地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2022年10月中央の動き


中央の動き


◎固定資産台帳の活用策など検討へ研究会 ― 総務省
 総務省は8月1日、今後の地方公会計のあり方に関する研究会を発足させた。公共施設等の総合管理計画・個別施設計画の策定・見直しが進み、資産管理がより重要となっていることから、地方公会計情報の行財政運営における継続的・具体的な活用手法などを検討する。具体的には、公共施設マネジメントなど固定資産台帳の活用、セグメント分析など財務書類の活用を検討。併せて、固定資産台帳と公有財産台帳など他の台帳との連携、予算執行との連携による早期作成・精密化・負担軽減なども検討する。
 また、総務省はこのほど、特別減収対策企業債の2021年度実績をまとめた。同意額は26団体、607億円。内訳は交通事業が13団体、414億円、病院事業は5団体、16億円。前年度は交通事業10団体、532億円、病院事業70団体、247億円で、病院事業の減少が目立つ。同企業債はコロナ感染症で大幅な収入減が生じた交通、病院などの資金繰りのため2020年度に創設された。


◎空き家対策で代執行など3万件超の措置 ― 国交省
 国交省は8月10日、空き家対策の施行状況を発表した。今年3月31日現在、空家等対策推進特別措置法に基づく空き家対策計画を1,397市町村(80%)で策定、法定協議会を947市町村(54%)で設置していた。都道府県別では、同計画は山梨、岐阜、滋賀、和歌山、徳島、愛媛、高知、大分の各県で全市町村が策定、沖縄と宮城両県は策定市町村が半数以下。法定協議会は、茨城(91%)はじめ島根、徳島、佐賀の各県でも設置市町村が80%台と高いが、和歌山、宮崎、沖縄3県では10%台と低い。なお、同計画の「策定予定なし」は126市町村(7%)、法定協議会の「設置予定なし」は543市町村(31%)あった。また、2015年度の同法施行から21年度末までに特定空き家等に対し合計3万3,943件の措置が講じられた。内訳は、助言・指導が3万785件、勧告が2,382件、命令が294件で、このほか行政代執行が140件、略式代執行が342件。さらに、同措置や市町村の空き家対策により合計14万2,528件の管理不全空き家の除去や修繕などが実施されている。
 なお、空き家は全国で約820万戸あり年々増加傾向にあるが、今年5月に成立した第12次地方分権一括法で国土調査法や空家等対策特措法などの関連事務も住民基本台帳ネットワークシステムの利用が可能となった。
◎Jクレジット「森林経営」の期間延長 ― 林野庁
 林野庁は8月10日、J-クレジット制度の森林管理プロジェクト制度の見直しを発表した。J-クレジット制度は、省エネ設備の導入や森林経営による温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国(林野庁、環境省、経産省)が認証する制度で、クレジットを企業等に売却もできる。森林分野では「森林経営活動」「植林活動」があり、森林による温室効果ガスの吸収量をクレジットとして認証申請できる。見直しは、J-クレジットのプロジェクトの認証対象期間を原則8年間から最大16年間に延長するほか、①伐採木材の炭素固定量のクレジット化②プロジェクト対象区域内の天然生林の吸収量算定対象への追加③「再造林活動」を新設 ― などが見直しされた。
 また、農水省は8月4日、多様な地域資源活用の農泊研究会を遠野市で開催した。同省は、農泊情報プラットフォーム構築により農泊の情報を一覧化し旅行商品造成、宿泊予約を促進する必要があるとし、2022年度中に旅行業者向け機能のモデルを構築、23年度中に同機能を検証し確定、24年度以降に農泊情報プラットフォームを構築・本格運用する方針を示した。
◎病床確保へ都道府県が医療機関と協定 ― 厚労省
 厚労省は8月19日、新たな感染症に対応する医療機関の抜本的拡充に向けた感染症法改正の「対応の方向性」を社会保障審議会医療保険部会に示した。新型コロナ感染症の拡大で医療体制が十分確保できない事態が生じたため、平時から都道府県と医療機関が新興感染症に対応する病床等を提供する協定を結ぶ仕組を法定化し、感染症危機発生時には協定に基づき医療を確保する。病床確保の履行確保のため国・都道府県が強い権限を持つ法律上の手当ても行う。具体的には、①都道府県は国の基本指針に基づき感染症まん延時の医療提供体制の数値・目標(病床、発熱外来・診療、後方支援、人材派遣)等の計画を平時から策定②都道府県が医療機関と協定を締結するが、公立・公的医療機関は締結を義務化する③協定に沿った履行確保の措置として履行状況の公表、医療機関の減収補償、都道府県知事の勧告・指示などを検討する ― などとした。
 一方、政府は8月24日、新型コロナ感染者の全数把握を見直す方針を打ち出した。医療機関や保健所の業務軽減が目的で、全国知事会は同日、「高く評価する」とのコメントを発表したが、各都道府県知事により対応が異なり、当面、混乱が続きそうだ。
◎地方議会の法制化には消極論 ― 地制調小委員会
