昨年末、12月6日の国会会期ぎりぎりに、生活保護法改正案と同時に生活困窮者自立支援法が成立した。この2法案は先の国会に上程されたが会期末の混乱の中で廃案になったもので、今回もぎりぎりまで気をもませることになった。改正生活保護法はおおむねこの4月から、生活困窮者自立支援法は来年、2015年4月1日から施行される。ここでは、生活困窮者自立支援法について検討したい。
1月24日(金)夜7時半からNHK大阪放送局制作の「かんさい熱視線」で「法改正でどう変わる、生活保護の現場で」が放映された。出演は宮本太郎中央大学教授で、主な舞台は豊中市労働福祉課。市民協働部理事の西岡正次さんも登場する。
豊中市の取り組みとして映像に登場するのは、困窮者自立支援法に言う、中間的就労の場を切り出すための協力企業との協議の現場だ。就労支援事業のネックになっているのが、この中間的就労の場の確保だと言われる。西岡さんたち市の三人が、中間的就労事業の意義に共感した事業者(この場合は酒類の大規模小売スーパー)と打ち合わせをして、商品の在庫管理や売り場商品の補充といった作業に切り分けていく。これが、今回の制度改正のポイントの一つだ。もう一つは、就労準備支援事業の取り組み。精神障害や長期の失業などで8時間ではなく3時間しか働けないが、就労意欲のある人に定時の出退勤、あいさつ、自分の意見をまとめて伝えること、などを訓練する。
生活困窮者自立支援法では、来年4月1日から、福祉事務所を置く自治体は、6つの事業を立ち上げることになっている。このうち「自立支援相談事業」と「住居確保給付金の支給」の2つの事業は必須事業とされている。この「自立支援相談事業」がメインである。訪問による相談(アウトリーチ)も含めて、生活に困りながら相談の場に来ることができない人を把握し、生活保護に至る前の段階から早期に支援する。そのためには、税務課の滞納相談や教育委員会での給食費未納情報なども生かす。家賃未納で困っている人の情報にも不動産業界の協力でアプローチする。
ワンストップ型の相談窓口を設け、一人一人の状況に合わせて、自立に向けた支援プランをつくり、就労した後もフォローする。ただちに保護が必要なら、生活保護に結びつける。相談者の生活史、健康や疾病の状態、家族関係などを広く見渡して、アセスメントを行い、その人の状況と課題を評価し、分析し、それを相談者と共有する。支援計画は、他の機関(生活保護のケースワーカーや就労支援員、保健師、障害者支援センター、高齢者福祉課など)とも協議しながら、相談者の意思を生かして作られ、事情に応じて随時修正していく。
自立支援の中心は就労支援だが、この就労支援はハローワークでの一般就労につなぐ場合が多いと思われる。しかし、一般就労が無理な場合は、中間的就労として、多様な就業ケースにつないでいく。釧路市の場合は、公園の清掃のボランティア、リサイクル事業所でのインターンシップ、知的障害者の作業所でのボランティア、介護施設でのボランティア、などを中間的就労の場として活用している。広く社会的企業も就労現場として想定できる。
この生活困窮者自立支援法は、生活保護法ではほとんどの自治体がカバーできてこなかった生活全般を見渡したワンストップ型の生活支援相談事業を、すべての福祉事務所設置市町村に義務付けることとなる。また、就労支援の多様な展開をあわせて求めることとなる。自立概念は、経済的自立という狭い形ばかりではなく、日常生活自立、社会生活自立を含むものへと拡張することが求められる。これまで豊中市や野洲市、釧路市など先進自治体が取り組んできた自立支援事業をモデルにどこまで展開できるか、期待したい。失敗すれば、すでに指摘されているように生活保護制度はより苛酷なワークフェア(労働の強制)に堕す可能性もある。失敗させるわけにはいかないのである。
この制度を活用するのに、就労準備支援事業などにはすでに収入要件(住民税非課税世帯など、ミーンズテスト)がつけられているので、相談をうけても次につなぐことができないことも想定される。これについては家計相談支援事業に切り替えるか、今までの消費者生活相談につなぐなどの工夫も必要となるにちがいない。
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