2005年2月のコラム
地方自治政策のシンクタンク設立? |
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このところ、あちらこちらから、地方自治に関する新たな調査研究機関の必要性を主張する声が聞かれる。三位一体改革の国庫補助負担金の整理について、自治体側からの提案が求められたせいであろうか。それだけではないにしろ、それがひとつのきっかけになっていることは間違いがないであろう。 現在開会中の第 162通常国会施政方針演説で小泉首相は、三位一体改革について、「補助金改革の具体案は地方分権の主体となる地方が作成し、これを国と地方で協議する場を設け、地方の提案を真摯に受け止めて、改革を取りまとめました」と述べている。今後、こうした企てがどこまで制度化されることになるのかは分からないが、どのような政策に関してであれ、地方自治体の側が制度改革の提案を取りまとめ、それを国と協議していくスタイル自体は積極的に評価してかまわないと思われる。 しかし、自治体側からの政策・制度改革の提案を行う際に、今回のような方式をそのまま踏襲することが果たして可能なのかどうか、また、好ましいことなのかどうか、まずはそのことが問われなければならないであろう。そのうえでのことであるが、おそらくは、今回のような方式を繰り返すことはできないであろうし、全面的に好ましいことでもないとする認識があるのであろう。そうであればこそ、あらためて地方自治に関する新しい調査研究機関の設立が求められているのではないだろうか。 ふり返ってみれば、昨年の「骨太の方針2004」において取りまとめの要請を受けたのは、全国知事会ではなくて、中身を不問に付した「地方公共団体」であった。「税源移譲は概ね3兆円程度を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。」このように表現されていた。この要請を受けて、どこで、どのような協議がなされたのか、定かではないが、その後の経緯をみると、おのずと全国知事会が中心の組織主体であるかのように音頭をとり、したがってまた、全国知事会議の成り行きに関心が集中した。だが、「基礎自治体優先の原則」があらためて唱えられ、広域自治体としての都道府県のあり方が問われているさなかのことである点を思い起こすならば、そのこと自体、当然なこととは言えない。 それならば、全国知事会に限らず、地方六団体を包括するような地方自治全国団体の結成を図り、さらに関係調査研究機関も糾合して、国政にもの申すだけでなく具体的な政策提言を行うことを可能にするような、大がかりな調査研究機関を設立することがよいのだろうか。地方自治政策に関する巨大シンクタンクの創設である。その可能性もさることながら、はたして、それは賢明な方策なのだろうか。 私たち、地方自治総合研究所は創設30周年を迎えた。財団法人になってから10周年である。私たちにとっても、広く地方自治に関する調査研究機関のあり方をどのように考えるかは重大なテーマである。だが、各地域の地方自治研究機関との連携ひとつをとっても、容易ならざる課題である。それだけに、イケイケドンドンの主張に安易にくみするわけにはいかないところである。 |
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(いまむら つなお中央大学教授) |