地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2013年2月のコラム

共同調査研究の積み重ね

 この7年ほど、6人の仲間であちこちの自治体の調査研究をすすめてきた。発端は地方自治総合研究所におけるプロジェクト「まちづくり検証研究会」であり、幸いにも2009年からは科研費補助金を得て「地方自治研究のパラダイム転換」と題する調査研究を3年間おこなうことができた。そして、さらに昨年からは同じく科研費補助金と学術振興会助成金による調査研究「公共サービス供給編制の多様性と自治のダイナミクスに関する研究」にあたっている。

 私のメモ帳には、最初の自治総研プロジェクトは「検証研」、つづく科研費プロジェクトは「パラ研」、現在のプロジェクトは「新科研」あるいは「ダイナミクス研」とそれぞれの略称が使われている。「検証研」と「パラ研」については仲間で話し合ったことがあるが、現在のプロジェクトの略称をどうするかはまだ決めていない。ひとりが産休をとっていることもあって、全員でゆっくり閑談する機会がなかなかとれないことが一因である。あるいは、つまらないことと思われるかもしれないが、仲間を組んでおこなう共同研究では、その焦点形成にかかわるので、段階ごとの略称をどうするかは、存外と大事なことと感じている。

 新しい科研費プロジェクトになっても、それまでのプロジェクトとの関係もあるから、すっぱりと切り替えることは難しい。昨年夏には従前の調査研究の一環である大潟村調査で現地に出かける必要があり、新しいプロジェクトへの共同の取り組みは、10月初旬になって、日本政治学会が九州大学伊都キャンパスで開催されたのを機に設定された大牟田市訪問が最初である。といっても、三池炭坑の廃坑跡などの主要施設見学から開始したのではない。6人中の4人が10時きっかりに市役所を訪れ、企画総務部総合政策課、保健福祉部生活衛生課、同長寿社会推進課、地域包括支援センターなどのヒアリングをおこなうことからのスタートで、あらかじめ先方に伝えてあった詳細な質問事項について、順次説明していただく方式である。一段落したあとには、市が企画・制作協力した映画「三池 ― 終わらない炭鉱の物語」(熊谷博子監督)に深くかかわった中心人物(退職者の会事務局長)に話をうかがい、さらに場所を移して、市職員労組、自治労福岡県本部関係者等との懇親会を持つなど、午前から夜まで、びっしり詰まった過密スケジュールであった。

 それからすでに数ヵ月が経過した。その後の話し合いで本格調査に向けたおおざっぱな役割分担を決めたものの、時季が時季だけにメンバー6人の足並みがそろわず、2月の大牟田市再訪を前に具体的なスケジュールを決めかねている。

 一人ひとりがおこなう単独研究と異なって、仲間を組んでおこなう共同研究には独自の持ち味があるし、また特有の意義がある。大学でも他の研究機関でも、共同研究が組めないようになってしまったらおしまいである。それがかねてからの私の主張であるが、実際には簡単にいかない。どうしても、各自の単独研究やその他のスケジュールの合間をぬって取り組むしかない。それでも、なんとか調整しあって取り組むことが大事である。気心が知れた仲間との、それも現地に出向いての共同調査ほど楽しいものはない。私にとっては今度の共同調査研究が、おそらくは最後のチャンスになるであろう。これまでにもいくつか成果を公表してきているが、科研費研究の残された2年間になんとか取りまとめてみたいと思うのは、大牟田調査の成果だけに限らない。半年ほど前の本欄で触れた大潟村調査の取りまとめもある。はたして、どこまでのことができるであろうか。

いまむら つなお 山梨学院大学教授)