地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年3月のコラム

行政のデジタル化 ― e-Tax(国税電子申請・納税システム)


武藤 博己

 今回は行政のデジタル化の一例として、確定申告のe-Taxを取り上げてみたい。筆者にとって、今回は6年目の試行錯誤であり、電子送信できたのは、まだ1回しかない。今年は送信できるだろうか。画面をよく見つめながら、慎重に進めてみた。
 まずは国税庁のホームページにアクセスする。画面の右側のトップに「令和2年分 確定申告特集」というバナーが出てくる。それをクリックすると、「国税庁からのお知らせ」という画面になり、右上に「確定申告書等の作成はこちら ▶」と書かれており、それをクリックすると、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」にたどり着いた。「作成開始」と「保存データを利用して作成」の二択の質問に、当然、作成開始をクリックする。
 別のブラウザ画面となり、「税務署への提出方法の選択」になる。①e-Taxで提出 マイナンバーカード方式、②e-Taxで提出 ID・パスワード方式、③印刷して提出、の三択である。②の16桁のIDとパスワードを持っており、「マイナンバーカード及びICカードリーダライタは不要です」と書かれており、従来マイナンバーカードの認証に失敗しているので、②を選択してみた。しかし、「ID・パスワード方式とは」という説明をみると、「ご自宅から行う方法」のところに「届出」が必要で、それには「マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要」と書かれている。不要と言っておきながら、必要だそうだ。ややこしい説明だ。
 では、①で行こう。①をクリックすると、「e-Taxのご利用のための事前準備を行います」という画面となり、「事前準備セットアップの更新が必要です」と書かれており、今年もまた更新が必要なのかと思いつつ、セットアップファイルのダウンロードが求められた。再び別のブラウザ画面が飛び出し、「令和2年分事前準備セットアップ」をクリックする。jizen_setup.exeというファイルがダウンロードされた。その際、「インストールしようとしているアプリは、Microsoft検証済みのアプリではありません」という警告が出て、ちょっとびっくりする。国税庁からMicrosoftに警告が出ないよう依頼しておいてほしいものだ。実行ボタンをクリックすると、「すべてのブラウザを終了させる必要があります」と注意される。事前に注意してほしいものだ。すべてのブラウザを終了させ、再度、実行させる。この事前セットアップは、マイナンバーカードが利用できるようにするためだが、筆者は以前にインストールしたことがある。続いて、マイナポータルをブラウザのChromeで利用できるようにする(以前は利用できなかった)ためらしいが、Chromeが開かれると、「Chromeから削除します」という表示が出て、インストール済みであることが知らされる。ここも不親切な説明である。事前セットアップ済みの場合、更新が必要なのはいつ以降なのか明示してくれれば、無駄なことをしないで済む。
 事前セットアップが終わり、ブラウザを再度起動して、確定申告書等作成コーナーに戻ると、マイナンバーカードの読み取りが求められる。次の画面で「利用者証明用電子証明書パスワード(4桁の数字)」の入力が求められる。次に進むと、確認画面の後、税の種類の選択となり、所得税を選択すると、マイナポータルと連携するかどうかを尋ねられ、続いて給与以外の収入があるかどうか、青色申告の承認を受けているかどうか、予定納税の通知を受けているか尋ねられ、次に進むと、ここでようやく給与所得の入力ができるようになる。
 ここまでの説明で字数の上限に近づいてしまった。本コラムでの結論は、事前の準備に関する説明が不親切で、はじめるまでに時間がかかってしまうことだ。年に1回のみのことなので、何を飛ばしてよいのか、あるいはいけないのか、わからない。国税庁OBの税理士にはわかりきったことでも、個人の利用者には不明であることが、このホームページを作成した人間にはわからないようだ。不親切きわまりない。ここまでたどり着くには、相当な忍耐が必要であった。この後も不親切なところが多々あったが、今年は忍耐強く対応したため、電子送信することができた。だが、国民のためのデジタル化になっていないことは断言できる。

 

(むとう ひろみ 公益財団法人地方自治総合研究所所長)