地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年12月中央の動き

◎戸籍氏名の「振り仮名」記載で要請 ― 全国市長会

全国市長会は10月3日、「戸籍への氏名の振り仮名記載対応」を法務相に要請した。戸籍法等の改正で2025年以降、全国民に振り仮名通知や届け出受付など多大な業務が発生するため①国の責任で改正法の趣旨や振り仮名届出の周知②新たな業務の負担軽減と具体的内容の早期提示③実施自治体の規模・在籍者数等の実情を踏まえ経費を国が全額負担 ― などを要請した。

また、全国市長会等は10月17・18日、姫路市で市長ら約1,700人が参加し全国都市問題会議を開催した。会議では、福岡伸一青山学院大学教授が「生命を捉えなおす」、清元秀泰姫路市長が「市民の『LIFE』を守り支える姫路の健康づくりとまちづくり」と題して基調講演。次いで、宮本太郎中央大学教授をコーディネーターに今井敦茅野市長、南出賢泉大津市長、三木崇弘高岡病院医師らが参加し討論を行った。

◎まちづくり健康診断で立地適正化計画推進 ― 国交省

国交省の立地適正化計画実効性向上のあり方検討会は10月10日、取りまとめを発表した。同省は人口減少を踏まえた立地適正化計画に基づくコンパクトまちづくりを進めているが、取りまとめは同制度創設10年を踏まえ「立適+(プラス)」に向けた更なる取組の推進を打ち出した。具体的には、中小都市での取組が少ないため①市町村が現状を的確に認識できる情報等の提供②広域・複数市町村で取り組む主体・役割の明確化③取組に必要な人材確保の支援 ― などを提言。また、5年ごとの評価・変更の実施市町村が少ないため「まちづくり健康診断」体系の確立なども求めた。

一方、国交省は10月9日、地域生活圏専門委員会の初会合を開催した。昨年の国土形成計画に盛り込まれた「地方の中心都市を核とした市町村界にとらわれない新たな地域生活圏の形成」の具体化を検討する。地方中心都市での人口減少や生活サービス提供機能の低下等に対応するため、デジタルの徹底活用と「共」の地域経営による①生活サービスの利便性の最適化・複合化②地域内経済循環の仕組み構築 ― による地域生活圏の構築などを検討。来年夏にも報告をまとめる。

◎事例紹介など「地域社会DXナビ」を公開 ― 総務省

総務省は10月11日、「地域社会DXナビ」を公開すると発表した。デジタル技術を活用した地域課題解決には地域社会DXの加速と先進事例の他地域への普及が求められるため、各自治体に参考となる情報をポータルサイト「地域社会DXナビ」にニュース形式で配信する。「事例紹介・参考事例集」では「地域」「分野」「人口」などから検索できるほか、「イベントレポート」「キーパーソンのインタビュー」「総務省の支援事業」なども掲載されている。

また、総務省は10月2日、地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン改訂版を公表した。「情報セキュリティ基本方針」ではセキュリティ対策の基本的考え方など、「セキュリティ対策基準」では情報システムに必要となる基準を定めている。このほか、同省のデジタルインフラ(DC等)整備有識者会合は10月4日、「中間取りまとめ3.0」を公表した。具体的な対応策に、①データセンターの分散立地推進②災害や高まる地政学的リスクへの対応③地域におけるエコシステムの形成 ― などを挙げた。

◎大学改革「3つの方針」点検・評価92%に ― 文科省

文科省は10月11日、大学の教育内容等の改革状況(2022年度)を発表した。各大学に2019年度から「3つの方針」(卒業認定等、教育課程編成等、入学受入等)の一体的な策定・公表が義務付けられたが、同方針の達成状況を点検・評価している大学は92%に達した。しかし、学位を与える課程共通の尺度策定は74%、教育改善を支援する体制構築は66%、教育目標とカリキュラムの整合性を検証する委員会設置は49%に留まる。また、学生の学習時間公表は56%、教員1人当たり学生数公表は64%だった。なお、大学でのハラスメント防止の相談窓口は99%で設置していた。

また、文科省は9月30日、2023年度の日本語教育実態調査結果を公表した。2023年11月1日現在の日本語教育実施機関・施設等数は2,727、日本語教師等数は4万6,257人、日本語学習者数は26万3,170人で、1990年に比べそれぞれ3.3倍、5.6倍、4.3倍に増えた。日本語教育実施機関・施設等数の内訳は、法務省告示機関が23%と最も多く、以下、大学等機関20%、任意団体17%、国際交流協会12%、地方自治体12%など。

◎食料・農業・農村基本計画変更で検討視点 ― 農水省

農水省は10月16日、食料・農業・農村政策審議会企画部会に食料・農業・農村基本計画変更に向けた「検討の視点」を提示した。視点は、農業生産活動で気候変動対策の推進や有機農業推進・バイオマス利用拡大の方針を示した。併せて、2027年度に創設する環境直接支払交付金は、みどりの食料システム法認定農業者が先進的な環境負荷低減に取り取む導入リスク等に応じた仕組みにするとした。また、農村振興では農泊など他分野と連携した内発型新事業創出、中山間地域等直接支払では集落協定のネットワーク化などの体制づくりの必要性を指摘した。今年度末に報告をまとめる。このほか、農水省は農業参入フェア2024を11月18日に大阪、12月11日に東京で開催する。農業参入を希望する法人と誘致したい地域のマッチングが狙い。

