地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年9月中央の動き


中央の動き


◎GX会議で今後10年のロードマップ作成へ ― 政府
 政府は7月27日、GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議を発足させた。化石燃料中心の経済社会システム全体をGXに移行させるための「今後10年のロードマップ」を年内にも作成する。会議で岸田首相(議長)は「国際エネルギー市場の混乱や国内の電力需給ひっ迫など足元の危機克服をGX実行に向けた第一段階に位置付ける」と強調した。検討課題に、「GX経済移行債」(仮称)創設や民間企業等の「GXリーグ」活用、アジア・ゼロエミッション共同体構想など5つの政策イニシアティブを挙げた。
 一方、全国知事会は7月29日の全国知事会議で脱炭素社会実現に向けた対策推進の提言を決めた。「2050年カーボンニュートラル宣言」の具体化に向け地域脱炭素移行・再エネ推進交付金の拡充や国民の理解・行動変容の促進につなげる情報発信を要請。このほか、分野ごとの対策として①2035年までに乗用車新車販売の電動車100%実現②新築住宅の再生可能エネルギー導入の義務化③工場等の熱電併給の導入などの支援④再生可能エネルギーの主力電源化の徹底⑤森林資源の循環利用で二酸化炭素吸収量確保 ― などを提言した。


◎コロナ対応など地方財政措置で申し入れ ― 総務省
 政府は7月29日、2023年度予算の概算要求基準を決めた。「新しい資本主義」の政策実現に向け「重要政策推進枠」を設けたほか、中期防衛力整備計画、少子化対策・こども政策、GXへの投資は上限を設けず予算編成過程で検討するとした。
 これを受けて総務省は同日、各省庁に対し概算要求に当たって留意・改善すべき事項31件を申し入れた。新型コロナウイルス感染症対応と原油価格・物価高騰等の対応では地方の意見を踏まえた財源確保を要請。また、デジタル田園都市国家構想の実現ではハード・ソフトのデジタル基盤整備とデジタル人材の育成・確保に取り組むとともに、ガバメントクラウド利用料の自治体負担のあり方では的確な情報提供を求めた。こども政策の推進では、国と地方の役割分担のもと社会全体での費用負担のあり方を含め幅広く検討するよう要請。さらに、地域公共交通ネットワーク再構築のため、国が中心となって事業者と自治体が参画する新たな協議の場を設けるとともに、規制見直しや従来と異なる支援等を実施する場合は官・民、国・地方の役割分担を明確にした上で必要な措置を講じるよう求めた。
◎ふるさと納税の受入額が過去最高を更新 ― 総務省
 総務省は7月29日、2021年度のふるさと納税の調査結果を発表した。受入総額は8,302億円で、前年より約1.2倍増加。受入件数も4,447万件で前年より約1.3倍増えた。ふるさと納税は2015年度から急増を続けており、今回も過去最高を更新した。一方、控除額は5,672億円、控除適用者数は741万人で、いずれも前年より約1.3倍増えた。受入額のトップは紋別市の153億円。次いで都城市146億円、根室市146億円、北海道白糠町125億円、泉佐野市113億円などが続く。控除額では横浜市の230億円をトップに、名古屋市143億円、大阪市124億円、川崎市103億円、世田谷区84億円などの大都市が続く。金子総務相は同日の会見で、今回も2自治体が返礼品の基準違反で制度から除外されたほか、返礼品代わりに現金還元を試みる事業者が現れたことに対し「大変遺憾だ。今後も制度が適正運用されるよう取り組む」と強調した。
 なお、ふるさと納税募集の際の使途については98%が「選択できる」とし、80%が受入額実績と運用状況を公表している。また、募集費用は合計3,851億円で、うち返礼品調達費用が27%、返礼品送付費用が8%、事務費用が9%などとなっている。
◎市町村の半数でダンピング対策が未導入 ― 国交省
 国交省は8月1日、市町村におけるダンピング対策の取組状況を「見える化」し公表した。測量、調査など4業種について2つの対策の導入状況(2021年7月1日現在)を調べた結果、市町村では約半数がいずれの制度も未導入だった。うち、低入札価格調査制度の未導入は7政令市(35%)、708市区(89%)、876市町村(95%)。最低制限価格制度の未導入は1政令市(5%)、322市区(41%)、598市町村(65%)。これを都道府県別にみると、いずれの制度も導入しているのが岩手や茨城、富山、静岡、和歌山、島根、佐賀など30道府県、いずれか一方の制度導入が宮城、東京、長野、兵庫、山口、鹿児島など16都府県。福岡ではいずれの制度も導入している市町村がなかった。
 また、同省の社会資本整備審議会は7月29日、「河川機械設備のあり方」を答申した。河川機械設備が大更新期を迎えているため、長寿命化のためのメンテナンスサイクルの確立や担い手不足に対応した遠隔化・自動化・集中管理への移行、併せて自治体や企業の技術力の維持向上の必要性などを提言した。
◎デジタル活用交通社会の未来2022発表 ― デジタル庁
 デジタル庁は8月2日、「デジタルを活用した交通社会の未来2022」を公表した。政府は2014年にITS・自動運転に向けた戦略「官民ITS構想・ロードマップ」を決定したが、さらに本格的な社会実装に向け「需要が供給に合わせる」から「供給が需要に合わせる」経済へのシフト展開が必要だと指摘。「暮らし目線からのサービス設計」に向けて11の視点を整理した上で、「ITS・自動運転」を中心とした枠組から「歩くから飛ぶまで」にスコープを拡大するよう提案。その具体例に「自動運転・運転支援」「道路空間」「モビリティサービス・MaaS」「ドローン」「空飛ぶクルマ」などの6分野を挙げた。
