地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年10月中央の動き

◎ふるさと納税の受入額が初めて1兆円台に ― 総務省

総務省は8月2日、2023年度ふるさと納税の現況調査結果を発表した。受入額は前年度比約1.2倍の1兆1,175億円で、初めて1兆円を超えた。受入件数も同約1.1倍の5,895万件に増えた。住民税控除額(全国計)は7,682億円(前年度比約1.1倍)、控除適用者数(同)は1,000万人(同約1.1倍)だった。なお、ふるさと納税の募集費用(全国計)は総額5,429億1,300万円で受入額の48.6%を占める。内訳は、返礼品調達費用が3,028億6,900万円(構成比27.1%)、返礼品送付費用が801億3,800万円(同7.2%)など。団体別では、受入額は都城市の193億8,400万円(受入件数101万2,796件)をトップに紋別市192億1,300万円、泉佐野市175億1,400万円、北海道白糠町167億7,800万円、同別海町139億300万円で多い。控除額では横浜市の304億6,700万円(控除適用者数43万9,267人)、名古屋市176億5,400万円、大阪市166億5,500万円、川崎市135億7,800万円、世田谷区110億2,800万円で多い。

◎給与制度のアップデートを勧告 ― 人事院

人事院は8月8日、2024年の俸給や地域手当・ボーナスなどを包括的に整備する給与制度のアップデートを国会・内閣に勧告した。月例給は1万1,183円(2.76%)引き上げる。定期昇給分を加えると月収で約4.4%の給与改善となる。また、ボーナスは期末手当・勤勉手当ともに0.05月分引上げ年間4.60月分にする。このほか、①地域手当は都道府県単位(中核的な市は個別指定)とし、級地を5段階に削減し最新民間賃金を反映②通勤手当は支給限度額を月15万円に引上げ、新幹線通勤の要件を緩和③扶養手当は配偶者手当を廃止し、子に係る手当を増額④成績優秀者への勤勉手当の支給上限を標準者の約3倍まで引上げ可能に⑤管理職員の平日深夜勤務手当の対象時間帯拡大 ― などを盛り込んだ。

一方、財務省と総務省は同日、人事院勧告に準じた給与改定を実施した場合の所要額は、国家公務員が約3,820億円、地方公務員は約6,476億円、合計1兆296億円となると発表した。

◎南海トラフ地震で初の「巨大地震注意」発表 ― 気象庁

気象庁は8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震発生を受けて南海トラフ沿い地震評価検討会を臨時開催し、初となる南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を発表した。対象は茨城から沖縄までの29都府県。「大規模地震の発生可能性が平常時と比べ相対的に高まっている」ことを呼び掛けた。総務省消防庁も同日、南海トラフ地震防災対策推進地域の都府県に対し地域住民への伝達と避難態勢の準備等の呼びかけを要請する通知を出した。また、岸田首相は同日の会見で「いわゆる偽情報の拡散などは絶対に行わない」よう呼びかけた。

一方、内閣府は8月15日、同発表後1週間経過したことを受けて「特別な注意の呼びかけ終了」を発表した。松村防災担当相は同日の記者会見で、岸田首相から「初の南海トラフ地震臨時情報の発表に伴う対応や社会の反応を振り返り、国民への呼び掛け要領等の運用面も不断の改善を図ることとの指示があった」と述べ、国民への周知のあり方などを南海トラフワーキンググループで議論していく考えを示した。政府は「注意」発表の際に旅行や帰省などを含めた社会経済活動は継続するよう要請していたが、各地で宿泊のキャンセルや買占め、新幹線等の徐行運転などがあった。

◎食料安全保障の新基本計画へ議論開始 ― 政府

政府は8月27日、食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を開き、食料安全保障の確保に向け今後5年間の農業構造転換集中対策期間に施策を集中実施する方針を示した。岸田首相は、来年3月策定の新たな食料・農業・農村基本計画に向け①輸入依存度の高い麦・大豆の増産②水田政策の見直し③海外需要の新規開拓と輸出向けの国際競争力ある産地の育成 ― などを議論するよう指示した。

また、農水省は8月8日、2023年度の食料自給率を発表した。カロリーベースの食料自給率は前年度と同じ38%だった。小麦の生産量増加や油脂類の消費量減少がプラス要因となる一方、てん菜の糖度低下による国産原料の製糖量減少がマイナス要因となった。また、生産額ベースの食料自給率は前年度比3ポイント上昇の61%だった。同省は、8月29日から議論を開始した食料・農業・農村政策審議会での次期基本計画策定議論の中で新たな数値目標を設定する。なお、政府目標(30年度)は各45%、75%としている。

◎学校安全には中核を担う教職員が重要 ― 文科省

文科省の中央教育審議会初等中等教育分科会は8月9日、学校安全を推進するための組織体制のあり方で中間まとめを了承した。地震や活動中の事故、不審者侵入など学校の努力だけでは防止できない事案が発生しているため、学校安全を推進するための組織体制充実に向け①地域や関係機関等との連携②校内の組織体制整備 ― などが必要だと指摘。さらに、学校安全の専門的な知見や子どもの視点の活用と地域の協力体制を構築するとともに、校長のリーダーシップによる校内の組織体制整備が必要だとした。併せて、学校安全の中核を担う教職員の重要性も強調した。

