地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2013年1月自治動向


共通の税を共同で共有する?

其田茂樹

 2012年12月の時点でこの言葉を耳にするとき、多くの人にとってそれは、日本維新の会の衆議院選挙における政権公約に謳われた財政調整制度を指すであろう。日本維新の会は、「中央集権打破」「統治機構改革」を政策の中核に据え、太陽の党と合流した際の基本政策でも、「地方交付税の廃止」と「消費税の地方税化」による「中央集権打破」が、最初に掲げられたという(『毎日新聞』2012年11月16日)。
地方交付税制度が中央集権の象徴であるかどうかは別にしても、消費税の「地方共有税」部分の配分基準を誰がどのように決めるのかなど、この「地方共有税」制度は、具体的な姿が不明確なままである。

 そもそもこの「共有税」という用語は何を意味するのであろうか。財務省財務総合政策研究所「主要国の地方税財政制度(イギリス・ドイツ・フランス・アメリカ)」(2001年6月)は、「ドイツの租税は、共有税、連邦税、州税、市町村税に分類できる」「共有税は、その税収が予め決められた比率で連邦、州、市町村にそれぞれ配分される」としている。しかし、このドイツの制度について伊東弘文は「共同税(共通税とも訳される)」(伊東「ドイツ共同税の成立の一こま」『地方財政』2004年4月号)としている。
 ここで、「共同税」という用語が出てきたが、これには、たとえば2003年5月に地方分権改革推進会議において水口弘一小委員長が「試案」に提起した「地方共同税」がある。
このほか、遠藤宏一は、「現行の一般消費税を国と府県の『共通税』と」し、大幅な地方への税源移譲を行う必要性を説いている(遠藤『現代自治体政策論』ミネルヴァ書房、2009年)。
「同姓同名」の「地方共有税」と称する構想についても、地方六団体による地方分権の推進に関する意見書『豊かな自治と新しい国のかたちを求めて-地方財政自立のための7つの提言』(2006年6月)や日本経団連の『道州制の導入に向けた第2次提言-中間とりまとめ-』(2008年3月)がすでに提起されている。
 前者は、現行の地方交付税制度を改革することによって「地方の固有財源」たる性格をより明確にするためのものであり、後者は、道州制導入にあたり現行の地方交付税も国庫補助負担金も廃止し、新たな水平的財政調整制度として位置づけるものである。このように様々な制度や構想が類似の用合法で混在しているのが現状である。

 このように並べてみると、日本維新の会の「地方共有税」は、日本経団連の「地方共有税」や水口試案の「地方共同税」に近いようにも思われる。しかし、水口試案に対して反対の立場を取っていた当時の総務大臣は日本維新の会の一員であるし、太陽の党と日本維新の会とが合流した際に、ニュアンスが変わった政策も見受けられた。
 もともと様々な意味で用いられてきた用語が、制度設計が示されないままに提起されている現状において、受け手側としては、提起された制度の背景にある税制全体の構想や地方制度等を見極めながら慎重に判断する必要があろう。とりわけ、地方自治体に対する財源保障や財政調整のあり方の具体像をどのように描いたものかが注目される必要がある。

文責 : 其田 茂樹