月刊『自治総研』
2015年1月中央の動き
中央の動き |
◎法人実効税率の引き下げを先行 ― 与党税制大綱 ◎法人税の代替財源確保など要請 ― 地方3団体 全国知事会は12月30日、与党の税制改正大綱決定を受けて声明を発表した。法人実効税率引き下げでは、外形標準課税の拡大などを「評価」する一方、今後の20%台への引き下げの際は、「恒久減税には恒久財源」確保を強く求めた。また、消費税率10%引き上げを2017年4月に確実に行うべきだとし、併せて、軽減税率制度の導入は慎重に検討すべきだとした。自動車関係税見直しでも、代替財源の確保を同時に図るよう求めた。このほか、地方創生では本社機能の地方移転に対する地方拠点強化税制や子育て資金等の一括贈与の非課税措置創設を評価した。 一方、全国市長会と全国町村会は12月24日、税制改正要望をまとめ政党等に要請した。法人実効税率見直しでは代替財源確保を大前提とするほか、ゴルフ場利用税、自動車取得税、償却資産に対する固定資産税の現行制度堅持などを求めた。 ◎地方創生で長期ビジョンと総合戦略 ― 政府 政府は12月27日の臨時閣議で地方創生の「長期ビジョン」と「総合戦略」を決めた。2060年に人口1億人維持や、5年間で地方に30万人の若者雇用創出などを掲げた。各都道府県・市町村は15年度中に「地方人口ビジョン」「地方版総合戦略」を策定する。 長期ビジョンでは、「人口減少への対応は待ったなしの課題」とし、人口減少に歯止めをかけるため、東京一極集中の是正と若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現する必要性を強調。若い世代の希望が実現すれば出生率は1.8に上昇するとの見通しも示した。総合戦略では、地方の若者雇用30万人創出や若い世代の正規雇用労働者割合の増(93.4%)、女性の就業率73%、東京圏から地方移転4万人増などの目標を掲げた。そのための施策として、「地域しごと支援センター」「全国移住支援センター」「子育て世代包括支援センター」の設置や、企業の地方拠点強化、地方大学の創生などを掲げた。 ◎自治体向け交付金創設など経済対策決定 ― 政府 政府は12月27日、緊急経済対策を閣議決定した。柱は、①生活者・事業者の支援②地方の活性化③災害復旧・復興の加速 ― の3本。地域住民の生活等緊急支援のため「地方創生先行型」「地域消費喚起・生活支援型」の2つの交付金を創設する。創生先行型の第1回交付金は全市町村に配分する予定。総額は3.5兆円で、うち生活者・事業者への支援に1兆2千億円程度、地方の活性化に6千億円程度を計上する。 地方創生に向けた「総合戦略」の先行的実施では、地方への新しい人や企業の流れ支援、ふるさと名物の開発・販路開拓の支援、地域経済の活性化を支援するファンドの設立と資金供給の促進、地域活性化のためのICT利活用などを実施。子育て世代包括支援センター整備や待機児童解消加速化プランの推進、地域少子化対策強化交付金なども盛り込んだ。生活者・事業者への支援では、商品券の発行支援など自治体が行う消費喚起策に対し交付金を助成するほか、災害復旧・復興加速化では、火山観測研究基盤の整備・観測体制の強化も盛り込んだ。 ◎地方創生・経済対策で評価コメント ― 六団体 地方六団体は12月27日、政府が決めた地方創生の総合戦略や経済対策に対するコメントを発表した。総合戦略で企業の地方拠点機能の強化など、経済対策で自由度の高い交付金「地方創生先行型」の創生を評価。特に、交付金については「今回限りの措置となることなく、地方一般財源の確保を含め引き続き十分に講じることが地方創生の成功には不可欠だ」とした。 また、全国市長会・全国市議会議長会・全国町村会の各会長が12月24日に石破茂地方創生担当相と意見交換。その中で、石破担当相は、地方創生実現へ日本版シティーマネージャー・地方創生コンシェルジュなどの人的支援や財政支援を早期に実施するとともに、今後も多くの市町村長に説明する意向を表明。併せて、地方版の総合戦略等を早期に作成するよう要請した。 ◎2015年度予算編成の基本方針を決定 ― 政府 政府は12月27日の閣議で2015年度予算編成の基本方針を決めた。「義務的経費も含め、聖域を設けずに大胆に歳出を見直す」など経済再生と財政健全化の両立を明記。地方財政でも「歳出特別枠や地方交付税の別枠加算を見直す」など歳入・歳出改革を進めるとした。同時に、13年の閣議了解を踏まえ一般財源総額は12年度地方財政計画水準を下回らない方針も示した。 