口が2023年の約110万人が40年には約82万人に減少。大学進学も同約63万人が約51万人に減少する。このため、中間まとめは、今後の高等教育の目指すべき姿に「我が国の『知の総和』の維持・向上」を掲げたうえで、その具体的方策に①教育研究の「質」の高度化②高等教育全体の「規模」の適正化③高等教育への「アクセス」確保 ― を挙げた。

うち、規模適正化では「再編・統合の推進」に向け「一定の条件を満たす場合に一時的に減少させた定員を一部又は全部戻すことを容易にする仕組みの創設」、「縮小・撤退への支援」では「学校法人が解散する場合等における学生保護の仕組み構築や残余財産の帰属の要件緩和」などの方針を打ち出した。

◎ふるさと納税の5年間延長を提言 ― 全国知事会

全国知事会は7月16日の地方税財政常任委員会で、「地方税財源の確保・充実等に関する提言」(案)をまとめ、8月1日の全国知事会議で決定した。提言案は、2024年度終期の企業版ふるさと納税について、「企業による創業地などへの貢献や地方創生に取り組む地方団体のインセンティブとなっている」とし、「税の軽減効果を維持した上で5年間延長すべきである」と提言した。なお、政府が閣議決定した「骨太の方針2024」では企業版ふるさと納税について「今後の制度の在り方を検討する」と指摘。これを受けて、松本総務相は7月12日の会見で「企業版ふるさと納税制度は有効活用いただける方法。有効活用事例等も勘案し関係省庁と連携して適切に対応したい」と述べた。

また、総務省は6月28日、ふるさと納税の指定基準見直しを決め、各自治体に通知した。地方団体が寄附者を集めるための手段としてポイント等を付与するポータルサイト事業者等を通じて寄附を募集することを禁止するもので、2025年10月から適用する。松本総務相は7月2日の会見で、「ポイント付与による競争が過熱してきている。(各企業が)ポイントの原資をどこから出してくるか。その寄附額の中からポータルサイトに入っているところから出ている。改めてふるさと納税の本旨を重視するという意味からポイントというお金の流れを禁止させていただく」と述べた。

◎不交付団体が83団体に増加 ― 2024年度交付税大綱

総務省は7月23日、2024年度の普通交付税大綱を発表した。総額は17兆5,470億円で、前年度比1.7%増加した。うち、道府県分が9兆2,325億円(前年度比0.3%増)、市町村分が8兆3,145億円(同3.3%増)。算定では、新たな算定費目「こども子育て費」を創設したほか、①給与改定・会計年度任用職員への勤勉手当支給の対応②光熱費高騰やごみ収集など物価高への対応③定額減税に伴う地方特例交付金の創設 ― などを措置した。一方、不交付団体は1都82市町村で、前年度より6団体増えた。地方税収の伸びを反映し3年連続の増加。新たな不交付団体は名古屋市、群馬県明和町、朝霞市、君津市、昭島市、小平市の6団体。

また、総務省は7月12日、2023年度の地方税収決算見込額(地方財政計画ベース)を発表した。地方税総額は前年度比1.2%増の45兆7,064億円で、3年連続の過去最高を更新した。うち、道府県税は20兆3,149億円(前年度比0.7%増)で、事業税は5兆2,677億円(同1.1%増)、地方消費税は6兆2,631億円(同2.4%減)。市町村税は23兆2,171億円(同1.7%増)で、固定資産税が9兆7,711億円(同2.4%増)だった。

◎日本人人口が15年連続減少 ― 住民基本台帳人口

総務省は7月24日、2024年1月1日現在の住民基本台帳人口を発表した。日本人住民は1億2,156万1,801人で、前年に比べ86万1,237人(0.7%)減少した。15年連続の減少で減少数・減少率とも過去最大。一方、外国人住民は332万3,374人で、同32万9,535人(11.0%)増で5年連続の増加。また、日本人の自然増減数は85万360人の減少、社会増減数は1万877人の減少だった。都道府県別(総計)にみると、人口は東京都(1,391万1,902人)をトップに神奈川県、大阪府の順で多く、鳥取県(54万207人)を筆頭に、島根県、高知県の順で少ない。なお、東京都、沖縄県、千葉県を除き全団体で人口が減少している。また、市区部人口(総計)は1億1,456万5,923人で前年比41万7,459人(0.4%)減少、町村部人口(同)は1,031万9,252人で同11万4,243人(1.1%)減少した。

なお、同住基台帳に基づく衆院小選挙区の「1票の格差」では、全国289小選挙区のうち違憲判断の目安とされる「2倍未満」を8選挙区が超えていた。人口が最少の鳥取1区(26万4,536人)に対し人口最多の「福岡5区」は55万117人で「1票の格差」は2.08倍に。このほか2倍を超えたのは「福岡3区」(2.048倍)、「茨城6区」「京都6区」(各2.038倍)、「福岡2区」(2.023倍)、「北海道2区」(2.01倍)、「宮城2区」(2.002倍)、「愛知12区」(2倍)。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)