地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年11月のコラム

民生児童委員 その2


武藤 博己

 前回のコラム(2018年5月)に引き続き、民生児童委員の忙しさについて、考えてみたい。前回は、定例の地区協議会の前半について説明したので、今回は後半から始めたい。協議会の後半は、児童委員関係の会議で、主任児童委員が司会をする。はじめに、各校長(小学校2、中学校1)が自分たちで出している学校新聞を配布して、学校での特徴的なできごとについて報告する。子供がいれば、関心をもつことだが、私にとってはあまり関心がもてない内容であり、こちらも児童委員としての仕事をする上で、不可欠な内容ではなく、また実践的でもない。協議会の前半も後半も、少なくとも、毎月開催する必要はないように感じられる。隔月開催にするだけでも、負担は軽くなる。
 定例の地区協議会以外の活動としては、毎年1回民生児童委員総会があり、また毎年1回研修会がある。協議会毎の研修会もあり、こちらは積立金を使った1泊研修で、実態は視察旅行である。
 日常的な活動としては、毎月1回、一人暮らしのお年寄りで、民生委員の訪問を希望する人を訪ね、安否確認をすることになっている。私の担当は少なく、わずか3名だが、中には10名を超えるお年寄りを担当している委員もいる。事前に電話してから訪問し、玄関先で世間話をして、高齢者サポートセンターや病院などで行われるセミナーや茶話会の案内を渡す。時には、家の中に誘われて、世間話をする場合もある。私の場合は次の人を訪ねるのでと断り、1日で済ますようにしており、不在の場合は2日以上かかってしまう。
 また、3ヶ月に1回、社協から生活福祉資金を借りていて、返済金が残っている人に、社協の請求書を渡すという作業がある。しかし、社協からは「返済を求めるような話はしなくてよい、借金取りではないので」と言われている。ではなぜ民生委員が請求書を渡すのだろうか。民生委員も返済金が残っていることを知っているので、早く完済したほうがいいという無言の圧力があるのかもしれない。社協の担当者が直接電話して、経済状況を尋ねたりするほうが建設的ではないだろうか。この仕事は不要であろう。
 恒例の仕事としては、9月に市からの敬老祝い金をお年寄りに配布するという仕事がある。私の場合、10名強であったため、2日間で終わったが、不在者が多ければ、何度も訪問しなければならない。年齢によって金額が異なり、80歳(5千円)、88歳(2万円)、99歳(3万円)、100歳(5万円)、101歳以上(1万円)を配布するが、100歳の人には市職員が配布し、残りを民生委員が届ける。なぜ民生委員が届けるのであろうか。なぜ100歳にだけ市職員が配布するのであろうか。所得制限を設けるとか、あるいは全面廃止にして、この仕事をなくすべきであろう。
 同様に恒例の仕事として、12月には、就学支援を受けている子供たちに、歳末助け合い資金を配分するという仕事がある。こちらは10名以上で、けっこう時間がかかる。この仕事も社協の事業であるが、社協と民生委員の協力は必要であるものの、それにしても都合よく民生委員を使っているように感じられる。
 小学校区ごとに防災拠点協議会という学校と地域住民の協力組織も立ち上がり、年3~4回の会合と訓練が行われる。小学校が避難所となることが多いため、災害時に備えた訓練活動である。
 最近は、児童委員の仕事も増えてきた。市では2017年より私の住む地域で、「学校運営協議会」という学校と地域の連携組織を立ちあげた。この協議会は年に3~4回なので、それほど負担は大きくないが、学識委員も兼ねているため、会長を引き受けてしまい、休むことができない。
 児童委員として参加を求められるものとして、中学校区毎の「少年健全育成連絡協議会」もある。これは年2回程度開催される。内容は講演会だったりすることが多いので、他の民生児童委員と交代で出席したりしている。
 地域にとって重要と感じられる会議としては、小学校と児童委員の連絡会で、各学年主任の先生方から問題行動のある子供についての情報(たとえば、夜遊び)が提供され、見かけたら注意してほしいという話合いの場がある。さらに、まなびクラブという週1日に算数の勉強を見るとか、九九の練習を聞いてあげるなどのボランティア活動もある。これらは義務ではないが、児童委員として誘われる活動である。
 このように考えると、年間60日~100日の活動が求められている。まじめに対応する人はもっと多くの日数を使っているであろう。なり手不足が深刻な理由がわかったような気がした。

 

(むとう ひろみ 法政大学大学院公共政策研究科教授)