地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2014年9月中央の動き


中央の動き


◎一般財源総額は同額確保 ― 総務省概算要求
 総務省は8月29日、2015年度の予算概算要求を発表した。要求総額は16兆9,105億円(前年度比22億円減)で、「特別枠」に活力ある地域づくりなど434億円、「まち・ひと・しごと」関係に604億円を計上。一方、地方交付税は前年度比8,405億円減の16兆450億円と交付税率の引上げを事項要求。併せて、地方一般財源総額は前年度と実質同水準を確保するとした。
 「総務省まち・ひと・しごと」関係では、ローカル・アベノミクス推進のためローカル1万プロジェクト(地域密着型企業立ち上げ・35億円)や、地方中枢拠点都市圏等の推進(5億円)、ワンストップ支援窓口など地方への移住・交流推進(2億円)、ICTによる地域成長貢献(36億円)などを計上。また、緊急消防隊の大幅増隊(45億円)、エネルギー・産業基盤災害即応部隊の配備(5億円)、自治体クラウドの取組み加速や電子行政の実現・番号制度の導入(1億円)などを盛り込んだ。


◎各省が地方創生など計上 ― 2015年度概算要求
 各府省の2015年度予算概算要求が8月29日、出そろった。総額は過去最大の101兆円台にのぼる。政府が重点に掲げる地方創生に向け、各府省が地方対策や人口減対策などで様々な施策を打ち出したが、新藤義孝総務相が8月29日の会見で「全省庁的に横断的・総合的なパッケージ展開ができるかが地方創生成功の鍵」と述べたように、近く発足する「まち・ひと・しごと創生本部」での調整が今後の課題となる。
 うち、厚生労働省は、地域しごと創生プラン(仮称)推進(366億円)をはじめ、仕事と育児の両立支援(179億円)、待機児童解消加速化プラン(6,200億円)、地域医療介護総合確保基金による医療・介護供給体制改革等(41億円)などを計上。国土交通省は、コンパクトシティ推進(153億円)や過疎地域での「小さな拠点」形成(5億円)、地域の観光振興(41億円)、地方への国・企業の機能等移転(1億円)、国土形成計画の見直し(205億円)に着手する。農水省は、農林水産業の成長産業化に向け農地の大区画化等推進(1,429億円)や集落間のネットワーク化など地域の将来ビジョン(10億円)、農山漁村活性化再生可能エネルギー導入(12億円)などを計上。経済産業省はローカル・アベノミクス(557億円)で、地域での中核企業の産業集積や、ベンチャー創設・第二創業促進、地域全体のブランド化補助などを盛り込んだ。

◎自治体ガバナンスなど議論 ― 地制調小委
 第31次地方制度調査会は8月29日、第6回専門小委員会を開き、「自治体ガバナンスのあり方」を審議。会合では、最近の地方議員の政務活動費をめぐる不祥事や勤労者も議員に立候補できる環境整備、町村総会の活用、監査委員の共同設置などをめぐり意見交換が行われた。
 今後、ガバナンス関係を数回議論した上で、総会で諮問を受けた具体的な「審議項目」を決め、答申に向けた本格審議に入る予定。
 なお、8月1日の同小委では 人口減少社会関係の審議項目を審議した。総務省が示した「審議項目」(案)では、50年後には居住地域の6割以上で人口が半減するなどの厳しい状況を指摘。このため、人口減少の「食い止め策」に地方中枢拠点都市圏等の形成、広域連携が困難な市町村地域での必要な施策、大都市圏から地方圏への人口移動促進策などを挙げた。

◎地方中枢拠点都市圏で推進要綱 ― 総務省
 総務省は8月25日、「地方中枢拠点都市圏構想推進要綱」を発表した。地方圏の中心都市が近隣市町村と連携して人口減に対し「地方が踏みとどまるための拠点」を形成するのが狙い。来年度から導入するが、すでに今年度から盛岡市など9都市でモデル事業を進めている。
 人口20万人以上の都市が、「地方中枢拠点都市宣言」をし、近隣市町村と「連携協約」を締結。産学金官民が共同して圏域の将来像や経済戦略、生活関連機能サービスなどを盛り込んだ「地方中枢都市圏ビジョン」を策定する。なお、「連携協約」は、第30次地方制度調査会答申を受け先の通常国会で制度化された。自治体間で自由に政策合意できるが、同時に協約の「安定・継続性」のため政策実行の義務も負う。

◎少子化・子育て支援で研究会 ― 全国市長会
 全国市長会は8月22日、「少子化対策・子育て支援研究会」の初会合を都内で開いた。都市における子育て支援や若年層の増加に向けた取組み方策を検討する。田中俊行・四日市市長を座長に31市長で構成。来年6月にも提言をまとめる。人口減少が社会問題化する中、全国知事会は8月27日に安倍晋三首相に「少子化非常事態宣言」を手渡し人口減少への対応を要請したが、研究会の設置は地方六団体で初めて。
 初会合では、内閣府の宮本悦子政策統括官付参事官が「わが国の少子化の現状と対策」について講演、委員の清原慶子三鷹市長が市の取組み状況等を紹介した。これを受けて、委員市長から「子どもの医療無償化など小さなパイの中で人口を取り合っていてはだめだ」「人口増加している国内外の取組み施策も参考にすべき」などの意見が出た。次回は10月に開催する。

