地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2005年7月のコラム

公共工事品確法の周知度

武藤 博己

 「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(公共工事品確法)が今通常国会で3月末に可決され、4月1日から施行された。国の入札について、原則として価格主義が適用されているが、それに対してこの公共工事品確法は、その基本理念(第3条)に、「公共工事の品質は、……経済性に配慮しつつ、価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない」と明記され、価格以外の基準で入札を行うべきことが宣言された。総合評価型入札に政策的価値を導入すべきだと主張している筆者としては、歓迎すべき法律のようだが、今後政府が「基本方針」を策定することになっており、そこが未定であるので、なんともいえない。

 この法律案が提案されることについては、新聞で報道されていた。すなわち、自民党の「公共工事の品質確保に関する議員連盟」(会長・古賀誠元幹事長)が国や地方自治体に対し、公共工事の受注業者を決める際、価格面だけでなく、技術力も重視し判断するよう義務づける法案の骨子をまとめた、と報道された(朝日新聞、04年10月9日)。筆者は、2004年11月に民主党からこんな法案が出されようとしているが、ご意見を伺いたいという依頼を受けて、はじめて知った。その後、どうなったのかと気になっていたが、今年の3月末に法案が通ったことが報道された。

 法案は、今年1月に衆院の国土交通委員会で審議が再開され、3月18日にいったん撤回された後、第16条が削除され、同日再付託され、衆院で通過し、その後参院でも3月30日に可決された。その間、新聞による報道はほとんどなかった。もっともその後も一般新聞ではほとんど報道されていない。郵政民営化法案のように国民の関心を引きつける法案は新聞やテレビで報道されるが、そうでない法案はひっそりと審議され、可決され、そして粛々と実施されていくのであろうか。

 この法律は、自治体に対しても品質確保の活動を要望しているにもかかわらず、自治体ではあまり知られていないとなると、少し問題があるように感じる。国土交通省国土技術総合研究所が全自治体(2,446団体)を対象に行ったアンケートで、2,084団体から回答を得た。それによると、公共工事品確法の認知状況は、「知っていた」が733団体(35.2%)、「聞いたことあるが、内容は知らない」が1,059団体(50.8%)、「聞いたこともない」が289団体(13.9%)だった。市町村で「知っていた」のは682団体に過ぎなかったという。また、総合評価方式の認知状況についても、市町村で「知っていた」は733団体で、法律の認知度とほぼ同じ割合だった(日刊建設工業新聞、05年5月24日)。この調査については、内容の一部が朝日にも報じられた(朝日新聞、05年6月8日)。

 ところで、上に引用したとおり、第3条の基本理念に価格以外の多様な要素を考慮して総合的に判断されなければならないと規定している。判断する主体は、国と自治体を含む「公共工事の発注者」であり、公共工事の品質が確保されるよう、「発注関係事務」、すなわち「仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並びに工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務」を適切に実施しなければならないとされている。

 この発注関係事務は、コンサルに依存することが多いのであるから、実は建設コンサルの品質が問われているのであり、削除された16条にはそのことが明記されていた。しかしながら、それではあまりにも、建設コンサルへのてこ入れ法のようになるので、削除されたようだが、建設コンサルへの天下りなどの重大な問題が残されたままである。

(むとう ひろみ・法政大学教授)