地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2012年4月のコラム

改正自治法(2011年)の間違った解説

 <3・11>から49日目に成立した昨春の地方自治法改正をうけて、その解説を兼ねた短い論考を書く機会があった。自治体議会改革フォーラムの『議会改革白書2011年版』(2011年7月30日刊)に寄せた拙稿「地方自治法改正が自治体議会に問いかけるもの」がそれである。

 印刷の出来上がりはA4版、4ページ分で、1.「地域主権関連3法」の成立、2.要注意の地方自治法一部改正、3.どうなるのか地方自治法抜本改正、という3つのパートからなっている。改正自治法の解説は真ん中のパートであり、その部分について編集者が4つの区切りを設け、「議員定数の法定上限撤廃 ― 制度と現実との乖離」、「議決事件範囲の拡大 ― カッコ書きは改悪ではないのか」、「行政機関等の共同設置 ― 共同で専門委員設置も可能に」、「基本構想議決の義務付け廃止 ― 早急に議決事件の範囲の検討を」といった見出しをそれぞれの区切りにつけてくれた。

 上記の4つの区切り見出しからすでにお分かりのように、不覚にも「間違った解説」をやってしまったのは3番目の区切りである。間違いに気づかされたのは今年の1月末、後期の授業が一段落したころのことであった。それも、拙稿を参照文献に挙げた雑誌論文の著者である同僚のもとに、議会事務局に勤務する自治体職員から問い合わせのメールがあってのことである。

 専門委員に限らず、共同設置の仕組みそれ自体は以前からのものであるが、それが昨春の改正により、監査委員事務局と並んで議会事務局の共同設置もできるようになった。つまり、「行政機関等の共同設置」にいう「行政機関『等』」には議会事務局が含まれているのである。「機関等の共同設置」にかんする自治法252条の2の改正条文を見ると、その本文の最後は「普通地方公共団体の議会、長、委員会若しくは委員の事務を補助する職員又は第174条第1項に規定する専門委員を置くことができる」となっている。落ち着いて読めば、「~の事務を補助する職員」と「専門委員」とは並列なのだから、この規定から、共同設置の議会事務局に専門委員を置くことができるようになったと解するのは間違いである。ところが、確認のためにインターネットで改正条文を検索し、そそくさと画面上の当該条文を読み下したりすると、改正前の条文にはない「議会」の文字が新たに加わったことに気をとられて、途中を読み飛ばしてしまい、「議会……の事務を補助する専門委員を置くことができる」などと読んでしまったりする。その早とちりをやってしまったのである。

 それにしても、なぜだったのか。ほかでもない。かねてから、附属機関や専門委員の議会設置について一般に消極的に解されていることが腑に落ちなかったために、議会事務局が共同設置になることで、これが突破口になると早合点したのである。6年前の自治法改正で、議会の議案審査や専門的事項の調査のために学識経験者の協力を得る仕組みが整えられたが、言ってみればそれも苦肉の策だった。そのときの地方制度調査会審議に委員の一人として加わりながら、私は、なにゆえにこんなことでお茶を濁さなければならないのかと苛立たしい思いにかられていたのだった。

 条文解釈の間違いを犯しながらの開き直りと揶揄されそうではあるが、それでも敢えて付け加えておきたい。いわゆる二元代表制のもとで、執行機関に対する議会のエンパワーメントを図る観点からするならば、たとえ自治法に明文の根拠規定がなくとも、それこそ二元代表制の基本原理に立ち返って、現に議会の附属機関設置に踏み切った先例があるように、必要とあれば、共同設置の場合も含めて、議会に専門委員を置くことは可能なはずのものではないだろうか。

いまむら つなお 山梨学院大学教授)