近頃目につく地域おこし協力隊
2009年度から始まった地域おこし協力隊は、今年で16年を迎えた。発足当初は、31団体の89人であったが、5年後の2013年度には318団体の978人になる。その後は、毎年、順調に数を伸ばし、2023年度には7,200人、受け入れ市町村数は1,164となっている。
旧家を改築して複合施設に
たとえば埼玉県で生まれ、東京の貿易会社で働いてきたAさん。(以下引用文はインターネットで「島根県 地域おこし協力隊」または「東京都 檜原村 地域おこし協力隊」からの引用)松江市の地域おこし協力隊に採用されるが、「ミッション」は自分で決める「フリーミッション」だったので、起業への努力で悩む。そんな中、市役所近くの築100年の旧家を改築して、チャレンジの場として蘇らせるプロジェクトが舞い込む。協力隊でメンバーを組み、コアメンバーの一人として準備に奔走。オープン後は、「チャレンジを応援する場」をコンセプトに、シェアオフィス、チャレンジカフェ、チャレンジショップ、ゲストハウスなどを兼ね備えた創造複合施設として整備しその運営メンバーとなる。
協力隊に入って2年目の6月に、様々なキャリアが交雑する場として期待されるこの施設が動き出した。まずこの施設を介して、人の交流が定期的に始まる。Aさん自身が、次から次へと人を紹介してもらい、気が付けば50人以上の人のネットワークに包まれているのだ。
協力隊の任期3年いっぱいを務めて、松江での経験を積み上げ、4年目以降も、松江を活動の拠点の一つとして、島根の他の地域とか、東京などと繋がっていければと考えている。
夫婦で協力隊に
山形県出身で千葉県に在住していたBさんは、会社員をしながら、二人の子育てをしてきた。「もっと人に係る仕事がしたい、それも自然に囲まれた環境で」との思いが強く、会社をやめ、女性向けのリラクゼーションサロンを開業、経営も順調だった。Bさんの夫のCさんも自然に囲まれたキャンプ地を管理する仕事に関心があった。夫は建築関係の仕事に長く携わってきた経験があり、Bさん自身もサロン経営などで培った経験を生かせる暮らし方があるのではないかと考えていた。
「移住先と仕事を同時に探しているときに、檜原村(ひのはらむら)で地域おこし協力隊を募集していることをインターネットで知りました。以前、三頭山(みとうさん)登山のために檜原村を訪れた際に、自然も素晴らしく、村の人たちの印象も良かったのを想い出しました。募集を見つけたときは、直感的に『私たちが行くのはここだ』と思いました。」
結果的に夫婦ともに採用され、2019年8月に地域おこし協力隊に着任した。当時二人の娘さんは都心に通学する学生だった。そこで一家は、娘さんたちは都心に、ご夫婦は村にと分かれて新生活をスタートさせた。
「活動内容については、自分で考えたミッションを提案する形でしたので、まず村の魅力を発信する広報関連の仕事がしたい」と相談を持ち掛けた。そこでまず、地域おこし協力隊新聞として、『SPOON(スプーン)』という媒体を発行することに。2019年10月に、Bさんと当時の協力隊のメンバーが立ち上げた媒体は、全作業をすべてメンバーが担うという形で、隔月で発行している。
「取材を通じて協力隊の活動も知ってもらいながら、村の人たちのこれまでの人生や暮らし方、村の料理などを、取材を通して知ることができました。」
イベントなどの年中行事が多く、そこに参加することも大きな楽しみというBさん。「地元にある五社神社のお祭りに夫婦で参加して、夫が村の人に教えて頂き獅子舞を演じました。ほかにも1月のドント焼きから始まり、夏の払沢(ほっさわ)の滝祭りなど本当に様々な行事に参加しました。」
そして、地域おこし協力隊として定住してみて、その役割に対する見方が大きく変わったそうだ。「私がこの地域を活性化すればという思いを持ってこの地域に来たのですが、今思うと、そんな考え方はおこがましかったなと思います。実際には、この地域に住まわせていただいて、仲間に入れてもらっているという感覚に近いでしょうか。村民の一人として、村のために何ができるのか、そういった視点で暮らしています。」
3年終了時の全国の定着率は、65%程度だという。引き続き注目し、起業や事業展開の状況を見ていきたいと思う。