1月14日、第33次地方制度調査会(地制調)が発足した。70年の歴史を持つ地制調については、大杉覚さん(都立大)の重厚な研究(『戦後地方制度改革の〈不決定〉形成』東京大学都市行政研究会、1991年)があり、現在でもその分析はほぼあてはまると思われる。まさに「不決定」形成の一端を担う地制調であるが、一方、ここを舞台としてさまざまな思惑や駆け引きが展開されるという意味では、地方自治研究や公共政策論研究として見逃せないものがある。
たとえば、第31次地制調は「地方消滅論」と並走するように発足し、人口減少社会に適した「地方行政体制」が諮問された。第32次地制調では、発足わずか2日前に公表された「自治体戦略2040構想」そのままの諮問があり、この構想をオーソライズすることが国(内閣府・総務省)から期待された。しかし、いずれも任期中の2年間で政策のステージが変わったり、独特の思いをもった担当官が異動したりして、当初の諮問とは微妙にズレた答申がまとめられている。第33次地制調への諮問事項はデジタル化とポストコロナであるが、そのまま進行するとは限らない。
これを機会に過去の地制調の議事録や配布資料を調べたいと考えた。総務省のウェブサイトには第25次地制調からのタイトルが出ている。このころから「ホームページ」が作成され始めたのであろう。ところが、第29次地制調以降の資料だけがアクセス可能で、第28次地制調の資料はあったりなかったりし、第27次地制調以前の資料にはまったくアクセスできない。つまり、時間の経過とともに議事録や資料は削除されていくのである。
その先は国立国会図書館のアーカイブ事業が案内されるが、ここの検索は単純ではない。苦労した末にようやく第27次地制調と第28次地制調の議事録と配布資料は収集できた。第25次地制調と第26次地制調の小委員会の議事要旨はあったが、総会を含めて議事録や配布資料は存在していなかった。おそらく最初からデジタル化されていなかったのであろう。デジタルベースではこれが限界だった。
紙ベースでは地方自治研究機構が『地域政策研究』の臨時増刊として、第24次地制調の終盤から第29次地制調までの資料集を公刊している。ただし残念ながら、議事録は一部の例外を除いて掲載されていない。丸善雄松堂によって、第23次地制調までの資料はアーカイブ化されていて、歴史的には貴重な資料になっているが、第18次地制調以降は小委員会の議事録が掲載されていない。
整理すると第24次地制調から第26次地制調までのあたりに資料の欠損が多い。おそらくデジタル化への端境期に当たる。古い人間としては、だから紙ベースで保存しておかなくては、とつい思ってしまう。デジタル化によって情報量は飛躍的に増えるが、それだけに不可視化されたり、欠損が見逃されることも起こる。
ちなみに、総務省のウェブサイトで第31次地制調第1回総会の委員名簿を開くと、第32次地制調の委員名簿が出てくる(執筆日現在)。こういう単純なミスは統計資料などでもあるし、他人のことを言える立場にないが、デジタル化にはこういうミスを内在化させるリスクもあるかもしれない。デジタル化されているからといって、油断したり、そのまま信用したりはできないのである。
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