◎農地転用で総務相等に要請 ― 地方三団体
 地方三団体代表は8月19日、新藤義孝総務相や政党に対し、地方六団体がまとめた「農地制度のあり方」(提言)を手交。農地転用許可等を市町村に移譲するよう要請した。
 農地制度のあり方をめぐっては、2008年の改正農地法付則で、施行後5年(14年)を目途にそのあり方を検討するとされたことを受け、政府は昨年秋から地方分権改革有識者会議の農地・農村部会で審議。このため、地方六団体はPTを設置し「提言」をまとめ、7月25日の同部会で説明した。提言は、農地の総量確保目標と現実が乖離し総合的なまちづくりに支障を来していると指摘。市町村が設定した目標を上積みする農地の総量確保(マクロ管理)と、農地転用許可制度(ミクロ管理)の廃止・市町村への移譲を求めた。これに対し、農水省は8月20日の同部会で、市町村の目標積み上げでは「自給率確保に適合せず」、現行の「農地転用許可制度で優良農地保全が重要」だとした。

◎国保見直しで「中間整理」 ― 国・地方協議
 国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議が8月8日開催され、国保財政の構造問題の解決方向性や都道府県・市町村の役割分担などに関する「中間整理」を了承した。
 同協議は、いわゆるプログラム法や国民会議報告書を踏まえ、厚生労働省と地方三団体代表で設置。年内にも結論をまとめ、来年の通常国会に改正法案を提出する予定。
 「中間整理」は、財政上の構造問題解決に向け、保険者支援制度の拡充を早期に実施するほか、財政リスク分散のため「財政安定化基金」の創設を検討するとした。また、役割分担では、財政運営は都道府県が実施し、市町村は都道府県が定める「分賦金」を納付、そのための保険料を定めて賦課・徴収、保険事業は市町村が実施するなどとした。なお、全国知事会は7月15日の全国知事会議で、国が構造問題解決の道筋を示さず役割分担のみ議論する場合は「協議から離脱する」との方針を決めている。

◎7年ぶりにプラス勧告 ― 人事院
 人事院は8月7日、民間給与との格差解消のため月例給を0.27%、ボーナスを0.15月分それぞれ引き上げるよう内閣と国会に勧告した。引上げ勧告は、いずれも7年ぶり。併せて、俸給表の水準2%引下げなど給与制度の総合的見直しも勧告した。同見直しは、民間賃金の低い地域の実情をより反映させるのが目的。
 同勧告に対し、地方三団体は同日、給与制度の総合的見直しは「官民を通じて地域間格差が拡大する」との懸念を示すコメントを発表。自治労も8月28・29日の定期大会で、「政府は地方に国と同様の見直しを求めるべきではない」などとする闘争方針を決めた。しかし、総務省の有識者検討会は8月20日に地方も国と足並みをそろえるよう求める中間報告をまとめており、同省は、地方にも勧告と同様の引下げを求める方針だ。

◎三セクの経営健全化で新指針 ― 総務省
 総務省は8月5日、第三セクター等の経営改革に関する新ガイドラインを策定。併せて、第三セクターの効率化・経営健全化と経済再生・地域再生に向けた活用の両立を求める新藤義孝総務相名の通知を各自治体に通知した。
 同省は、昨年度まで全ての第三セクターの存廃を含めた抜本的改革(2009~13年度)を実施。その結果、損失補償・債務保証が7.5兆円から5兆円に減少するなどの実績を挙げた。これを踏まえ、新指針では①自治体の区域を超えた共同事業の実施②中山間地域や離島など民間企業の立地が期待できない地域での事業実施③まちづくりや福祉、地域活性化など公共性・公益性が高い事業の効率的な実施 ― などを要請した。

◎提案募集125件を重点審議 ― 分権有識者会議
 政府の地方分権改革有識者会議は8月1日、提案募集検討専門部会との合同会議を開き、地方から提案された改革案953件のうち152件を「重点事項」として同専門部会で検討することを決めた。8月19日から提案自治体のヒアリングを開始、年内にも対応方針を決め、来年の通常国会に関係法案を提出する。
 なお、8月29日に内閣府がまとめた各府省の一次回答では、「実施」は9件のみで提案の約8割が「対応不可」となっており、依然、各府省の抵抗は強い。
 政府は、新たな地方分権改革に向け「提案募集方式」「手挙げ方式」を創設、126団体から「介護保険事業の規制緩和」(長崎県・千葉県等)、「産業集積基本計画の国同意協議の見直し」(中国・九州知事会)、「開発行為の許可権限等の移譲」(磐田市・東広島市等)などの提案があった。ただ、重点事項の8割弱は都道府県提案で、中には都道府県からの権限移譲もあり、今後の同部会での調整が注目される。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集員・委嘱研究員、元自治日報編集長)