地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2007年2月のコラム

地方分権改革の再スタート

 

 安倍内閣になって最初の国会となった第165回臨時国会で地方分権改革推進法が可決成立し、第2次地方分権改革がすすめられようとしている。第2期地方分権改革という呼び方もかなり行われているようである。どちらにせよ、12年前の地方分権推進法に基づく一連の制度改革を第1次もしくは第1期とすると、今度は第2次もしくは第2期の改革となる。

 だが、第1次分権改革をリードした地方分権推進委員会の最終報告で残された改革課題の第一に挙げられたのは「地方財政秩序の再構築」であり、それを目指したいわゆる「三位一体の改革」を第2次分権改革とした場合、今度の分権改革は第3次となる。その三位一体改革の第1期が中途半端なものに終わってしまったことを重視して、分権時代にふさわしい地方財政秩序の再構築を主眼に当面の地方分権改革を構想するならば、第2次分権改革で取り組むべきは第2期の三位一体改革だということになってもおかしくはない。

 今度の地方分権改革の根拠法である地方分権改革推進法を一目見れば歴然としているように、モデルとされたのは第1次分権改革の根拠法、旧地方分権推進法である。そっくりといってもよい。第1次改革で総理府に設置された地方分権推進委員会は、新法のタイトルに「改革」の2字が入ったのをうけて、名称が地方分権改革推進委員会となり、内閣府に設置されることになった。衆参両院の同意を得て内閣総理大臣により任命される委員の数は7人で、これも前回と変わらない。この改革推進委員会の顔ぶれがどうなるか、そのことが目下の最大の関心事であろう。また、専門部会の設置やその委員構成などは未定である。

 新法の条文構成もほとんど旧法と同様であるが、子細に見るといくつかの違いがあることがわかる。一番大きな違いは、旧法が5年の時限法として出発し、1年延長となったのに対して、新法では3年となっていることである。三位一体改革のケースひとつをとってみても、たったの3年で何ができるのかという気がしないでもない。だが、「地方分権改革を集中的かつ一体的に推進するために必要な体制を整備する」ことが、新法で定められた国の第一の責務であり、どうやら、「集中的かつ一体的に推進する」改革内容のあらましはすでに決まっているかのようである。

 法定の基本方針から推測するならば、旧法の場合と同様に、国と地方公共団体との役割分担、権限移譲、国の関与、地方税財源といった項目が列挙されていることにくわえて、「事務の義務付け」の項目が新たに加えられ、「地方公共団体に対する事務の処理又はその方法の義務付けの整理及び合理化その他所要の措置を講ずるものとする」とされていることが目を引く。各省所管の法令による規律密度の緩和に狙いが定められているようであり、もしもそうであるならば、そのこと自体に異論はない。新法の理念において、わざわざ「地方公共団体が自らの判断と責任において行政を運営することを促進し」との文言が挿入されたことも、おそらくはそのことと無縁ではあるまい。

 だがしかし、それは果たして短期間でなしうることであろうか。本気でその課題に取り組むつもりであれば、この国の統治構造の根幹に横たわる内閣法上の制度、主任の大臣による分担管理の仕組みの見直しにまで波及せざるをえないであろう。いったいどうなるのか、しばらくは目を離せないことになりそうである。

いまむら つなお・中央大学教授)