現在、各市町村では、3年ごとに改定される介護保険事業計画の策定作業が行われている。対象年度は、2021年度から2023年度である。
この事業計画は、65歳以上の被保険者(第一号被保険者)の負担する保険料を算定することが第一の目的である。そのために、まず対象年度の年齢別人口推計が行われる。そしてこの推計65歳以上の高齢者のうち、介護保険を利用して介護される要介護認定者数の推計が行われる。この上に立って、これまでの実績をもとに、3年後の介護費用の総額の推計が行われる。まず施設系サービス(特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設)利用者数の推計、ついで在宅・地域密着型サービス(訪問介護・看護、デイサービス、グループホーム)利用者数の推計、が行われ、これにそれぞれの費用の実績値を延長した推計介護費用を乗じて、3年後の総額の介護費用を求める。
この総額の介護費用は、その1割は利用者が負担する。残りの9割のうち、50%は被保険者が保険料で負担する。残りの50%は国が50%、地方(都道府県25%、市町村25%)が50%負担する。
被保険者が介護保険料として被保険者が負担する割合は、それぞれの被保険者の割合で決める。2018年度から2020年度までの第7期では、第一号(65歳以上)が23%、第二号(65歳未満40歳以上)が27%である。最初の2000年は19%対31%だったから、高齢者の比率が高くなっていることが反映されている。
このように日本の介護保険は、保険とはいいながら、半分は保険料で、半分は租税で負担するシステムなのである。
ところで、市町村ごとに、第一号被保険者の保険料がかなり違う。たとえば、北海道の登別市では、基準となる第一号被保険者の保険料は3,700円だが、福岡県田川市では7,369円となっている(2017年)。田川市は登別市のほぼ2倍である。市町村ごとの介護費用の違いは、まず、高齢者人口の比率の差で生まれる。それから、介護に要する施設が福祉系の特別養護老人ホームなどが多いのか、医療系の老人保健施設などが多い地域なのかによっても規定される。医療系に依存するほうが費用は高くなる傾向がある。
そしてもう一つが、高齢者のうち、要介護認定を受けた高齢者の比率=要介護認定率が高いほど介護費用は高くなる。すなわち保険料は高くなる。そして、この要介護認定率は、行政や社会福祉協議会などの政策的努力が本来、発揮できる領域にある。内閣府の2018年度の調査では、介護予防事業への参加率の上昇や、運動習慣の向上が、要介護認定率の低下と逆相関の関係にあると分析している。
奈良県生駒市は、2019年の認定率が14%(全国では19%)で、この4年ほどその水準を維持しているが、以前は認定率17%であった。これには、予防事業などの幅広い展開が寄与しているように見受けられる。これは、この数年の、特に市民の自主事業の広がりと定着に根差している。第8期事業計画の第2章、「健康づくりから介護予防」では、高齢者体操教室、同地域型、いきいき百歳体操、ヒマワリの集い(地域型)、エイジレスエクササイズ教室、脳の若返り教室、など34の事業が挙げられている。また「自立支援事業」は、パワーアップ教室、転倒予防教室、リハビリ職派遣事業、など13事業、「社会参加促進事業」は、地域ネットのつどい、など16事業。これらは、社会福祉協議会、民生・児童委員、自治会や各ボランティアグループが連携して取り組んでいる。
今後とも認定率を低めに維持するためには、これら市民グループの次の担い手をどう発掘していくかだが、名案があるわけではなさそうだ。これからも各地の取り組みに注目していきたい。
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