地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2022年8月中央の動き


中央の動き


◎住民の避難行動の情報共有で全体会議 ― 国交省
 国交省は7月11日、住民自らの行動に結びつく水害・土砂災害ハザード・リスク情報共有プロジェクト第7回全体会議を開いた。防災情報を発信する行政と情報を伝えるマスメディアなどが住民自らの行動に結びつく情報の提供・共有方法を充実させるため開催しているもので、国交省やNHK、気象キャスターネットワークなどが参加し、各取組状況を紹介するとともに連携方法などをめぐり意見交換した。
 一方、内閣府の被災者支援のあり方検討会は6月29日、「委員の意見・提案のまとめ」(論点整理)を発表した。「被災者支援のメニュー充実」「被災者支援の体制構築・強化」について提言。避難生活の環境改善ではベッドのダニ・カビ対策、食事ではスーパーやコンビニにも委託、携帯トイレも確保などの具体的対応策のほか、災害ケースマネジメントの手引書作成では優先して支援すべき者の設定方法などの検討を求めた。さらに、発災直後から専門家や民間団体も巻き込んだワンストップ相談窓口を設置するほか、災害関連死の防止には行政のほか社会福祉協議会やNPO、士業団体など多様な民間団体の参加も必要だとした。


◎男女平等、日本は世界116位 ― 世界経済フォーラム
 内閣府は7月13日、世界経済フォーラムが発表した各国の男女平等の度合いを示したジェンダー・ギャップ指数をホームページ上で公開した。経済・教育・保健・政治の各分野での男女平等をウェイト付したもので、日本は146カ国中の116位だった。トップはアイスランド、次いでフィンランド、ノルウェー、スウェーデンなど北欧が上位を占めた。日本は「教育」「健康」では世界トップクラス並だが、「政治」「経済」面での女性の参画の低さが影響した。
 また、内閣府の男女共同参画推進連携会議は7月13日、ステートメント「男女間賃金格差の情報開示の義務化について」を公表した。厚労省が7月8日に女性活躍推進法の省令・告示を改正し、従業員301人以上の企業に男女の賃金格差の公表を義務付けたことを受け、「男女間賃金格差の開示の義務化とその算出方法を支持する」とした上で、①管理職に新たに昇進した者の男女比率②男女別賃金の中央値の差③ジェンダー格差の原因分析と是正に向けた行動計画 ― の開示の義務化も求めた。
◎学校施設の脱炭素化など検討へ ― 文科省
 文科省は7月14日、学校施設のあり方調査研究協力者会議の初会合を開催した。今後、①学校施設の脱炭素化のあり方・推進方策②学校施設の質的改善・向上方策 ― を検討、来年春にも報告をまとめる。2050年のカーボンニュートラル達成には、学校施設でも低炭素化が求められるため、地域や関係省庁と連携し学校施設のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の普及拡大を目指す。なお、同省は2017年度から農水省・国交省・環境省と連携して市町村がエコスクールとして整備する学校を「エコスクール・プラス」と認定し補助事業の優先採択などの支援を進めている。
 一方、環境省は7月5日、「グリーンボンドガイドライン2022年版」を発表した。企業や自治体が環境分野への投資の資金調達のため発行する「グリーンボンド」の規模拡大を受けて策定した。また、農水省は7月22日、環境負荷低減事業活動促進の基本方針を決めた。2040年までにモデル50地区を創出し、化学農薬・肥料低減と併せ燃料燃焼による二酸化炭素排出量11%削減を目指す。このほか、国交省と経産省は7月5日、脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ基準見直しを検討する合同会議を発足させた。
◎2021年度の地方税収が過去最高に ― 総務省
 総務省は7月15日、2021年度の地方税収入決算見込額を発表した。総額は前年度比1兆6,383億円(3.8%)増の43兆2,966億円となり、過去最高となった。うち、地方法人2税は同8,253億円(11.2%)増の8兆2,266億円、地方消費税は同7,465億円(13.8%)増の6兆1,703億円となった。コロナ禍で落ちこんだ企業業績や消費の回復を反映した。うち、都道府県税収は19兆3,683億円で同1兆4,485億円(8.1%)増加したが、市町村税収は22兆748億円、同33億円(0.0%)の微減となった。都道府県税収では事業税4兆6,918億円(前年度比15.6%増)と地方消費税が増加したが、市町村税収では市町村民税9兆8,831億円(同0.2%減)、固定資産税9兆2,003億円(同0.6%減)、都市計画税1兆3,257億円(同0.3%減)と低迷した。
 一方、総務省は7月26日、2022年度の普通交付税大綱を発表した。総額は前年度比3.5%増の16兆9,705億円で、うち道府県分は9兆1,042億円(同2.0%増)、市町村分は7兆8,622億円(同5.4%増)。保健所の人員体制強化やデジタル化経費などを算定した。不交付団体は1都・72市町村で前年度より19団体増えた。
◎人口規模10万人の「地域生活圏」整備へ ― 国交省