 一方、総務省は7月22日、第4種踏切の安全確保の勧告に基づく改善措置状況を発表した。遮断機・警報機がない第4種踏切は全国に約2,600カ所あるが、踏切事故は遮断機のある踏切の約2倍もある。このため、昨年秋に改善を国交省に勧告した結果、今年7月までに39都道府県で地方踏切道改良協議会合同会議が開催され協議を行っていた。総務省では、引続き第4種踏切の廃止や第1種化に向けた取組状況を把握する。
◎救急業務にマイナンバーカードの活用検討 ― 消防庁
 総務省消防庁は8月4日、2022年度救急業務のあり方検討会を発足させた。21年中の救急出動は約619万件と前年より4.2%増加したが、なおコロナ感染対応や高齢化の進展から一層の救急需要の増大・多様化が懸念される。このため、①マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化②救急隊員等が行う観察・処置 ― をテーマに検討する。具体的には、マンナンバーカードの健康保険証利用の開始を踏まえ救急業務に必要な傷病者情報を正確・早期に把握するなどの対応を実証実験も含め検討する。
 また、政府のナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会は7月21日、国土強靱化基本計画の変更(中間整理)をまとめた。見直しでは、①地域計画について大規模災害によるサプライチェーン問題など全国的視点のチェックが必要で、国が対策・方向性を考え地方レベルに落とし込む②「流域治水」から「流域防災」など複合災害への対応も含め国土強靱化の地域連携を強化③近年の災害では関連死が多く、従来の枠組を超えた関連死防止も盛り込む ― などを示した。
◎食料自給率は上昇するが38%に止まる ― 農水省
 農水省は8月5日、2021年度の食料自給率・食料需給力指数を発表した。カロリーベースの食料自給率は前年度より1ポイント上昇したが、依然、38%と低い。小麦・大豆が作付面積・単収ともに増加するとともに、コロナ禍で低迷していた米の外食需要が回復したことを反映した。カロリーべースの食料国産率も前年度より1ポイント上昇の47%となった。飼料自給率は前年度と同様の25%だった。このほか、生産額ベースの食料自給率は前年度より4ポイント低下の63%となった。国際的な穀物価格や海上運賃の上昇による原料輸入額の増加などを反映した。生産額べースの食料国産率も前年度比2ポイント低下の69%となった。
 また、農水省は8月2日、外国法人・資本による農地、森林取得の状況を発表した。2021年の1年間の外国人による農地取得はゼロだが、森林取得は合計19件、231㌶あった。都道府県別では、兵庫県の1件(米国)の133㌶が最も大きく、次いで北海道14件(米国、マカオ、香港、オーストラリアなど)の47㌶、新潟県1件(英領バージン諸島)の46㌶などが大きい。
◎月例給・ボーナスともに引き上げを勧告 ― 人事院
 人事院は8月8日、2022年度の国家公務員の月例給を0.23%、ボーナスを0.10月分引き上げるよう内閣等に勧告した。両方の引き上げ勧告は3年ぶり。初任給と若年層の俸給月額を引き上げ、年間給与は平均5万5,000円増える見通し。具体的には、初任給を大卒は3,000円、高卒は4,000円引き上げるほか、30歳台半ばまでの職員の号俸も改定する。ボーナス引き上げは勤勉手当に配分する。このほか、報告で採用試験の見直しや長時間労働の是正、テレワークに対応した勤務時間制度の検討などを求めた。なお、総務省は同日、地方公務員給与を国に準じて引き上げた場合の地方負担(一般財源)は約1,430億円となると発表した。
 一方、厚労省の中央最低賃金審議会は8月2日、2022年度の最低賃金(時給)を全国加重平均で31円を目安に引き上げるよう答申した。円安やウクライナ情勢による急激な物価上昇を踏まえ最大の上げ幅となった。最も高い東京都は1,072円、最も低いのは高知・沖縄両県の850円。大阪府も1,023円となり東京都・神奈川県に次いで1,000円の大台に乗せた。
◎東京圏の住基台帳人口が初めて減少に ― 総務省
 総務省は8月9日、住民基本台帳人口(2022年1月1日現在)を発表した。総人口(日本人)は1億2,322万3,561人で、前年より61万9,140人(0.50%)減少した。出生者数が81万2,036人と調査開始(1979年)以降の最少となる一方、死亡者数は144万1,739人で同最多となり、自然増減数は62万9,703人の減。社会増減数は1万563人の増だった。都道府県別にみると、人口増加は沖縄(1,478人増)だけで、前年増加の埼玉、千葉、東京、神奈川は減少に転じた。東京の減少は26年ぶり。一方、市区部人口は1億1,282万6,524人で前年より50万4,247人(0.44%)減少。町村部人口は1,039万7,037人で同11万4,893人(1.09%)減少した。なお、東京圏(4都県)の人口は3,561万115人で、前年より3万4,498人(0.10%)減と初の減少となった。
 一方、同住基人口を基に衆議院選挙の「1票の格差」を試算すると、20選挙区で2倍を超えていた。小選挙区の人口の最多は「東京22区」の56万2,164人、最少は「鳥取1区」の27万1,371人。さらに、政府の審議会が今年6月に勧告した「10増10減」で試算しても2選挙区(福岡5区、京都6区)で2倍を超えた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)