地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2014年12月中央の動き


中央の動き


◎衆院選の各党「政権公約」の評価発表 ― 知事会
 全国知事会は11月29日、衆院選に向けた各政党の政権公約を点数評価(100点満点)した「政権公約評価の概要」を発表した。トップは自民党の69.9で、次いで、公明党65.1、民主党60.2、維新の党50.1、社会民主党39.7、次世代の党31.0、日本共産党24.6となった。同評価は、「地方創生」「地方分権」「緊急地域経済対策」「地方安定財源確保」など7項目について評価特別委員会の16道府県知事が点数評価したもの。
 トップの自民党では「自由度の高い交付金の創設」明記などが高く評価された一方、地方財政充実の具体論が示されなかったことで減点。公明党では「国と地方の税源比率」明示が評価されたが、地方創生の交付金創設が明記されなかったことで減点。民主党は「国・地方関係抜本改革推進法」制定が評価されたが、格差是正を図るインフラ整備の必要性に触れていないことで減点。維新の党では、「消費税の地方税化・地方共有税の創設」で評価された一方、地方分権では国の出先機関廃止など大胆な改革も「道州制」を前提にしていることから知事の評価が割れた。


◎地方創生関連法が成立、閣法成立は7割に ― 国会
 地方創生関連2法が11月21日の参院本会議で賛成多数で可決、成立した。うち、地方創生法は、基本理念に将来にわたる活力ある日本社会維持のため、①結婚・出産・子育てに希望を持てる社会形成②地域特性を活かした就業機会の創出③自治体の連携協力による行政運営確保 ― などを掲げた。その上で、国が地方創生の目標や施策の基本方向・人口の将来見通しなどを盛り込んだ「総合戦略」を策定。これを踏まえて都道府県・市町村もそれぞれ地方版「総合戦略」を策定(努力義務)する。また、地域再生法改正法は、各地域活性化関連施策をワンパッケージで実現するのが柱。
 なお、衆院解散で法案審議が停滞、政府提出33法案のうち成立したのは23法で、成立は7割に止まった。政府が重要法案と位置付けていた女性活躍推進法案や労働者派遣法改正案などは廃案となった。
◎市町村に立ち入り調査権 ― 空き家対策法が成立
 空家対策推進特別措置法が11月19日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。市町村の強い意向を踏まえ議員立法で提出された。これを受けて、森民夫全国市長会長は同日、「空き家対策に法的根拠を付与する画期的なもの」と評価するコメントを発表した。
 同法は、国が空き家施策の「基本指針」、市町村が「空家等対策計画」をそれぞれ策定。その上で、市町村に空き家への立入調査や所有者把握のための固定資産税情報の内部利用を認める。さらに、倒壊など危険・著しく衛生上有害・景観を損なっている「特定空家」には、除却・修繕などを指導・助言、勧告、命令できるほか、行政代執行の要件を緩和。併せて、空き家対策に対する補助や地方交付税も拡充する。
 総務省調査によると、空き家は820万戸と5年前に比べ8.3%増加、空き家率も13.5%と過去最高を記録。空き家は防災・防犯・景観等で問題化しており、355自治体が空き家対策の条例を制定している。
◎消費税率引き上げ延期でコメント ― 市長会・町村会
 安倍晋三首相が11月18日の会見で消費税率引き上げの先送りを表明したことを受け、全国市長会と全国町村会は「社会保障の充実と持続可能性の確保」を求めるコメントを両会長連名で発表した。
 コメントは、既に市町村では「子ども・子育て支援新制度」の本格施行に向け条例制定や住民説明等の準備を進めているほか、国保財政は崩壊に瀕し、介護保険も超高齢社会に対応した持続可能な制度構築が急務となっていると指摘。市町村が社会保障の充実確保に対応できるよう必要な財源を確実に手当するよう求めた。なお、菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「子ども・子育て支援新制度は来年4月から予定どおり行いたい」と述べた。同時に「受益と負担を考えると、できなくなる部分が当然ある」とし、来年度予算案の編成過程で優先順位を付けて対応する考えも示した。消費税率引き上げで1.8兆円を社会保障の充実に充てる予定が、先送りで約4,500億円不足する。
◎人口減少めぐり講演等が続く ― 市長会等
 少子化対策が政府・自治体で「緊急課題」となっているが、全国市長会等で有識者の講演が続いた。
 全国市長会が11月12日開催した市長フォーラムで、増田寛也元総務相(日本創生会議座長)は、若年女性の減少と大都市圏への人口流失で2040年には5割の市町村が「消滅可能性都市」となるが、「歯止めがみえないのが問題」だと指摘。国民も「危機意識」を持つ必要性を訴えた。一方、自治労が11月10日開催した学習会で全国町村会の坂本誠調査室長は、日本創生会議が発表した「増田レポート」は精度が低い推計にもかかわらず「消滅可能性の市町村を実名でセンセーショナルに公表」したため、「諦め感が自治体の消滅を生みかねない」との懸念を強調。「収入対策だけでなく、支出対策による生活条件の確保も併せ行うべきだ」とした。また、全国市長会が11月13日開催した少子化対策・子育て支援研究会で、松田茂樹中京大教授は、政府が進めてきた「保育所中心の子育て支援」「仕事と子育ての両立支援」は一部分の支援であり、少子化の真因は「若年層の雇用の劣化で結婚できない者が増えたこと、家庭で出産・育児がむずかしくなった」ことにあると指摘。今後は雇用対策や婚活支援、児童手当等の拡充、都市部の保育サービス拡充など少子化対策の対象を拡大すべきだと訴えた。