 国交省の国土審議会は7月15日、国土形成計画(全国計画)の中間とりまとめを決めた。人口減少・少子高齢化や東京一極集中の是正、気候変動への対応などの課題解決に向けた重点取組分野に①地域の関係者がデジタルを活用して自らデザインする新たな生活圏「地方生活圏」②多様なニーズに応じあらゆる暮らし方と経済活動を可能にする世界唯一の新たな大都市圏「スーパー・メガリージョンの進化」③産業の構造転換・再配置により機能を補完しあう国土「令和の産業再配置」― を掲げた。うち「地域生活圏」は、将来にわたり暮らしに不可欠な諸機能の維持・向上を図る新しい生活圏と位置付け、その人口規模の目安を10万人とした。その取組例に、デジタルインフラの確保、地域交通のリ・デザイン、地域産業の「稼ぐ力」強化、テレワークで多様な暮らし・働き実現などを挙げた。
 また、国交省は6月27日、「地籍」調査の実施状況を発表した。2021年度の調査実績は832平方キロ㍍で、進捗率は全国の対象地域の52%、優先実施地域の80%となる。なお、第7次国土調査10カ年計画(20~29年度)の目標1万5,000平方キロ㍍に対する実績は1,667平方キロ㍍で、その目標達成率は11%となる。
◎コロナの新たな対応で「経済」維持 ― 政府
 政府の新型コロナ感染症対策本部は7月15日、「第7波」の感染拡大を受けた新たな対応方針を決めた。当面、行動制限は課さず検査や4回目ワクチン接種の対象拡大などで対応する。同日の会合で、岸田首相は「医療体制を維持・強化しながら社会経済活動の回復に向けた取組を進める」と強調した。
 一方、内閣府は7月22日、コロナ感染症の影響下の生活意識・行動変化の調査結果を発表した。テレワーク実施(2022年6月)が31%と19年(10%)より大幅に上昇したが、「社内での気楽な雑談が困難」(34%)、「画面の情報のみでストレス」(30%)などの指摘もあり、利用拡大の課題では「ペーパーレス化」(29%)、「社内打合せ・意思決定の仕方改善」(44%)などが挙げられた。家族と過ごす時間(18歳未満の子を持つ親)は19年比で大差はなかった。また、地方移住の関心では、「関心ある」が15%、「やや関心」が37%、「関心ない」が63%だが、19年に比べ「関心ある」が7ポイント、「やや関心」も12ポイントそれぞれ上昇、「関心ない」は12ポイント低下した。
◎物価対策で各自治体の取組フォローアップ ― 政府
 政府の経済財政諮問会議は7月25日、金融政策・物価等で集中審議。その中で、政府が4月に決めた総額6.2兆円のコロナ禍の原油価格・物価高騰等総合緊急対策を受けた各自治体の取組例を紹介した。
 生活者支援事業では、子育て世帯臨時特別給付金支給(北海道)や生活困窮者への緊急生活支援金給付(山梨県)、「ふく割」による消費喚起(福井県)、県内消費喚起対策(千葉県)など。また、学校給食の保護者負担軽減(浜松市)や食材費高騰対策(神戸市)、水道料金の減額(堺市)、下水道使用料の減免(福岡市)、福祉施設への食材料費助成(仙台市)、子ども食堂運営支援(兵庫県)などを実施。また、事業者支援では物価高騰の影響を受ける事業者緊急支援給付金(山形県)や中小企業の資金繰り支援(熊本県)、省エネ家電購入促進(静岡市、岡山県)、畜産農家の経営支援(三重県)、肥料購入経費の支援(福岡県)、地域公共交通事業者臨時支援(北海道)、交通・物流事業者の燃料高騰対策(宮崎県)、観光事業者支援(埼玉県)、観光事業者事業継続・経営改善サポート(沖縄県)などを実施している。
◎ローカル鉄道の存廃検討で協議会設置へ ― 国交省
 国交省の地域モビリティ刷新検討会は7月25日、提言をまとめた。ローカル鉄道は、人口減少やマイカーによる利用者減から存続が問われているため、沿線自治体が法定協議会を設置し地域モビリティのあり方を検討する「基本原則」を提言。併せて、同原則が機能しない場合は国が「特定線区再構築協議会」(仮称)を設置し、鉄道事業者・自治体が協議することを打ち出した。対象路線に「輸送密度1,000人未満」を挙げた。同協議会では鉄道運行、BRTやバス転換などの具体的対応策をまとめる。また、同省の鉄道運賃・料金制度のあり方小委員会は7月26日、鉄道運賃決定の国の規制を弱め、柔軟に運賃決定できる制度改正の方向性を大筋で了承した。
 一方、同省は7月22日、駅無人化に伴う安全・円滑な駅利用ガイドラインを公表した。無人駅が増加する傾向にあるため、障害当事者を含む利用者が安全に駅を利用できるよう対応策を示した。環境整備では、運行情報ディスプレイや遠隔監視システム、音声読上げ駅構内図の整備、異常時の駅利用の情報提供、乗務員による乗降介助、さらに地域等との連携で駅業務の外部委託、外部パートナーとの共創などを提言した。
◎知事の感染対策選択などを要請 ― 全国知事会議
 全国知事会は7月28・29の両日、奈良市で全国知事会議を開催。新変異株の感染急拡大に対する緊急建議を採択するとともに、地方税財源の確保・充実、地方分権改革の推進、コロナ禍を乗り越えるLX(ローカル・トランスフォーメーション)実現、医療提供体制構築と健康づくり推進、脱炭素社会の実現、参院選の合区解消などの提言・決議を決めた。
 コロナ対策の緊急建議は、現在の爆発的感染拡大には政府の基本的対応方針では対応困難だと指摘。まん延防止等重点措置の前でも感染対策を柔軟・機動的に講じられるよう財政措置など支援の仕組みづくりを要請するとともに、①感染拡大防止の必要性を対外的に示すため知事要請による国の事態認定を可能とする②教育・保育関連施設や高齢者施設の対策について各都道府県知事が地域実情を踏まえ効果的・効率的に選択できるようにする ― などを求めた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)