地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2011年1月のコラム

どうするか、地方自治法の抜本見直し

 去る11月、香川大学で開催された日本地方自治学会の共通論題1「『地域主権改革』を考える」の報告(あらためて問われる「地域主権」改革)で、おもに3つの項目を取り上げようとした。おぞましさを覚えた「地域主権」、疑わしい「協議の場」の実効性、そして地方自治法抜本改正への期待、の3項目がそれである。いつものことながら、時間の制約もあって中途半端な報告に終わってしまったが、民主党政権による地域主権改革の中でかろうじて期待をつないだ3番目についても、今となっては、どうやら期待はずれということになりそうである。

 地域主権戦略会議の早い段階で提示された「地域主権戦略の工程表(原口プラン)」では、「地方政府基本法の制定(地方自治法の抜本見直し)」となっており、その時点ですでに検討の場は地方行財政検討会議に設定されていた。内閣府の地域主権改革担当大臣としてではなく、総務大臣決定によって総務省に設置されたその検討会議に「抜本見直し」の大仕事をゆだねること自体、やや奇異に感じたのだが、そのことよりも一時期から、もしかしたら「瓢箪から駒」ということがあるのかもしれないという奇妙な期待感が強まった。

 日本国憲法と施行日を共にする地方自治法は、もともと憲法施行法というべき性格を有するから、その「抜本見直し」にはよほど周到な準備を必要とする。これまで何度もくり返されてきた通常の地方自治法の一部改正とは異なるのである。それなのに昨年6月に閣議決定された地域主権戦略大綱では、「地域主権改革を更に進めるため、地方政府基本法の制定(地方自治法の抜本見直し)について総務省の地方行財政検討会議において検討を進め、成案が得られた事項から順次国会に提出する」とされた。どういうことなのか。これでは「抜本見直し」の課題に応えるものではなく、通常の地方自治法の一部改正と変わらないではないか。「成案が得られた事項から」というが、大綱の決定にあわせて取りまとめられた地方行財政検討会議の「地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」でいう「地方公共団体の基本構造」にかかわる問題からして、そんなにたやすく成案が得られるはずもないではないか。

 しかし、それでもなお一縷の望みを捨てきれなかった。神奈川県からはいち早く「地方自治基本法(仮称)と地方自治関連法制の再編」を求めた30ページにわたる充実した提案が出されていたし、地方行財政検討会議における検討も「基本法」の法的位置づけにかんする審議から始まっていた。そんなこともあって、おそらくは、当面の必要に対処するための地方自治法の一部改正とは別に、「基本法」制定に向けた、文字通りの「地方自治法の抜本見直し」のための何らかの布石が打たれるに相違ないと考えていたのである。

 ところが、12月に入って間もなく地方行財政検討会議によって取りまとめられた「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」(仮称)(案)を一覧して、私は呆然とせざるをえなかった。どう見てもそれは、私たちが想定したような新たな「基本法」制定に向けての現行地方自治法の「抜本見直し」「抜本改正」とはほど遠い代物でしかない。むしろ、「抜本見直し」や「抜本改正」に踏み出すことを断念もしくは拒絶したうえで、その場しのぎのために「速やかに制度化を図る」事項を仕分けした事務的な作業文書にとどまっている。はたして、これですませてしまうのだろうか。それでよいのだろうか。

いまむら つなお 山梨学院大学教授)