また、文科省は8月8日、日本語教育が必要な児童生徒数(2023年5月1日現在)が合計6万9,123人で、前回調査(21年)より1万816人(18.6%)増えたと発表した。うち外国籍が5万7,718人で同1万99人(21.2%)増加、日本国籍は1万1,405人で同717人(6.7%)増加した。同児童生徒のうち特別指導を受けている児童生徒は外国籍が5万2,176人(構成比90.4%)、日本国籍は9,878人(同86.6%)だった。

◎若者や高齢者の投票促進策を提案 ― 都道府県議長会

全国都道府県議会議長会は8月12日、投票率向上に向けた課題の調査研究報告書をまとめた。2023年の統一地方選挙(都道府県議会議員選挙)では投票率が41.85%と過去最低を更新。特に10・20代で低く、80代も低下していた。このため、若者や移動手段の制約・健康上の問題を抱えやすい80代以上の投票を促進する取組が重要だと指摘した。

うち、若者の投票率低下の背景には政治に対する関心の低さと希薄な当事者意識・不信感があると指摘。このため、子どものころから国や社会の問題を自分事として捉え、自ら考え行動する力を育成する主権者教育を積み重ね習慣付けることが必要だとした。その具体策に①若者自ら課題を探り解決策を提案する取組の推進②議員との交流を通して政治を身近にする③議会など多様な主体と学校との連携 ― を提案。このほか、人が集まるショッピングセンター等への共通投票所の設置や移動期日前投票所の取組、実家を離れ大学に通う学生の住民票の異動促進などを提案した。併せて、投票所に行く交通費を割引・無償化しているイタリアやベルギーの取組を紹介した。

◎改正自治法「指示」の慎重対応要請 ― 全国知事会

全国知事会は8月22日、「地方分権改革の推進」について松本総務相に要請活動した。改正地方自治法の補充的な指示で「国と地方の対等・協力の関係が損なわれかねない」と指摘。指示が安易に行使されないよう事前の協議・調整の手続明確化と運用指針を定めるよう要請した。なお、総務省は8月27日に改正地方自治法の説明会を関東ブロックを対象に開催。他ブロックも順次開催する。

一方、内閣府はこのほど地方分権改革・提案募集方式で実現された制度改正等の活用状況をまとめた。へき地診療所での管理者の常勤要件の緩和では、認知度は9割以上にのぼるが制度の活用自治体は3割未満にとどまった。また、保育所型事業所内保育事業の受入れ児童の対象年齢の拡充(満3歳以上)は9割が認知しているが、制度利用は2割だった。一方、罹災証明書の手続・制度見直しでは、8割の団体が認知しており制度改正後に被害認定した自治体の6割が活用していた。ただ、写真判定の活用態勢をあらかじめ整えている自治体は4割にとどまった。また、移住希望者への空家短期賃貸の旅館業法の規制緩和では認知度は3割にとどまり、制度活用は1割に満たなかった。

◎行政の結婚支援サービスで提言 ― こども家庭庁

こども家庭庁の若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループは8月26日、中間報告をまとめた。結婚したいと思っている若者の8割は交際相手を見つける行動もしていないが、既婚者の6割はマッチングアプリの利用経験があった。このため、「ライフデザイン支援」を就学時や社会人の若手・転職・婚活中にも実施するよう提案。併せて、行政が行う出会い・結婚支援サービスは「安全面にメリットを感じる人も多い」が、認知度の低さを課題に挙げた。このため、①一見して「婚活イベント」と分かると慎重になるため地域行事や同好会・サークルのような形で募集②マッチングシステムの都道府県間の連携③サービス向上へ官民の連携協力の推進 ― を提言した。

一方、こども家庭庁は8月2日、教育・保育施設での事故報告を公表した。2023年1年間の報告件数は2,772件で、前年より311件増えた。事故発生場所は幼稚園・保育所等が2,121件(77%)、放課後児童クラブが651件(23%)。年齢別では5歳732件、4歳482件、6歳349件で多い。負傷別では骨折が2,189件(79%)を占めるが、死亡も9件あった。死亡は放課後児童クラブ、認可外保育施設が各3件など。

◎交付税は19兆円を要求 ― 2025年度の総務省概算要求

総務省は8月30日、2025年度の予算概案要求と2025年度地方財政収支の仮試算を発表した。要求総額は前年度比6,221億円(3.4%)増の18兆8,327億円で、うち地方交付税は同3,083億円(1.7%)増の18兆9,753億円、一般歳出は同2,920億円(68.6%)増の7,163億円を要求した。うち、新規事業にマイナンバーカードを活用した手続の原則オンライン化など自治体フロントヤード改革の推進・横展開(9.4億円)、都道府県と市町村が連携したDX推進体制構築に向けたデジタル人材確保プロジェクト(2億円)、生成AI等を活用したセキュリティの確保(20億円)、地域課題解決プロジェクトの支援「ふるさとミライカレッジ(仮称)」(4.3億円)、地域運営組織(RMO)を核とした過疎地域課題解決(2億円)などを盛り込んだ。

この結果、25年度の地方財政規模は前年度比2.3兆円(2.5%)増の96兆円で、うち一般歳出は同2.2兆円(2.8%)増の80.7兆円。主な項目は、地方税が同1.6兆円(3.5%)増の47.1兆円、一般行政経費は同1.6兆円(3.7%)増の45.3兆円、投資的経費は前年度同額の12兆円、給与関係経費は同0.6兆円(2.9%)増の20.8兆円などを計上した。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)