地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2004年5月のコラム

施行された改正職安法

 3月1日に、無料職業紹介事業を自治体が行える改正職業安定法が施行された。法改正とその公布は昨年6月であったが、それから9ヶ月で施行されたことになる。この3月の全国の完全失業率は4.7%で、前月比で0.3ポイント下がり、失業者数333万人と前年同月比51万人減少している。

 内閣府が4月6日に発表した2月の景気動向指数は、10ヶ月連続で50%を超えてた。2002年1月を景気の谷とする今回の景気拡大はこれで25ヶ月となり、統計を取り始めてから9番目の長さ。ちなみに今までの平均の景気拡大期間は33ヶ月だそうだ。

 失業率の悪化のピークは超えたようだが、それでも4~5%程度の失業があるという時代となったようだ。特にリストラとフリーターなどの働き方の多様化によって、50歳以上の中高年と、20代の若者で失業率が高い。3月における20歳代前半の失業率は11.8%となり依然として高水準を維持している。そして、「就業困難者」と見られる働く意欲がありつつ働くということから排除されている障害者、働こうにも子どもの保育所がみつからない一人親の家族などにとっては、景気の拡大という順風にも縁が薄くなる一方と見られている。

 いずれにしても、自治体に雇用政策を求める政策的な仕組みはかたちになりつつある。雇用対策法とこの職安法である。2004年度中に、無料職業紹介事業を始める予定としているのは、3月末の時点で、16府県と3政令市、そして6市町村となっている。府県では岩手、茨城、群馬、千葉、神奈川、新潟、長野、岐阜、静岡、京都、兵庫、鳥取、山口、香川、佐賀、長崎である。政令市は千葉市、横浜市、大阪市。市町村は千葉県の白井市、野田市、神奈川県の藤沢市、大阪府の和泉市、島根県の出雲市、宮城県色麻町。

 つい先日、京都での「自治体の雇用政策研究会(大谷強座長)」でこの4月から無料職業紹介事業を始めた大阪の和泉市での経験を、市の労働政策課長である竹田竜彦さんからうかがった。もとは大阪府の「地域就労支援事業」にむりやりつきあわされたことから始まったことなど、苦労話も含めてのざっくばらんな話であった。その話の中で、特に強く印象に残ったのは、総合的な相談事業の徹底ということだ。例えば母子家庭の就労事業の場合、ネックになるのは保育所にそのままでは入所できない。縦割りの役人根性にまかせれば、職を探しているという条件下では、「保育に欠ける」状況ではないと判断されて、入所できないのだ。ところが働くためには保育所に預けなければならない。このジレンマをどう超えるか、これが縦割りを越境する「就労支援コーディネーター」の腕の見せ所となる。

 また、地域の企業や団体がもつ求人情報を収集し、活用する工夫としては、新聞の求人欄と折り込みチラシを徹底して活用した毎日の電話作戦がある。これも言われてみればコロンブスの卵である。ハローワークの持つ情報を座して待つのは下策。ハローワークに出されない求人情報こそ大事なのだ。そして、その情報を確実にするための日常的な企業訪問などの調査活動がポイントなのにちがいない。一人の就職困難者に働く意欲と自信を持ってもらうことを、自らのミッションだとする行政マンの存在が制度をつくり組織を活性化する。

さわい まさる・奈良女子大学教授)