地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年4月のコラム

合併算定替の見直しと支所機能の再構築

 平成の大合併は、地方分権一括法の一環として2000年に施行された市町村合併特例法により始まるが、この合併の波は、アメとしての合併特例債の発行が、2006年3月までに合併した市町村に限定されるという終期が設けられたため、ここに向けてなだれを打つことになった。これをサポートしたのが、三位一体改革による交付税の削減で、特に小規模町村に効いたと言われる。この結果、合併関係市町村2,093市町村が583市町村に統合され、全体としての市町村数は3,232から1,727にまで減少した。

 合併団体の数は、平成で言えば、16年、17年とピークを迎え、18年に最後の仕上げとなった。このために、特に大規模合併の場合に、そこに取り込まれた小規模な周辺町村の地域の衰退に対して、それを有効に抑制する施策について懸念が残る場合が少なくなかった。そして10年。地方債と交付税の合併特例の期限が迫るなかで、特に交付税の合併算定替の見直しが、2014年度から始まっている。これは、これまでの「選択と集中」や「支所ゼロ」施策による地域切り捨てからの部分的な揺り戻しでもある。

 総務省は、全国の合併市308市がつくる「合併算定替終了に伴う財政対策会議」の取り組みもあって、合併算定替が終了した後、この特例措置で一本算定に上乗せされていた9,300億円のうち、72%程度、6,700億円を今後も残すことを決めている。

 2006年1月に10市町村が合併した津市では、合併算定替の加算措置額は期間中の平均で、年に70億円に上る。津市の直近の普通地方交付税額は180億円程度であるから、このうち70億円が5年間で無くなるのはきわめて厳しい。それが、この7割、50億円が残るとなれば大いに助かる。合併特例債も活用した基金の積み上げもあり、普通交付税が5年間で30億円減であれば、財政運用で吸収できる可能性は高まる。

 しかし、これは同時にそれぞれの団体にとっては、合併後10年間の財政運用あるいは施策方向の転換を要請する性格をもっている。

 総務省財政局の平成27年2月18日付け通知「市町村の姿の変化に対応した交付税算定について」では、次のように言う。

 「平成の合併により、市町村の面積が拡大する等市町村の姿が大きく変化。このため、合併後の市町村の実情を把握した上で、合併時点では想定されていなかった財政需要を交付税算定に反映。以下の項目について、平成26年以降5年程度の期間で見なおしを行う。

  平成26-28 地域振興費・支所に要する経費を加算 3,463億円程度  
  平成27-29 消防費、清掃費、地域振興費で加算等 1,000億円程度  
  平成28年度以降 保健衛生費、小中学校費、徴税費等 700億円程度  
  平成28年度以降 その他の経費 標準団体の面積要件見なおし 1,500億円程度  
  合 計   6,700億円程度

 ここに言う「支所に要する経費」だが、合併市にとっては、それを縮小する方向で制度設計された現行制度は現状を反映していないと主張してきた。この主張には、道理がある。合併後の面積が広大な事例が多いことが一つの理由だろう。それに、低経済成長のもとで、交付税原資が税の自然増収によって伸びることが、これからは望めないことが大きい。高度経済成長のもとなら、税の自然増収が期待でき、それを交付税の減額の穴埋めに使えたからだ。この実情に合わせた算定替の7割存置は、しかし、非合併都市の交付税原資の簒奪であることは、銘記しておきたい。

 いずれにしても、合併市町村の面積の想定外の拡大という実情を踏まえて、人口減少社会に向けた軟着陸体制をとることが求められる。その際、交付税算定の考え方としては、それまでと逆に、支所機能の維持と再構築を要請する方向に舵を切ったことになる。集落活性化の地域拠点として、支所をどう活かしていくか。その際、特交措置のある「集落支援員」や「地域おこし協力隊」などの活用や、地域担当職員の配置など、改めて検討したい。それも国の「地方創生」などというかけ声にゆるがない、現場からの先進事例に学ぶものでありたい。

 

さわい まさる 奈良女子大学名誉教授)