一方、全国町村会は10月17日、中山間地域等直接支払制度の見直しに関する意見をまとめた。農水省が2025年度から始める第6期対策で現在措置されている「集落機能強化加算」の廃止方針を示したことに対し「到底容認できない」と批判。同省が新たに設ける「ネットワーク加算」への再編案にも、集落単体で活用できる現行支援措置を継続すべきだとした。

◎地域手当の支給率設定を都道府県単位に ― 総務省

総務省の地方公務員制度あり方検討会給与分科会は10月18日、人事院勧告の給与制度アップデートを踏まえた地方公務員給与の見直しを提言した。具体的には、新卒初任給や若年層の給与水準の引上げを提言。また、地域手当について級地区分・支給割合を7級地区分(3~20%)から5級地区分(4~20%)に再編し、支給地域を現行の市町村単位から都道府県単位に広域化、中核的な市(都道府県庁所在市・20万人以上市)は当該地域の民間賃金を反映するとした。このほか、①扶養手当は配偶者手当を廃止し、子の手当を1万3,000円に引上げ②通勤手当の支給限度額を15万円に引上げ③管理職員特別勤務手当の支給対象拡大④再任用職員への手当支給の拡大 ― なども提言した。

一方、全都道府県の人事委員会勧告が10月22日、出そろった。2024年度の月給とボーナスについて全団体が引上げを勧告した。両引上げ勧告は3年連続。月給は全団体が2%以上の引上げを勧告。千葉県の3.30%(1万2,014円)が最高、新潟県の2.29%(8,584円)が最低だった。なお、扶養手当見直しでは、42都道府県が国に準じて配偶者の手当廃止を求めた。

◎熊本市で災害廃棄物対策シンポを開催 ― 環境省

環境省は10月20日、熊本市で2024年度災害廃棄物対策推進シンポジウムを開催した。併せて、第9回防災推進国民大会(ぼうさいこくたい2024)も開催した。シンポジウムでは、島岡隆行九州大学名誉教授が「災害廃棄物対策における新たな提言」と題して基調講演。次いで、髙栁達環境省災害廃棄物対策官が環境省の取組状況、河合一広全国都市清掃会議事務局長が災害時の廃棄物処理支援について講演。さらに、熊本市と秋田市が各市の取組状況などを報告した。

一方、国交省の上下水道地震対策検討委員会は9月30日、最終取りまとめを公表した。先の能登半島地震での被害を踏まえ上下水道の地震対策・災害対応のあり方を提言したもの。今後の地震対策では、上下水道システムの急所となる施設の耐震化や避難所など重要施設の上下水道管路の一体的な耐震化を求めた。併せて、地滑りなどの恐れがある箇所を避けた施設配置、可搬式浄水施設・設備、汚水処理施設・設備の活用による代替・多様性の確保なども提言した。

◎結婚や子育て支援策など検討へ研究会 ― 全国知事会

全国知事会は10月21日、「少子化の観点から結婚や子どもの法的保護等を巡る現状と課題について考える研究会」の初会合を開催した。結婚を躊躇する若者への支援策や希望子ども数の減少対策、子育て支援策、子どもの法的保護策などを探り、2026年夏の全国知事会議までに報告をまとめる。研究会では、国立社会保障・人口問題研究所の岩沢美帆人口動向研究部長が「結婚・子どもを巡る実情や課題 ― 地方行政において少子化理解に有用なポイント」と題して講演。人口・社会経済環境が似ている自治体間で相互参照し課題を共有する必要性などを指摘した。

また、全国知事会は10月10日、衆院総選挙に向け各党に提出した「持続可能で活力ある日本と地域を実現するための提言」に対する回答結果を発表した。提言が求めた「人口減少対策」「大規模災害対応」「医療・福祉・介護人材の確保」には10党全てが賛成したが、子ども・子育て政策では参政党が「給食費無償化より公的負担を優先」、地方分権では共産党が「国の基準廃止は慎重に検討」との注文をつけた。

◎地域脱炭素政策で「とりまとめ骨子」 ― 環境省

環境省は10月29日、地域脱炭素政策の今後の在り方検討会に「とりまとめ骨子」を提出した。2050年カーボンニュートラルの目標に向けて、2026年度以降も地域脱炭素政策の継続が必要だとして今後の具体施策の方向性を示した。具体的には、①地域脱炭素の横展開のため実践的・具体ノウハウや優良事例を中心に周知・発信②事務事業の脱炭素化には全自治体に実施責任があるため小規模自治体においては都道府県や連携中枢都市圏と共同で実施③自治体の脱炭素推進の財源確保のため新たな技術等対応を中心に更なる財政支援スキームの検討④地方自治体への必要な専門人材プールの拡充検討 ― などを提言。併せて、①再エネ促進区域制度で地域や事業者に対する更なるインセンティブ付与②技術進捗も踏まえた新たな脱炭素技術・製品の順次地域への実装③庁舎等の公共施設や住宅・ビルへの太陽光発電導入の推進 ― などを求めた。

一方、環境省は10月16日、ヤード環境対策検討会の初会合を開催した。2017年創設の有害使用済機器保管等届出制度で保管処分業の届出が義務化されたが、届出件数は昨年9月で547件に留まるほか、規制対象が家電4品目などに限定されている。さらに、現実は規制対象外の金属スクラップなどの不適正な保管や処理に起因する騒音・悪臭、公共水域や土壌の汚染問題が発生している。このため、不適正ヤードの実態調査をはじめ環境保全対策のあり方などを検討する。

※「中央の動き」は今月号で終了させていただきます。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)