月刊『自治総研』
2022年7月中央の動き
中央の動き |
◎地方から国へ「権限の逆移譲」の意見も ― 地制調 ◎出生数が過去最少を更新 ― 2021年人口動態統計 厚労省は6月3日、人口動態統計(2021年)を発表した。出生数は、81万1,064人で前年より3.6%減少し過去最少を更新。合計特殊出生率も1.30で前年より0.03ポイント低下した。都道府県別では、沖縄1.80、鹿児島1.65、宮崎1.64で高く、東京1.08、宮城1.15、北海道1.20で低い。一方、死亡数は143万9,809人(前年比4.7%増)で戦後最多を記録。この結果、62万7,205人の自然減で過去最大の減少となった。 一方、内閣府は6月14日、2022年版少子化社会対策白書を公表した。コロナ感染症の影響下での少子化の現状を分析。婚姻件数が2020年は前年比12.7%減、21年は同4.3%減となったほか、月別出生数が21年1月は前年度同期比14.6%減、2月は同10.3%減の大幅減となった。また、生活環境が大きく変化する中、20・30代では他の世代より「生活の維持・年収」「仕事」「結婚、家族」の不安が増加する一方、結婚への関心では約6割が「変わらない」と回答した。白書はこのほか、トピックスで①自治体が行う「結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム」②男性の育休取得と家事・育児参画促進の「パパ大学」開催③子育て支援コンソーシアム開催 ― などの取組を紹介した。 ◎新しい資本主義と骨太方針2022を閣議決定 ― 政府 政府は6月7日、「新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画」と「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)を閣議決定した。実行計画では、「新しい資本主義に向けた計画的な重点投資」として、賃金引上など人への投資と分配のほか、大学教育改革など科学技術・イノベーションへの重点的投資、スタートアップの起業加速、デジタル田園都市国家構想の推進などを掲げた。また、骨太の方針2022では、「財政健全化の旗を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」とする一方、「経済あっての財政であり、現行の目標年度によりマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない」とも指摘した。 岸田首相は同日の会議で、「社会的課題をエネルギー源と捉え、スタートアップや資産所得倍増の複数年にわたる具体的プランを本年中に策定する」「骨太方針では、新しい資本主義実現に向け計画的・重点的な投資と規制・制度改革を行う」と述べ、特に、来年度予算では「国家安全保障の担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」との意向を強調した。 ◎分散型エネルギーシステム導入へ ― 環境白書 環境省は6月7日、2022年版環境白書を公表した。今後も地球温暖化で豪雨や猛暑のリスクが高まるが、経済・金融へのリスクも懸念されると指摘。わが国では、2050年までのカーボンニュートラルと30年度の温室効果ガス46%削減(13年度比)の方針のほか脱炭素先行地域づくりなどの取組加速を紹介。今後も、再生可能エネルギーを活用した分散型エネルギーシステムの導入で災害時への対応力向上にも取り組むとした。 また、環境省は6月17日、2020年度の地球温暖化対策計画(2021年10月閣議決定)の進捗状況を発表した。わが国の温室効果ガス排出量と森林等の吸収源対策による吸収量の合計は11億600万トン(二酸化炭素換算)で、前年度より6,000万トン減少。13年度(削減目標基準年)の総排出量に比べ22%の減少となる。コロナ関連による製造業の生産量や旅客・貨物輸送量の減少などに伴うエネルギー消費量の減少を反映した。 ◎男女間の賃金格差が共同参画の阻害要因 ― 内閣府 内閣府は6月14日、2022年版男女共同参画白書を公表した。「家族の姿の変化・人生の多様化」「結婚と家族を取り巻く情況」を分析した上で、「人生100年時代の男女共同参画の課題」を提起。具体的には、「共働き世帯」が「無業の妻世帯」の2倍以上(2021年)に増加したが、世帯所得300万円未満は男性32%に対し女性は53%と男女間の賃金格差が残っている。また、「結婚の意志なし」の理由では、男性は「経済力がない、仕事が不安定」が、女性は「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」が多かった。 このため、白書は男女共同参画が進んでいない背景に「家族の姿が変化しているにもかかわらず男女間の賃金格差や働き方の慣行、人々の意識、政策や制度が依然として戦後の高度成長期、昭和の時代のままとなっている」ためと指摘。人生100年時代で一人ひとりの人生も長い歳月の中で様々な姿をたどっているなど、「もはや昭和ではない」とし、これらの変化・多様化に対応した制度設計や政策が求められるとした。 ◎次の感染症対応へ感染症危機管理庁を創設 ― 政府 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は6月17日、次の感染症危機に備える対応の方向性を決めた。司令塔(総理)の指揮命令を徹底するため新たに「内閣感染症危機管理庁」(仮称)を設置し機能を一体化するとともに、新たな専門家組織として、いわゆる日本版CDCも創設する。また、医療供給体制の強化のため都道府県が医療機関と病床・外来患者確保などの協定を締結する仕組みを創設。国立・公的医療機関等には同協定締結を義務化する。さらに、都道府県と医療機関等で自宅・宿泊療養者に対する医療提供・健康観察についても協定を締結するなど感染症危機発生時には各協定に基づき対応できるようにする。このほか、国による広域での医療人材の派遣・患者輸送の調整、検査体制・医療用物資の確保強化なども盛り込んだ。 同日の本部会合で岸田首相は「有事には総理のリーダーシップの下、一元的に対策を行う」と述べ、各閣僚に法案準備などの具体化を指示。これを受けて、全国知事会は6月21日、政府に対し①危機管理庁設置等では地方の意見を反映できる仕組み導入②まん延防止等重点措置では各都道府県知事が地域実情を踏まえ対策を選択できるよう早急に見直す ― などを要請した。 ◎「食料安全保障の確立」を農業プランに明記 ― 政府 政府は6月21日、農林水産業・地域の活力創造プランの改訂を決めた。世界の食料需給リスクの顕在化を踏まえ新たに「食料安全保障の確立」の章を設け、燃油・飼料等の価格高騰対策と調達国の多角化、肥料原料の備蓄、輸入依存穀物(小麦・大豆・トウモロコシなど)の増産を進めるなど将来の食料安定供給確保の総合対策構築に着手すると明記。また、「みどりの食料システム戦略」推進では、2030年目標に①化学農薬使用量10%削減②化学肥料使用量20%低減③有機農業の取組面積6.3万㌶に拡大④ハイブリッド型園芸施設割合を50%に拡大 ― などを盛り込んだ。 一方、農水省は同日、「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」を発表した。コロナ禍とウクライナ侵攻などを踏まえリスクを洗い出した。わが国の食料供給は国産37%、米国23%、カナダ11%、豪州8%、ブラジル6%などだが、輸入では、価格高騰リスクが飼料穀物で顕在化、小麦・大豆・なたねも影響が大きいため「重要なリスク」と評価。国内生産では、労働力・後継者不足が労働集約的な品目(果実、野菜、畜産物)で高まっており「重要なリスク」とした。 ◎官庁施設の防災で管理者向けガイドブック ― 国交省 国交省は6月22日、官庁施設の施設管理者のための防災性能確保ガイドブックをまとめた。官庁施設は、多くの国民・地域住民が利用するとともに災害時には活動拠点・避難場所となるため、①建物の防災性能②関係法令の改正対応 ― などの視点から「災害時に備えるためにすべきこと」を整理した。災害前では、非常時の指揮命令系統や連絡体制、事前・事後の対応を決めておくほか、暴風雨など気象予報発令時の事前対応、発災後の安全確認や警察・消防への通報、図面など資料の準備、鍵の管理の取組などを解説した。 また、政府の国土強靱化推進本部は6月21日、国土強靱化年次計画2022を決めた。自治体が策定する「地域計画」に「目指すべき将来の地域の姿」を示し、その実現のための対策を位置付けるほか、大規模自然災害発生後の経済活動の維持・迅速な復旧復興のため民間企業の事業継続と自治体・事業者との連携を強化。併せて、気候変動への対応や予防保全による老朽化対策を実施する。このほか、次期基本計画見直しの検討にも着手するとした。 ◎定年引上期間中も新規採用は必要 ― 総務省 総務省は6月24日、定年引上に伴う自治体の定員管理に関する報告書を発表した。改正地方公務員法で来年度から地方公務員の定年が60歳から65歳へ2年に1歳ずつ引き上げられることを受けて、新規採用や一時的増員への対応・留意点などを示した。 新規採用について、①期間中は定年退職者が2年に1度しか生じないため、定員を固定すると新規採用者が年度により変動し職員の年齢構成などに偏りが生じる②地方公務員を志望する者を確保するため採用者数の平準化が望ましい③自治体業務は専門職を一定数確保・維持、継承することが必要 ― などを挙げ、行政サービスの質確保のため定年引上の期間中でも一定の新規採用者を継続的に確保することが必要だとした。また、総定員数を変えずに毎年の退職者数を補充する採用から、制度完成2031年4月に向け10年程度を見越した定員管理を行う必要性も指摘した。併せて、定年引上で職員数が一時的に増員となる場合でも住民の理解が得られるよう工夫と説明も求めた。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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