地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年5月中央の動き


中央の動き


◎地域コミュニティのデジタル化支援を ― 総務省
 総務省は4月5日、地域コミュニティ研究会報告書を発表した。自治会等は地域コミュニティの中心的存在だが、ライフスタイル変化への対応の不足を指摘。コロナ禍のピンチをチャンスと捉え、まず市町村が財政措置も活用して地域活動のデジタル化を支援。回覧板電子化に止まらず、即時の安否確認や双方向のアンケート・公聴機能などを他市町村との広域連携で活用するよう提案した。また、低下を続ける自治会加入率(72%-2022年)向上のため、拡充した地方交付税措置の活用とともに回覧板・委員推薦・防災訓練など行政協力業務と市町村業務の一体的見直しも求めた。
 また、総務省は3月30日、2021年度の地域運営組織の活動実態をまとめた。全国で6,064組織が814市町村にあり、前年より281組織(4.9%)、12市町村(1.5%)増えた。また、88%が法人格を持たない任意団体だが、89%は活動拠点を持ち、うち71%が公共施設を活用している。活動内容は、祭・運動会・音楽会等の運営(44%)、高齢者交流サービス(33%)、防災訓練・研修(31%)などが多く、収入源は市町村からの補助金等が62%で最も多かった。


◎直接請求の署名簿に収集者の氏名等を ― 総務省
 総務省は4月6日、直接請求制度運用に関する研究会報告書を公表した。大村愛知県知事へのリコール不正署名事件を踏まえ、署名収集の不正防止や署名簿の縦覧制度と個人情報保護への対応策を示した。
 具体的には、署名簿上で署名収集者を特定できないことが署名偽造や権限がない者による署名収集の一因となっているとし、署名簿に署名収集者の氏名の記載欄を追加するとともに、署名代表者・署名収集受任者ごとに署名簿を作製する運用も現行制度下で可能なことも周知すべきだとした。また、請求代表者や住民の制度の理解促進のため、①署名収集の留意点等の資料作成・公表②署名簿の様式に署名偽造の罰則を追加 ― も提言。一方、選挙管理委員会の審査対象とならない署名簿の調査権限を自治法上に規定することは「慎重に考えるべき」とした。縦覧と個人情報保護では、署名簿の住所・生年月日は黒塗りで隠し、申出に応じ署名簿全体を縦覧させる運用も考えられるとした。
◎政治分野のハラスメント防止で動画を公開 ― 内閣府
 内閣府は4月12日、「政治分野におけるハラスメント防止研修教材」の動画(ユーチューブ)を公開した。政治家を志す女性・若者をめぐるハラスメントなど事例1,324件を基に作成。有権者から投票の見返りを要求、女性議員に「子どもを産む方が大事」のヤジなどをドラマ仕立で展開している。
 一方、総務省は3月31日、自治体の議員・首長の所属党派人員(2021年12月31日現在)を発表した。都道府県議員は2,598人で前年より45人減少。市区町村議員は2万9,425人で同181人減少した。所属党派は都道府県議員は23%が無所属で、党派は自民49%、公明8%、共産5%など。市区町村議員は無所属が70%、所属党派は公明9%、共産8%、自民7%など。首長では、知事は大阪(大阪維新の会)のみ、市区町村長は17人のみで他は無所属。また、女性議員は都道府県議員が306人(11.8%)で前年より3人増加、市区町村議員は4,520人(15.4%)で同139人増加。女性首長は、知事は山形と東京の2人で変わらず、市区長は30人(前年26人)、町村長は10人(同8人)に増えた。
◎健康づくり・雇用政策などの一体検討を ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は4月13日、社会保障改革を審議。民間議員が成長・分配の好循環に向けた社会保障改革を提案した。年金・医療・介護、少子化対策に加え予防・健康づくり政策、雇用政策、共助の強化を一体として検討するとともに、コロナ入院患者受入医療機関への財政支援は交付金から診療報酬への見直しを提案。併せて、地域医療構想では医療機能の分化と、そのための都道府県知事の権限強化を求めた。
 一方、総務省は3月29日、公立病院経営強化ガイドラインをまとめ、各自治体に2023~27年度を期間とする公立病院経営強化プランの策定を要請した。コロナ感染拡大で公立病院の役割が認識されたとし、これまでの「再編・ネットワーク化、経営形態の見直し」から「役割・機能の最適化と連携の強化」に重点を移した。具体的には、地域の基幹病院に急性期機能を集約し医師・看護師等を確保、基幹病院以外は回復期機能・初期救急を担うなど双方の役割分担を明確化・連携を強化する。また、医師・看護師等の確保と併せて感染拡大時に備えた平時からの取組も強調した。
◎感染対応・情報化で一律規制するな ― 地制調小委
 政府の第33次地方制度調査会の専門小委員会は4月13日、感染症対応と情報化をめぐり地方六団体から意見聴取した。平井全国知事会長は「感染症の基本的対処方針では対策内容を一律に規定せず、地域実情に応じた対策が講じられるよう権限付与と制度構築」を要請。情報化でも国が進める標準化は「一律仕様に限定せず、地方の創意工夫も可能とする仕組み」とすべきだとした。立谷全国市長会長は「感染症対策での都市自治体が担う役割・情報共有のあり方を法令上明確化すべきだ」と指摘。荒木全国町村会長は「地方分散型国づくり」の必要性を強調するとともに、デジタル化推進が「集権化」につながらないよう求めた。