 第33次地方制度調査会の専門小委員会は8月22日、「地方議会のあり方」をテーマに審議した。総務省が、①議会の位置付け②立候補環境の整備③地方議会のデジタル化への対応 ― について「議論の着眼点」を説明。地方議会3団体が要望している地方自治法への地方議会の位置付け明記では、多様な民意集約には多様な層の住民参画が必要だが、「議会の位置付けや議員職務を法律で規定することに意義があるといえるか」と問題を提起。さらに法制化では各議会を制約するものであってはならず、「具体的な権利義務の創設でなく、議会の役割・議員の心構えとして当然の要請を規定するか」と提案。また、立候補環境の整備では立候補に伴う「不利益取扱いの禁止」「立候補休暇」の制度化の課題を提起。さらに、デジタル化対応では①本会議のオンライン開催②請願や意見書のオンライン提出 ― が認められるかなどの課題を提案した。
 これを受けて各委員から、地方自治法への位置付けでは「議員の多様性確保・担い手不足解消と条文整理との因果関係が不明確だ」(伊藤正次東京都立大学教授)、「(法制化すると)地方議会はこうあらねばならないとなる。議会基本条例に加えて法令化は『地方分権はいらない』と言っていることになる」(太田匡彦東京大学教授)など消極的な意見が多く出た。一方、オンライン会議では、「小規模町村では議会存続の危機にあるが、オンライン参加が突破口になるのではないか」(大橋真由美上智大学教授)、「オンライン開催では参加可能のメリットもあるが、議決等で不正がないかデメリットも検討すべき」(村木美貴千葉大学教授)などの意見が出た。
◎教育委員の選任で40団体が公募 ― 文科省
 文科省は8月23日、教育委員会の現状を発表した。首長と教育委員会が連携を図る総合教育会議を2020年度中に都道府県・指定都市では平均1.8回、市町村では同1.4回開催。学校施設整備やいじめ対策などを取り上げていた。また、教育長の選任(2021年3月時点)で北海道浜中町や太宰府市など9団体が公募で選任していたほか、教育委員も函館市や大分県日出町など40団体が公募した。さらに、地方分権改革の一環で社会教育機関事務を条例で首長が管理執行できるが、スポーツ分野で都道府県・指定都市は44団体(66%)、市町村は218団体(13%)、文化分野で都道府県・指定都市は32団体(49%)、市町村は171団体(10%)、公立社会教育分野で都道府県・指定都市は9団体(13%)、市町村は39団体(2%)で移管していた。
 また、文科省は8月24日、学校基本調査(2022年5月1日現在)を発表した。在学者は幼稚園が92万3千人で前年より8万6千人(8.5%)減少した一方、認定こども園は82万1千人で同2万4千人(3.0%)増加、過去最多を更新した。小学校は615万1千人で同7万2千人(1.1%)減少、中学校は320万5千人で同2万4千人(0.7%)減少。いずれも過去最少となる。高校は295万7千人で同5万1千人(1.6%)減少。一方、大学全体は293万1千人で同1万3千人(0.4%)増加、過去最多となった。うち学部は263万2千人で同6千人(0.2%)増加、大学院は26万2千人で同4千人(1.5%)増加した。なお、大学学部の女子学生は120万1千人で同4.5千人(0.3%)増加、その割合は前年度と同様45.6%で過去最多を維持した。
◎橋梁の修繕でなお約3割が未措置 ― 国交省
 国交省は8月24日、橋梁等の点検結果を発表した。道路法改正(2013年)で道路管理者は全ての橋梁、トンネル等で5年に1度の点検が義務付けられたが、2巡目(19~21年度)の点検実施は橋梁61%、トンネル53%、道路附属物等60%と1巡目より進捗しているが、1巡目点検で緊急措置すべきとされた橋梁の修繕等の着手率は65%、完了率は46%の低水準にとどまった。さらに、次回点検までに措置すべきとされた橋梁のうち5年経過しても措置に着手していないものが約3割あった。このほか、道路舗装も修繕段階の舗装延長は国が約7,000キロ㍍、都道府県・政令市は約1万1,000キロ㍍あるが、修繕措置に着手した割合は国17%、都道府県・政令市19%の低水準となっている。
 また、国交省は8月22日、インフラ分野のDX推進本部を開催した。すでに今年3月にDXアクションプランを策定、各施策の実行計画をまとめているが、さらに分野網羅的・組織横断的な取組をアクションプランのネクストステージとして推進する。
◎2023年度予算へ地方交付税0.8%増要求 ― 総務省
 総務省は8月31日、2023年度予算概算要求を発表した。要求総額は17兆5,675億円、前年度比6.7%増で、うち地方交付税は18兆1,931億円、同0.8%増を計上した。このほか、マイナンバーカードのマイナポイント全国展開に763億円、自治体DX推進計画の改訂・システム標準化に4.5億円、分散型エネルギーシステム促進に13億円、緊急消防援助隊の充実強化に54億円、感染症を踏まえた広域連携推進に0.7億円などを要求。また、23年度地方財政収支の仮試算によると、地方財規模は前年度比1.2%増の91.6兆円。うち、給与関係経費は同0.2%減の19.9兆円、一般行政経費は同1.4%増の42兆円で、まち・ひと・しごと創生事業費は前年度同額の1兆円を計上。また、投資的経費は前年度同額の12兆円、公債費は同0.8%減の11.3兆円とした。
 一方、地方六団体は8月24日、自民党総務部会に来年度予算編成に向けた要望を申し入れた。新型コロナ感染症対応では各自治体が柔軟・機動的に対策を講じられるよう財政措置を含めた支援の仕組構築など、物価高騰対策では機動的な予備費の活用と大型補正予算の編成を要請した。また、地方交付税など一般財源総額の確保・充実のほか、①デジタル田園都市国家構想交付金の拡充②自治体クラウドの取組推進とフォローアップ③脱炭素地域づくりに向け総合的な交付金の創設 ― などを求めた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)