一方、財務相の諮問機関・財政制度等審議会は12月25日発表した15年度予算編成に関する建議で、「社会保障や地域の行政サービスを享受する現役世代が応分の負担をせず、負担を先送りしたことが財政悪化の原因」と指摘。地方財政では「歳出特別枠や別枠加算は廃止又は大幅に縮小」すべきと提言した。これに対し、総務相の諮問機関・地方財政審議会は12月26日の報告で、15年度の一般財源総額は14年度と同水準を確保するとともに、歳出特別枠と別枠加算の継続の必要性を強調。さらに、毎年度巨額の財源不足が継続しているとして地方交付税率の引き上げを提言した。 ◎給与制度の総合的見直しで最終報告 ― 総務省 総務省は12月22日、地方公務員給与制度の総合的見直し検討会の最終報告を発表した。改めて国の給与制度総合的見直しに合わせた対応を求めた。今年度、人事委員会が同様の勧告を見送った岩手、秋田、群馬、京都、熊本の5府県と札幌、千葉、新潟3市を除く17指定都市名も併せ公表。実質、これらの団体に早期対応を求めた形だ。なお、総務省が同日公表した地方公務員給与の実態調査(2014年4月1日現在)によると、全団体のラスパイレス指数は98.9と前年より8.0ポイント低下、3年ぶりに国を下回った。 また、総務省が同日公表した地方公共団体定員管理調査(同)によると、全団体の職員総数は274万3,654人で、前年より0.3%、8,830人減少した。20年連続の減少で、20年前と比べると、警察・消防部門が増加する中、一般行政職は22.6%も減っている。 ◎新たな国土形成計画で中間整理案 ― 国交省 国交省の国土審議会計画部会は12月16日、新たな国土形成計画(全国計画)の中間整理案を大筋了承した。急激な人口減少と少子・高齢化に対応するため現行計画を見直すもので、今年夏にも決定する。 「対流促進型国土」の形成を基本方針に据え、このため「コンパクト+ネットワーク」の形成を打ち出した。具体的には、行政や医療、福祉、商業、金融、エネルギーなど生活に必要な各種機能を一定地域に集約化することで利便性向上とサービスの効率的な提供が可能になるとした。併せて、地域内で必要な機能を整えることが困難な場合には地域が連携して役割分担、地域間がネットワーク化し、必要な機能を享受できるようにするとした。さらに、中山間地域など人口規模が小さな地域では各種機能を集約した「小さな拠点」の形成・活用を戦略的に進めるとした。 ◎自公が3分の2確保、投票率は最低更新 ― 衆院選 12月14日行われた衆院選挙で、自民党291議席、公明党35議席、合わせ衆院定数の3分の2超を確保した。民主党は11増の73議席を確保、維新の党は1減の41議席に、共産党は2倍超の21議席に増やした。一方、投票率(総務省発表)は52.66%で、前回を6.66ポイント下回り戦後最低を更新。うち、青森県46.83%を筆頭に、宮城、富山、石川、徳島、愛媛、福岡、宮崎の計8県で50%を下回った。なお、旧自治省関係では務台俊介氏(58、長野2区、自民)、上野賢一郎氏(49、滋賀2区、自民)、重徳和彦氏(43、愛知12区、維新)、藤井比早之氏(43、兵庫4区、自民)、小川淳也氏(43、四国ブロック、民主)、古川康氏(56、佐賀2区、自民)、宮路拓馬氏(35、九州ブロック、自民)が当選した。 また、12月24日に第3次安倍内閣が発足。会見した安倍晋三首相は、アベノミクス成功を最大の課題に掲げるとともに、憲法改正にも意欲を示した。 ◎若者の「田園回帰」支援で報告案 ― 農水省 農水省の活力ある農山漁村づくり検討会は12月10日、「魅力ある農山漁村づくりに向けて ― 都市と農山漁村を人々が行き交う『田園回帰』の実現」と題する中間取りまとめを公表した。最近の若者を中心にした都市と農山漁村を行き交う「田園回帰」の活発化を受け、各地域での取り組み事例を紹介した上で、「対流型社会」実現に向けた方策を提言した。 具体的には、地域資源を活かした雇用創出と所得向上のため、農林水産業の関連産業を農山漁村に取り込む「村業・山業・海業」の創出を提言。また、人口減少で単独では維持困難な集落が増えているため、小学校区の集落群で生活サービスの提供拠点を基幹集落に集約・周辺地域とネットワークする「拠点+ネットワーク」の展開を提言した。さらに、農家民宿や農家レストランなど都市と農山漁村の交流の戦略的推進の必要性も強調した。
|
(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
|