 一方、柴田全国都道府県議会議長会長は、各議会が感染症対応で補正予算・議員提案条例などに取り組んでいることを紹介した上で、地方議会をめぐる課題に投票率低下と議員の成り手不足、少ない女性・若者などを挙げ、地方議会の位置付けを地方自治法で明文化するよう要請した。また、清水全国市議会議長会長は、デジタル化・感染症対応を背景に「全体として議論が中央集権体制の強化にシフトする懸念がある」と指摘。南雲全国町村議会議長会長は「立候補の足かせとなっている個人請負の禁止の緩和」を要請した。
◎東京都の人口が26年ぶりの減少に ― 総務省
 総務省は4月15日、2021年10月1日現在の人口推計を発表した。総人口は1億2,550万2千人で、前年より64万4千人(0.51%)減少、過去最大の減となった。出生児数は83万1千人で同4万人減少、死亡者数は144万人で同6万8千人増加。この結果、60万9千人の自然減となった。年齢別では、15歳未満は1,478万4千人、同24万7千人減少。15~64歳も7,450万4千人で、同58万4千人減少。一方、65歳以上は3,621万4千人で、同18万8千人増加した。総人口に占める割合は15歳未満が11.8%、15~64歳が59.4%、65歳以上が28.9%で、前年に比べ65歳以上が0.3ポイント上昇した。都道府県別では、増加は沖縄だけで、埼玉、千葉、東京、神奈川、福岡の5都県は前年の増加から減少に転じた。東京の減少は26年ぶり。
 一方、総務省は4月1日、2020年国勢調査に基づく過疎地域を公示した。27道府県の計65市町村を追加、全国の過疎地域は885団体となり、初めて全市町村の52%と半数を超えた。内訳は、全部過疎が650市町村から713市町村に、一部過疎も149市町村から158市町村にそれぞれ増加した。
◎デジタル基盤・人材育成など要請 ― 六団体
 デジタル田園都市構想・地方創生に関する地方六団体との意見交換会が4月19日開催された。会合で、若宮デジタル田園都市国家構想担当相は「コロナ禍で地方移住への関心が高まるなど国民の意識・構造に変化の兆しがみられる」とし、今後も同構想実現を進める意向を強調。野田地方創生担当相は「一番の問題は少子化による人口減少だ」とし、女性が積極的に結婚・子育てに前向きになれる環境づくりに取り組むとした。牧島デジタル相は「ウェルビーイング、サステナビリティ、イノベーションをキーワードに地域発の新たな産業革命を進める」と述べた。
 これを受けて、平井全国知事会長が政府の今年度予算でデジタル関連財源が確保されたことを評価。立谷全国市長会長は、デジタル田園都市国家構想と「まち・ひと・しごと」の関係整理とともに、「転職なき移住」推進のため都市・地方の賃金格差解消を求めた。また、荒木全国町村会長は、コロナ禍による国民生活・地域経済の回復・再生と併せ、町村では住民との対面活動が重要であり、デジタル化で「温もりあるつながりが損なわれては本末転倒だ」と指摘した。
◎コロナ感染で生活困窮者の相談急増 ― 厚労省
 厚労省の生活困窮者自立支援検討会は4月19日、論点整理を了承した。コロナ感染症で個人事業者やフリーランス、若者などの新たな相談が急増したため、現行法の枠組みを超えた検討が必要だとし、自立相談支援機関の機能強化や他の公的支援と連携強化するとともに、「就労準備支援事業」「家計改善支援事業」を必須事業化し、小規模自治体でも実施できるよう国・都道府県の関与強化を要請。貧困の連鎖防止では、保護者も含めた包括的な支援展開を求めた。政府は、来年の通常国会に改正法案を提出する方針。なお、総務省は4月26日、生活困窮者支援の行政評価を踏まえ、厚労省に①生活困窮者の把握②事務処理システムの改善③制度全体の効果検証と改善 ― などを勧告した。
 一方、内閣府は4月8日、初の孤立・孤独実態調査を発表した。孤独感が「しばしば、常にある」が4.5%、「時々ある」が14.5%、「たまにある」が17.4%で、38.9%は「ほとんどない」と回答。「しばしば、常にある」は30歳代が7.9%、20歳代が7.7%で高く、配偶者の有無では未婚者9.6%、既婚者2.4%、仕事の有無では「仕事なし」が12.5%と高かった。
◎無電柱化推進でも新設で3.3万本増加 ― 総務省等
 総務省・国交省等は4月20日、新設電柱抑制の対応方策をまとめた。政府は2021年に無電柱化推進計画を策定したが、昨年4月~12月には新設(16.7万本)が撤去(13.4万本)を上回り、差し引き3.3万本増えた。増加要因は、①配電線の距離が長い②道路整備後に施設が建設 ― などから低コストの電柱が選択された。このため、対応方策は①上下水道と同時期に予め電力管路を設置②一般送配電事業者が費用を一部負担するよう託送供給等約款を改定③緊急輸送道路全線で新設電柱の占用制限を市町村に促す ― などを示した。
 一方、国交省は3月28日、道路橋の集約・撤去事例集を公表した。インフラの老朽化で道路橋の集約・撤去の必要性が高まっているが、自治体アンケートでは「地元や利用者の理解が得られない」が6割を占めた。このため、利用者や住民への説明の参考となる集約・撤去のメリットに①落橋による事故排除②維持管理・更新費等の縮減③瑕疵管理リスクの除去④管理負担の軽減 ― などを挙げた。その上で、単純撤去(長門市など)、撤去+迂回路整備(鶴岡市など)、ダウンサイジング(福岡県香春町など)の取組を紹介した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)