地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2008年9月のコラム

変わる自治会・町内会

 まだ暑い8月末の金曜日、奈良県生駒市の自治連合会の集まりがあり、「市民自治基本条例と自治会」というテーマで話をする機会があった。生駒市では一昨年から公募委員6人、市議会、自治連合会、農協やNPO団体、職員の委員などから構成される36人の「市民自治検討委員会」(委員長中川幾郎帝塚山大学教授)で自治基本条例の基本構想を論議してきた。自治連合会のこの日の勉強会は、この基本条例ができたときに自治会はどうなるのかという趣旨のようだった。集まりは160名ほどで女性が1割。

 実はこのとき、このような「自治基本条例と自治会」という議論を突き詰めて考えたことがないことに気が付いた。この「自治総研」3月号の山さんの「コミュニティ断章」にもあるような政府の動きもあって、行政学や財政学で「地方自治」を論じる研究者には、現在の自治会や町内会には歴史的沿革も含め批判的な人が多い。そのためか、基本条例の中に自治会(とその機能の変化)を位置づけなおし、その変化の方向について思いをめぐらすことが少なかったかもしれないとも思う。

 自治基本条例の最先進地であるニセコ町条例では、「まちづくりの重要な担い手となりうるコミュニティの役割を認識し、そのコミュニティを守り、育てるよう努める」としている。これは自治会や区を想定させる規定だが、あえて自治会という言葉は避けている。90年代からのコミュニティ施策の先進都市である宝塚市では、「市は、地域コミュニティの役割を認識し、その活動を促進し、協働してまちづくりを進めなければならない」としていて、ここでも「自治会」という名称は慎重に避けているようだ。

 三重県伊賀市は2004年11月に上野市と周辺の5町村が合併してできた市で、合併時点で自治基本条例を制定している。その第4章が「住民自治の仕組み」で、2項で「住民自治活動の主体は、自治会をはじめ、ボランティア・市民活動団体、地域の良好な環境づくりに貢献する事業者などのほか、まちづくり活動に参加する個人も含まれるものとする」と、自治会が明記され、市民活動団体と並ぶ住民自治の担い手とされた。この規定は、生駒市の基本構想にも引き継がれている。

 ここまで来ると、自治会は基本条例で住民自治の主体(自由な個人とならんで)と規定されているから、それまでのあり方自体を変えることを求められる。言い換えれば自治会の活動を「自由に集まり自主的かつ主体的に行う住民自治活動」へと変えていくことが求められる。これまでの上からのあてがいぶちの「行政の下請け仕事」を義務的に行うことから抜け出さなければならない。そう変わることで、地域自治会が新しい「地域コミュニティ」にと変わっていくことが期待されている。

 このように自治会が変わるためには、地域住民にとって自治会が積極的にかかわってもらいたいテーマに手を出せるようにすることが一番大事である。そのひとつは、地域福祉の担い手となることだ。大和郡山市の平和団地自治会では、自治会を基盤に、自治会館を拠点にデイハウスを開設して3年になる。最近は買い物や庭木の剪定、外出の付き添いなど軽度の生活支援ボランティアを始めて好評だ。

 子供の安全や見守りをPTAとともに行うことや新しい祭りをつくることで自治会の次期役員を確保できると良い。道路、公園の四季折々の植栽の管理や河川敷の管理も若者と一緒にビール片手の共同作業にすることも良い。そして自治会を行政の協働の相手として明確にするためには、これらの活動をパートナーシップ協定とすることも必要である。

 自治会変革には、行政のまちづくり施策が大きな役割を果たす。たとえば自治会とNPOを組み込んだまちづくりのための「市民自治協議会」を組織すること、神戸市東灘区や西区、北九州市小倉北区、横浜市緑区のように地域担当職員を張り付けることも重要だ。必要な予算の配分とその執行権も分権化したい。政令市以外でも鹿児島県都城市が09年に市内全11地区で展開するために一部モデル地区で始めているように各地で取り組みが進んでいる。

さわい まさる・奈良女子大名誉教授)