月刊『自治総研』
2015年2月中央の動き
中央の動き |
◎地方分権の提案で対応方針を決定 ― 政府 ◎合併算定替の交付税減少分の7割復元へ ― 総務省 総務省は1月19日の自民党総務部会で「市町村の姿の変化に対応した交付税算定」を説明した。平成の大合併が経過、多くの合併自治体で交付税総額が合併算定替から一本算定への移行で激減。このため、合併自治体から「救済措置」の要請が強く、総務省が2014年度から5年程度で交付税算定の見直しを始めた。 新算定は、14~16年度まで支所経費を加算(3,463億円)するほか、15~17年度まで消防費・清掃費・地域振興費の加算等(1,000億円)、16年度以降は保健衛生費・小中学校費・徴税費等の補正新設等(700億円)など合計6,700億円程度を措置する。この結果、平成の大合併による合理化・効率化の交付税削減分約9,500億円の7割程度が復元される。 ◎連携中枢都市圏で新財政措置を公表 ― 総務省 総務省は1月28日、地方中枢拠点都市圏構想に代わる新たな「連携中枢都市圏」構想の財政措置を公表した。同都市圏は、地方創生に伴い国交省等と重複する都市圏構想を統一したもの。 財政措置は、「連携中枢都市」に対する包括的財政措置として例えば人口75万圏では約2億円を交付税措置するほか、生活関連機能サービス向上のため1市当たり年間1.2億円の特別交付税を措置。連携市町村には、1団体当たり年間上限1,500万円の特別交付税を措置する。このほか、圏域外の専門性ある人材活用に上限700万円、病診連携等に上限800万円などの特別交付税措置を行う。 ◎地方創生関連予算は合計242事業 ― 地方創生本部 政府のまち・ひと・しごと創生本部は1月14日、2014年度補正予算案と15年度予算案に盛り込まれた地方創生関連事業の一覧をまとめた。 補正予算案では計59事業(重複を含む)、3,275億円が盛り込まれた。内閣府が地方創生先行型交付金1,700億円を創設したほか、全国移住促進センター設置(総務省・2億円)、子育て世代包括支援センター整備(厚労省・3億円)、新規就農・経営継承総合支援(農水省・58億円)、ふるさと名物応援(経産省・40億円)、地域観光振興緊急対策(国交省・5億円)などを計上。15年度予算案は計193事業(同)、1兆3,991億円。地域再生基盤強化交付金(内閣府・430億円)や「小さな拠点」集落生活圏の形成(国交省・3億円)、文化芸術による地域活性化・国際発信(文科省・26億円)、革新的ものづくり産業創出連携促進(経産省・128億円)、日本食・食文化魅力発信プロジェクト(農水省・11億円)、公共施設への再生可能エネルギー・先進的設備等導入推進(環境省・190億円)、国産酒類の活用推進(外務省・1億円)などが盛り込まれている。 ◎地財対策で一般財源総額を1.2兆円増額 ― 総務省 2015年度の地方財政対策が1月12日、決着した。地方創生枠1兆円創設と一般財源総額の増額が特徴。 地方創生枠は、地域の元気創造事業費と歳出特別枠を振り替え、新たに0.5兆円の財源を確保した。また、地方税等が40兆1,773億円と大幅増(同6.4%)となる中、地方交付税は同0.8%減にとどめ16兆7,548億円を確保する一方、臨時財政対策債は同19.1%減らして4兆5,250億円に抑制。その上で、一般財源総額を61兆5,485億円確保、その質も改善した。廃止を求められた歳出特別枠は、地方創生と公共施設の老朽化対策経費に重点化し3,500億円確保。交付税の別枠加算は2,300億円に縮小した。地方交付税率の見直しも実現した。所得税分は32%を33.1%に、酒税分は32%を50%にそれぞれ引き上げる一方、法人税分は43%を33.1%に、たばこ税(国税)は25%をゼロにする。同見直しによる法定率分は900億円程度の増となる。 ◎2015年度の地方財政対策を評価 ― 六団体 地方六団体は1月14日、2015年度地方財政対策の決定を受けて共同声明を発表した。地方税増収の中、地方交付税の減少を0.1兆円減にとどめる一方、臨時財政対策債を大幅抑制、一般財源総額は前年度を大幅に上回り61.5兆円確保したとして「評価」した。併せて、地方創生枠1兆円の確保を「歓迎する」とした。さらに、「地方交付税の法定率の見直しを一歩進めたことは地方が求めてきたもの」だとし評価した。 また、高市早苗総務相は1月13日の記者会見で、 今回の地財対策について「国の財政も厳しい中、地方財政や地域経済に配慮した形で決着できた」との認識を示した。また、地方交付税の法定率見直しの狙いについて、①景気変動に左右されやすい法人関係税のシェアを引き下げ所得税を引き上げることで交付税原資の安定性を確保②たばこ税に大きく依存する地方税源をお酒も含めてバランスよく配分して安定性を高める ― などと説明した。 ◎施設老朽化対策に1千億円 ― 15年度総務省予算案 総務省は1月14日、2015年度の総務省所管予算案を発表した。一般会計総額は前年度比3.4%減の16兆3,428億円で、このほか東日本大震災復興特別会計分として同2.6%増の5,953億円を計上した。 主な事業をみると、地域からの成長戦略では地域密着型企業を1万事業立ち上げるローカル1万プロジェクトに24億円、自治体データを民間等に提供する地域の生産性向上プラットホーム構築に1億円、また、中心都市が近隣市町村と連携する連携中枢都市圏の形成に2億円、過疎集落活性化のため複数集落をまとめる「集落ネットワーク圏」形成に4億円(新規)など計上。また、地域の自立促進関係では、「全国移住促進センター(仮称)」の設置に1億円(同)、地域おこし協力隊による地域への人材還流推進0.9億円(同)、JETプログラムを活用した地域活性化に0.1億円(同)を計上。このほか、地方債計画は前年度比7.1%減の11兆9,242億円とし、うち公共施設老朽化対策として公共施設の集約化・複合化、転用・除去を対象とする公共施設等最適化事業費1,000億円を創設する。 ◎今年夏に新財政再建計画を策定 ― 政府・自民党 麻生太郎財務相は1月14日、2015年度予算案決定を受けた記者会見で、今年夏にも策定する2020年度の基礎的財政収支黒字化達成に向けた財政健全化計画では社会保障や国・地方の歳出全般、税制体系の構造改革を検討する必要性を強調した。また、自民党の稲田朋美政調会長は15日、党でも「2020年度の基礎的財政収支黒字に向けた歳入・歳出の改革を断行していく組織を立ち上げ、2月からスタートさせたい」と述べ、政府と併せ党でも検討していく方針を明らかにした。 一方、高市早苗総務相は1月12日の記者会見で、「地方の経済が元気になり税収が上がっていく状況をつくることが大事で、そちらを優先しなければ、結果的に健全化も達成できない」と述べ、一方的な地方財政圧縮を牽制した。 ◎2014年度補正予算に地方創生など3.1兆円 ― 政府 政府は1月9日、地方の活性化や消費の支援に向けた経済対策を盛り込んだ総額3兆1,180億円の2014年度補正予算案を決めた。 うち、地方の活性化では5,813億円を計上。地方創生に向けて自治体が柔軟に活用できる地方創生先行型交付金1,700億円を創設するほか、地域再生戦略交付金50億円、創業・第二創業促進補助金50億円、ふるさと名物応援事業40億円などを計上。さらに、地域の産業振興に向けて地域オープンイノべーション促進事業18億円、ものづくり・商業・サービス革新事業に1,020億円、担い手への農地集積・集約化270億円などを計上した。また、生活者・事業者への支援は1兆2,054億円を計上。地域消費喚起・生活支援型交付金2,500億円を創設するほか、待機児童解消加速プラン推進120億円、地域少子化対策強化交付金30億円、循環型社会形成推進交付金285億円などを盛り込んだ。このほか、災害対応では自然災害リスク回避等の緊急防災対応に1,155億円、学校施設等の耐震化に1,633億円を計上した。 ◎18年度に国保運営を都道府県へ移管 ― 政府 政府は1月13日、社会保障制度改革推進本部を開き、国民健康保険制度を2018年度から都道府県に移管することなどを盛り込んだ医療保険制度改革骨子を決めた。今通常国会に関連法案を提出する。 国保の移管に向け、赤字体質の財政基盤を強化するため15年度から新たに国費1,700億円を投入、さらに17年度には後期高齢者支援金の全面総報酬割実施に伴う増分1,700億円も投入、市町村国保の赤字総額をほぼ補てんすることで、18年度から都道府県を国保の財政運営主体とする。これに併せて、都道府県が県内の統一的な国保運営方針を定めるとともに、市町村ごとの分賦金を決め、標準保険料率などを設定する。なお、保険料の徴収や保険給付の決定、保健事業などは従来通り市町村が実施する。なお、全国知事会は1月8日開いた全国知事会議で、「重い保険料負担率を引き下げるなど抜本的な財政基盤強化が必要」であり、これらの措置が講じられない場合は「今回の改革には応じられない」との緊急要請を採択している。
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(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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