地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2011年12月のコラム

補助金改革

武藤 博己

 最近2つの自治体における補助金改革にかかわった。1つはこの12月に市長に答申することになっているS市の補助金検討委員会であり、もう1つは2年前の7月に提出したF市の補助金制度検討委員会である。

 まず、なぜ第三者機関で検討するのであろうか。補助金を検討する場合、財政や企画などの部署に庁内プロジェクトが置かれることが多いが、基本的に補助金を担当する各部署と横並びであり、実態について詳しい担当課との交渉で廃止・縮小の説得は難しい。そこでトップへの説明・説得と指示を求めることになるが、数が多く多岐にわたり内容が詳細で金額もわずかであるため、説明・説得に時間がかかりすぎ、トップからの指示で改革するのが困難であるといえる。また政治的な支持に関係するものもあり、改革の視点も庁内だけの議論では不十分な場合があり、外部の市民・識者から新たな意見を取り入れ、それに庁内の改革意見を含めて報告書を作成し、首長への答申とそれを受けての指示という筋立てで、改革を実施するための道具にする。

 では、部外者の視点から改革につながる根拠が示せるのであろうか。個別の補助金に関して、改革につながる洞察を導くことは難しく、苦労した。とはいえ、次のような理由に対しては、担当課も抗いがたいのではないか。すなわち、①設置後一定の期間が経過しても実績がない場合、②金額が極めて少額(たとえば10万円以下)である場合、③補助される団体の繰越金が多い場合(補助金が繰越金の数%)、④団体の総予算に占める割合がきわめて小さい場合(補助金が総予算の数%)、などである。

 社会状況の変化を補助金の改革に結びつけることは可能であるが、それを客観的に証明することは難しい。そうした中でも、チャイルドシート購入への補助金については、義務化して10年以上が経過していること、普及率が高いこと、自動車利用者だけへの補助であること等を理由として、廃止を提言した。

 また、改革が難しいのは、弱者支援の立場から少額の補助を行っている場合である。共益的団体(たとえば、母子家庭連絡会のような団体)に対する補助金で、父子家庭が含まれず、また母子家庭の一部しか参加してない場合、一人親家庭への支援としての組替えを提言した。また、団体への補助金で、運営費の補助となっている場合には、団体の公益的な活動に補助するという組替えを提案した。こうした補助金はけっこうあるが、市民公益活動等助成金のような仕組みを導入する場合には、廃止提案が受入れられやすいのではないか。

 農業補助金や自治会への補助金は、種類が多様で、対象となる活動がその一部であるため、全体が把握できず、改善案を出すのが難しい。複数の補助金を統合して、農業や自治会活動のどのような側面を重視して補助するのか、整理してほしいと提言した。そんな中でも、リモコン操縦ヘリによる農薬散布は、それ以外の方法による農薬散布には何らの補助もないため、公平性を理由として縮小を提案した。

 最後に、国・県の補助金が廃止される場合には、既得権を作ってしまっているので継続するかどうかの判断は難しいが、廃止・縮小の理由にはなる。逆に国・県の補助金は、独自の政策展開の障害となる場合や中央統制=自治権の制約という観点から問題となるし、継続している場合には廃止・縮小の理由づけが難しくなる。

補助金改革は、政策評価の外部委員会と同様に、なかなか難しい判断が求められた問題であった。

(むとう ひろみ 法政大学政策創造研究科教授)