地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2012年10月のコラム

外部評価委員会

武藤 博己

 千代田区の外部評価委員会の報告書が公表された*。筆者がかかわって2年目であり、施策中心の評価を行ったため、その概要を紹介したい。

 千代田区は2001年に第3次長期総合計画を策定し、評価は計画に連動させるべきものとの考えから翌2002年度に行政評価制度(事務事業評価)を導入した。その後、個別分野の評価(2004年から「福祉サービス第三者評価」、2007年から「指定管理者制度導入施設における経営財務・労働環境モニタリング」、2010年から「教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価」など)を導入してきた。筆者がかかわったのは2011年度からで、区は「外部評価委員会」を設置して、区が実施している主要な事務事業を対象に、区民参加会議や区民アンケートを実施し、委員会が最終的な報告を作成し、区長に提出した。

 昨年度は「事務事業評価」を実施した。具体的には、「地域コミュニティ活性化事業」や「次世代育成住宅助成」、「ヒートアイランド対策の推進」等の10事業であった。関心の高いテーマでもあり、区民参加会議でも活発な意見が出された。ここでの評価のポイントは、評価そのものを重視するというより、事業の改善に役立たせることに主眼を置いて、それぞれの事業についての改善意見をまとめた。

 事業評価の問題点は、市民の視点から評価を行うには事業では狭すぎることである。たとえば、「地域コミュニティ活性化事業」は、長期総合計画の施策体系では、目標6の「コミュニティを大切にするまち」の中の施策「地域力の向上を支援します」における1つの事業であり、「町会・連合町会」、「地域団体助成事業(コミュニティ活動事業助成)」、「地域団体助成事業(文化活動事業助成)」、「千代田学」、「まちの記憶保存プレートの設置」、「NPO・ボランティア提案制度」と並ぶ事業である。こうした並列した事業と相互補完の関係にあり、全体として施策目的に貢献するのが評価対象の事業である。他の事業の状況等を知らずに、この事業だけを評価することは困難だといわざるを得ない。

 そこで今年度は、施策を対象に評価を行った。選択された施策は、昨年度との関連から「地域力の向上を支援します」と千代田区としての特性が際立つ「昼間区民への災害時支援体制を確立します」の2施策である。第1回委員会でこの2施策が選択された後、区民アンケート(郵送による区民2,000名とインターネットによる昼間区民3,000名)の実施、担当部局からの事前説明と質疑、昨年と同様の区民参加会議の実施、4回の委員会で報告内容の検討を経て、今回の公表となった。昨年と流れはほぼ同じであるが、事前の説明と意見交換に時間を取ったこと、区民参加会議には昼間区民も参加したことなどが昨年との違いである。

 では、施策で評価したことによって、評価内容にどのような変化があったのであろうか。評価の視点について、昨年度は「公共的な課題設定の妥当性」、「有効性」、「効率性」、「内部評価の妥当性」の4点だったが、今年度は最後の点をはずし、前3者とし、施策と各事業について判断した。

 昨年度は「地域コミュニティ活性化事業」を評価対象としたが、今年度は施策「地域力の向上を支援します」における全事業を評価対象としたわけだが、施策に含まれる全事業を検討することによって、施策目的に対してどの事業の有効性が高いか、補助対象に重複がないかどうか、効率的に運用されているかどうかなどの比較の視点からの判断を強化することが可能であった。また、「地域力」とは何か、そこにおける各種団体(町会・連合町会・市民活動団体・大学・企業)の位置づけなど、事務事業評価では見落としてしまう大きな問題を議論することができたことが施策評価の優位点であると考えられる。市民にとってわかりやすい施策による評価を定着させることで、評価を市民のものとし、議会での議論にも資することが必要だと考えられる。

*平成24年度 千代田区外部評価委員会 外部評価報告書

 http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/service/00146/d0014685.html

(むとう ひろみ 法政大学公共政策研究科教授)