地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2013年9月のコラム

人口減少時代に対応した地方財政へ

 来年度の地方財政の見通しについては、分権改革には冷淡に見える安倍政権の下で、その見通しは厳しい。また不確定な要素が例年になく多い。まず消費税の税率引き上げがきちんと行われるかが問題で、8月末の概算要求段階では未定となっている。また年末の自動車関係税や法人特別税の取り扱いが不透明である。さらに地方財源不足を国と地方が分け合って補てんする「折半ルール」は13年度までとされており、14年度以降はどうするか決まっていないが、概算要求段階では継続するものとして試算しているというあやうさがある。

 8月31日締め切りの14年度概算要求では総務省は14年度の地方税収は2.2%の伸びと試算し、地方交付税は1.8%減と仮に置いている。とはいえ、地方一般財源総額は、8月12日に閣議決定された中期財政計画では13年度並みを確保するとされている。

 地方財政対策では、この間に地方財源不足を補てんするためにとられてきた「歳出の特別枠」と「交付税の別枠加算」を廃止するかどうかが焦点である。

 6月14日の「骨太の方針」や8月12日の「中期財政計画」の土台になっている「財政制度等審議会」の答申に、このことが具体的に書いてある。これは5月27日である。

 「また、地方財政計画における歳出特別枠(13年度1兆4,950億円)や地方交付税の別枠加算(13年度9,900億円)は、リーマン・ショックに伴う著しい景気後退等を受け、実需に基づく積算を伴わない異例の対応として実施されたものである。国の一般会計においては、同じ背景の下で設けられた経済危機対応・地域活性化予備費を平成25年度予算で廃止しており、地方財政においても平時の対応に戻すべく、歳出特別枠や別枠加算の解消を図る必要がある。」これは国の景気対策と地方の財政の違いを無視した暴論である。

 振り返ってみると、この地方財政計画の「歳出特別枠」は、08年度に「地方再生対策費」4,000億円として導入されたものである。このときの財源は、地方の法人事業税の一部を国税とした地方法人特別税の創設に伴い、「地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政状況の厳しい地域に重点的に配分する」とされていた。また翌年度には、この「地域再生対策費」に「地域雇用創出推進費」5,000億円が加わり、計9,000億円とされた。その後、名目は変遷するが、13年度の「地域経済基盤強化・雇用等対策費」1兆4,950億円として継続してきたもの。

 また、地方交付税の「別枠加算」は09年度から実施されている。09年度は1兆円だったが、13年度は「財源不足の状況を踏まえた加算」として9,900億円が地方交付税として増額されている。

 これらは、基本的には「地方財源不足」を補てんするための「臨時的な措置」であった。考えなければならないのは、これら「臨時的措置」は、財務省サイドからは実需がないというが、地域には「雇用対策」や「新エネルギー対策」、「老朽化する社会資本の維持管理施策」、「生活保護受給者の就労と生活支援」にむけた「パーソナルサポーター事業」、「地域での起業支援」や空き家対策など「人口減少地域対策」といった、喫緊の『実需』がある。しかしこれらの新規事業に対しては、それに充てるべき新規財源は用意されていない。これら事業への財源を自治体レベルで単独事業としてひねり出すのは限界がある。これらを「臨時的措置」としてどうにかカバーしてきたのが、「特別枠」や「別枠加算」だったと言える。

 つまり、人々の生活を支えるのが財政の機能の一つだとしたら、現状はきわめてひずんだ構造となっていると言ってよい。その根っこは、減少する税収の一方で、地域の財政需要が着実に拡大しているところにある。したがって、「歳出特別枠」や「別枠加算」を通常の交付税枠に収めることが必要なのである。別枠加算を削ったりすることは地域経済を破壊することにしかならず、経済活動自体を収縮させることになる。地方財政は人口減少時代に対応し、増大する財政需要をきちんとカバーできる制度として、再構築することが求められている。

さわい まさる 奈良女子大学名誉授)