地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』2026年8月コラム

人口減少時代の「関係人口」と地方交付税

人口減少が進む中で、地域と関わりをもつ「関係人口」に活性化を期待する声が高まっている。親の介護や空き家管理のために定期的に実家を訪れる人、田植えや稲刈りを手伝う人、地域活動や祭りに定期的に参加する地域のファンなど、当該地域の「住民」ではないが、その地域に滞在し、継続的なつながりをもつ人々がいる。さらに、テレワーク等の普及を背景に、都市と地方を行き来する二地域居住も広がりをみせる。山村留学や保育園留学なども多様化し、短期でも子どもの学びや育ちを受け入れる地域も増えてきた。

このほか、観光やビジネスでの来訪を含め、関係人口や来訪者への期待が高まる一方、その増加により、自治体では人口規模を上回る財政需要が生じることも考えられる。ごみ処理、トイレ整備、道路や公園の維持管理、景観保全、警察、消防・救急体制の強化など、追加的な行政需要が生じ、それに要する費用も発生する。では、自治体はこうした財政需要をどう賄えばよいだろうか。

むろん、その一つは来訪者等に応分の負担を求めることである。最近では、宿泊税や訪問税等の独自課税や料金など、来訪者に一定の負担を求める取り組みが広がっている。

だが、それとあわせて、もう一つ考えるべきは、財政調整制度のあり方である。地方交付税制度は自治体間の財政力格差を是正し、自治体が標準的な行政サービスを行う財源を国が保障する制度である。その際、財政需要の算定基礎となる単位費用の多くに国勢調査人口をベースとした指標が用いられ、状況に応じて補正係数が使われてきた。

人の移動が活発化すると、人口では必ずしも掴むことのできない財政需要を考える必要が生じる。複数の地域を往来する人々の増加に伴い、国がどのように自治体に対する財源保障や財政調整を行うのかが問われるだろう。

それを考えるにあたり、韓国の取り組みは興味深い。韓国では近年「生活人口」という概念を導入した。生活人口とは、住民登録人口だけでなく、その地域に一定時間以上滞在する人々を含めてその数を把握しようとする考え方である。韓国政府は人口減少地域対策の一環として生活人口統計を整備しており、住民登録人口、外国人登録人口に加え「滞在人口」を把握している。

この「滞在人口」とは、住民登録地以外の地域に月1回以上、かつ1日3時間以上滞在した人を指す。観光客だけでなく、通勤・通学、業務、親族訪問、二地域居住、地域活動への参加なども含まれることになる。韓国では通信事業者が保有する携帯電話位置情報を活用して滞在実態を把握し、さらにカード会社の決済データなども組み合わせることで、来訪者の消費行動や滞在特性を分析している。住民登録人口だけでは捉えられない人の移動や地域での活動実態を可視化しようとしている点に特徴がある。

さらに韓国政府は、人口減少地域における「滞在人口」を普通交付税の基準財政需要額算定に反映する方針を示している。生活人口を交付税算定に反映する試みは、住民登録人口だけでは捉えにくい人の往来を把握し、人口減少地域で生じる追加的な行政需要を交付税算定に反映しようとするものといえる。

とはいえ、生活人口を財政需要の算定に取り込もうとすると、来訪者や通勤・通学者が集中する大都市部の行政需要がより大きく評価される可能性もあり、財源の偏在度をかえって高めるおそれもある。このため韓国では、この仕組みについて人口減少地域を対象にすることとしている。

関係人口の拡大や二地域居住の促進は、人口減少地域の維持・活性化に向けた国全体の政策課題でもある。人口減少が進む自治体では、普通交付税基準財政需要額の縮小が見込まれる。だが、管理すべき地域の道路、農地、森林、空き家などを有する面積は変わらない。鳥獣害対策や大規模災害への対応をはじめ、国土管理に対する要請は高まる一方でもあり、担い手確保は必須である。

関係人口の拡大を通じて地域の諸機能を維持しようという自治体の財政需要を考えるにあたり、ふるさと住民登録制度の創設に伴い、交付税算定における人口要件を見直すのか。あるいは面積など人口以外の指標を生かした交付税算定を充実させるのか。補正係数の活用で対応するのか。特別交付税により対応するのか。当該地域の財政需要額の算定のあり方を含め、国から地方への財源保障と財政調整のあり方が改めて問われるだろう。

ぬまお なみこ 地方自治総合研究所研究理事・東洋大学国際学部教授)