◎地方創生で担当相と意見交換会 ― 地方六団体
 石破茂地方創生担当相と地方六団体との第2回意見交換会が11月12日、都内で開催された。冒頭、石破担当相が、地方創生では「国と地方の利益が相反するはずはないので、共に考え仕組みを変えることだ」と訴えた。これを受けて、山田啓二全国知事会長が①地方創生の自治体評価では地域間格差を考慮②少子化対策などは国がすべき③国民に地方創生が理解できる予算をつくるべき ― などと要請した。
 次いで、政府側が、地方創生の「長期ビジョン骨子」「総合戦略骨子」「日本版シティマネージャ派遣制度」「地方創生コンシェルジュ制度」などを紹介。六団体は、地方創生に向けて①ビジョンの明確な提示②少子化対策の抜本的な強化③地方分権の実現と法令・制度等の見直し ― などを要請した。また、首長から「東京一極集中是正に対する国の姿勢が出ないと地方から不信感が出る」(森民夫市長会長)、「施策効果の検証では条件不利地域が多いことを配慮して指標に工夫を」(藤原忠彦全国町村会長)などの意見も出た。
◎地方議会活性化でシンポなど ― 総務省、県議長会
 総務省主催の地方議会活性化シンポジウム2014が11月10日、都内で「地方自治体の政策形成に果たすべき地方議会の役割」と題して開催された。昨年から開催している。西尾勝東京大名誉教授が「地方議会の改革課題」と題して講演。次いで、城本勝NHK解説副委員長を司会に、大橋真由美成城大教授、大屋雄裕名古屋大大学院教授、大山礼子駒澤大法学部長と、佐藤祐文横浜市議長、多賀久雄京都府議長が討論を展開した。講演で西尾氏は、議会三団体が求める議会招集権付与について議会が首長の不信任議決権を持つ中では執行機関側が「危惧の念を持つ」との認識を示した。また、全国都道府県議会議長会は11月11日、都内で都道府県議員研究交流大会を開催した。今回が14回目。神野直彦東京大名誉教授が「地方自治体の将来展望と都道府県議会の役割」と題して講演。次いで、「議会運営の改革」「議会の政策立案機能の強化」「行政チェック機能の強化」「住民との関係強化」などをテーマに分科会が開催された。
 なお、政府の第31次地方制度調査会では、議会の意思決定・監視機能の役割、住民代表としての役割などをテーマに審議しており、2016年春にも答申する。
◎政府主催知事会議で地方創生めぐり議論 ― 政府
 政府主催の全国知事会議が11月7日、首相官邸で開催され、安倍晋三首相や関係閣僚と知事とが地方創生などをめぐり意見交換を行った。
 安倍首相は、「まさに知恵は現場にあり」として、各地域の声を施策に活用する意向を強調。また、石破茂地方創生担当相は、「地方が自ら考え責任を持って取り組む地方の主体性が重要だ」と述べるとともに、「効果検証を伴わないものはばらまきだ」と改めてPDCAサイクル確立の必要性を指摘した。これに対し、山田啓二全国知事会長は、「知恵は現場にあるが、現場はすべて異なっている」とし、「国の評価が一律になると、頑張る地方応援が一歩間違えば弱肉強食になる」との懸念を表明。整備の遅れた地域の支援などナショナルミニマム整備の必要性も強調した。
 他の知事からは「(合計特殊出生率の目標)実現に頑張るが、そのためには財源が必要」(鳥取県)、「地元に就職すれば奨学金を免除。ばらまきと思われているが意義はある。自由度の高い交付金を」(香川県)、「少子化対策は地域で問題が違う。少子化対策交付金など自由度の高い交付金を」(高知県)など、自由度の高い交付金創設を求める意見が相次いだ。
◎噴火災害等で緊急声明など ― 知事会等
 御嶽山の火山噴火や、最近の異常気象に伴う土砂災害が各地で頻発していることを受け、全国知事会などが相次いで緊急声明等をまとめ政府に要請した。
 全国知事会が11月5日にまとめた「緊急声明」では、火山災害から人命を守るため、国に観測機器の整備や機能強化等に対する財政面等の支援強化を要請。併せて、最近10年間の土砂災害は従前の1.6倍に増加しているとして、土砂災害警戒区域指定加速のための国費嵩上げやインフラ基盤の老朽化対策の促進を求めた。また、全国市長会が11月13日に決めた「決議」では、観測予知・情報発信等の火山防災体制の充実強化と噴火活動観測時には広域避難先の確保や高速道路を活用した避難体制の整備を要請。全国町村会が11月11日にまとめた「緊急要望」でも、火山噴火の観測機器の設置強化や専門家による助言体制の充実を要請。さらに、噴火発生前に地元町村が住民や登山者・観光客等に的確な避難指示等ができるよう、より詳細・具体的な噴火警戒レベルを設定するよう求めた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)