地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年3月のコラム

過疎地域の要件


武藤 博己

 2022年1月に「全国の「過疎」自治体、初の5割超……」という記事が掲載された(毎日新聞、21日)。「過疎地域」に指定される自治体が今年4月に公示されるが、23区を除く1,718市町村の51.5%にあたる885市町村に上るとのことである。過疎自治体が5割を超えるのは1970年の指定制度開始以降初めてで、「地方の衰退が深刻化し、政府の地方創生策の実効性が改めて問われるのは必至だ」と指摘している。確かに、地方の衰退は進んでいるが、一般論としてはそのような指摘ができるとしても、個別の地域をみると、地方創生等の地域活性化策が機能しているところもあるように思われる。そこで、問題となるのが、「過疎地域」はどのような要件で指定されているのか、という点である。
 条件不利地域政策の歴史を概略的に見てみると、最初は、1952年の「特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法」であるが、1953年の「離島振興法」、1954年には「奄美群島振興特別措置法」、1962年には「豪雪地帯対策特別措置法」、1965年には「山村振興法」で、ここまでは地理的な地域特性が重視されていた。1970年に全自治体を対象とした「過疎地域対策緊急措置法」が制定され、1980年には「過疎地域振興特別措置法」、1985年には「半島振興法」、1990年には「過疎地域活性化特別措置法」、2000年には「過疎地域自立促進特別措置法」、そして2021年には「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」(以下21年法)が制定されるという実に長い歴史がある。ただ、施策内容の多くは、補助金の上乗せである。
 ところで、過疎の意味だが、日本国語大辞典では、「極度にまばらなこと。ある地域の人口などが少なすぎること。」との説明があり、他の辞書もほぼ同様である。他方、法律の概念としては、21年法では、「人口の著しい減少等に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」(同法第1条)とされている。法律の概念には、人口減少に伴う地域社会の活力低下という要素が含まれている。筆者としては、人口が少ないことだけが問題ではなく、法律の概念のほうが過疎地域を支援する理由として正当だと考える。
 しかしながら、過疎地域に指定されていても、地域の活力を感じる地域があるように感じる。この違いは、おそらく過疎指定の要件がかかわっているのであろう。法律には、「過疎地域」の要件として、いくつか示されているが、字数の関係で、一部のみを考察したい。要件の中心的要素は、財政力指数と人口減少率である。21年法の第2条には、2つの要件が示されている。【要件1】は財政力指数では2017年度~2019年度の3年間の平均財政力指数が0.51以下であること、かつ公営競技収益が40億円以下であることとされている。人口減少率については、(イ)1975年~2015年の40年間人口減少率で、0.28以上であること、(ロ)40年間人口減少率が0.23以上であって、65歳以上は人口減少率が0.35以上であること、(ハ)40年間人口減少率が0.23以上であって、15歳以上30歳未満の人口減少率が0.11以下であること、(ニ)2017年度~2019年度の人口減少率が0.21以上であること、の4基準が設けられている。(イ)では0.28が(ロ)では0.23に下げられ、高齢化率が加えられ、(ハ)では若年人口減少率が加えられ、これらの結果として、指定が増えているのか減っているのかわからないが、人口減少には高齢化が付随するし、若者も減少するので、(ロ)(ハ)は不要ではないか。また、(ニ)では最近の急激な人口減少の地域を加えていることはよいが、逆に言えば1970年からの政策であるとしても、40年とか50年も前からの人口減少を考慮する必要はないのではないか。
 【要件2】は、40年間人口減少率が0.23以上で、2017年度~2019年度の3年間の平均が0.4以下であること、2015年~1990年の人口増加率が0.1未満であることとされている。過疎対策なのに、最近増加している自治体を含む理由がわからない。交流人口や関係人口、観光客などを考慮する視点は入れられないのだろうか。また、0.28とか、0.23、0.21などの数値が何を意味するのか、素人である筆者にはわからない。0.1高かったことで指定されなかった自治体もあったであろう。もっとわかりやすい要件を指定できないものなのであろうか。あるいは、そもそも指定をなくして、自治体の提案方式にできないものだろうか。

 

(むとう ひろみ 公益財団法人地方自治総合研究所所長・法政大学名誉教授)