地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年3月中央の動き


中央の動き


◎公営企業抜本改革の取り組み状況等発表 ― 総務省
 総務省は2月27日、地方公営企業の抜本改革の取り組み状況(2014年4月1日現在)を発表した。公営企業の経営健全化などを求めた2009年通知の対応状況をまとめたもの。09年から14年の間に240事業が廃止された。宅地造成事業などで多い。民営化・民間譲渡も118事業あった。介護サービス事業などで多い。包括的民間委託(12年度から調査)は87事業で実施。水道や下水道事業などで積極的に実施された。また、PFI手法を59事業が導入していた。指定管理者制度は172事業が導入。介護サービスや観光・その他事業、駐車場事業などで導入されている。このほか、公営企業型地方独立行政法人が32法人設立された。
 併せて公表された民間的経営手法等の先進的取組事例集では、「浄水場更新と運営・維持管理一体のPFI導入」(横浜市)、「病院経営統合と地方独立行政法人制度導入」(山形県・酒田市)、「水道三セク会社に対する民間企業との共同出資」(広島県)、「市電のネーミングライツ売却」(函館市)、「非常時の水の相互融通」(東京都・埼玉県・川崎市)などが紹介されている。このほか同省は1月に公営企業会計の適用推進を通知、その「マニュアル」も公表した。


◎地方統一選挙で公約等を発表 ― 各政党
 民主党が2月25日、春の統一地方選の重点政策をまとめるなど、統一選に向け各党が公約等を発表した。
 民主党は、「上から目線のアベノミクス」を批判し、中小企業の社会保険料軽減や農家の戸別所得補償制度の恒久化、非正規労働者の処遇改善に向けた「同一労働同一賃金推進法」の制定などを掲げた。自民党は「経済成長により財政の健全化を促進」するとし、農業者と地域農協が「主役」になる農協改革で農業者所得向上、結婚・出産・子育ての切れ目ない支援などを挙げた。公明党は、地方創生の消費喚起・生活支援型交付金で消費喚起と低所得者等の生活を支援するなどとした。維新の党は、「身を切る改革」へ首長・議員報酬の3割カットや議員定数の3割削減、大阪都構想実現で二重行政排除などを掲げた。
 なお、春の統一地方選挙(総務省調査)では首長233団体(13.0%)、議員745団体(41.6%)で実施される。また、同省は2月6日の選挙管理委員会担当者会議で、法令遵守や厳正な選挙執行を要請した。先の衆院選挙で開票作業の不正やミスが相次いだため。さらに、2月27日に統一選での地方公務員の服務規律確保を求める通知を出した。
◎統一地方選で提言 ― 経済同友会
 経済同友会は2月24日、「統一選挙の重要争点とすべき5つの取り組み」を提言した。人口減や財政難など自治体が直面する課題に対応するため、首長らは住民に自らのビジョンと実現に向けた計画を示し実行する「地域経営者」となる必要があると強調した。
 このため、統一地方選挙の重要争点とすべき「5つの取り組み」として、①長期財政見通しに基づく財務マネジメントの確立②事業の柔軟実施に向け地域内分権と民間組織との連携③“圏域”視点の産業振興に向けて広域連携の活用④コンパクトシティ化をまちづくりのコンセプトに⑤ビジョンを起点とした人事戦略の策定 ― を提言した。併せて、国の役割として、「地域経営者を支える地方創生」「地方分権改革の一層の推進」「道州制推進基本法案の早期成立」も提案した。
◎地方創生への取り組みなど要請 ― 総務省
 総務省は2月18日、全国都道府県財政課長等会議を開き、「留意事項等」を示すとともに、当面する地方行財政の課題等について説明した。
 佐藤文俊自治財政局長は、2015年度の地方財政対策では地方創生を含め一般財源総額を1.2兆円増額したとし、「地域の英知を結集し本気で総合戦略の策定に取り組んでほしい」と要請した。同時に「財源が増えて漫然と良かったというのでは困る。3、5年後に総合戦略の数値目標の達成成果が問われる。地方団体は、厳しい立場に立つことを考えてほしい」と指摘した。また、内藤尚志財政課長は、地方創生で16年度以降の財源を懸念する声もあるが、法人住民税の偏在是正や金融機構の準備金活用などで歳出を確保する方針を示し、「(今後の地方創生の)財源を確保する上でも地方創生に積極的に取り組む」よう要請した。
◎2015年度の地財計画を国会に提出 ― 総務省
 総務省は2月17日、2015年度の地方財政計画を国会に提出した。計画規模は、前年度比2.3%、1兆9,103億円増の85兆2,710億円で、新たに「まち・ひと・しごと創生事業費」1兆円を計上した。地域の元気創造事業費など既存歳出を振替える一方、新規に5,000億円確保。また、地方税が37兆4,919億円、同7.1%増加する中、地方交付税は同0.8%減の16兆7,548億円を確保、臨時財政対策債は同19.1%減、4兆5,250億円に抑制するなど、一般財源総額を同2.0%増の61兆5,485億円とした。歳出特別枠は実質同額を確保、交付税の別枠加算は2,300億円に縮小した。地方創生1兆円の交付税算定では、既存の「地域の元気創造事業費」を増額(4,000億円)するとともに、新たに「人口減少等特別対策事業費」(6,000億円)を創設した。
◎6月にも地方創生の基本方針 ― 石破担当相
 石破茂地方創生担当相は2月17日の閣議後会見で、2016年度概算要求に向けた地方創生の基本方針を6月にも策定することを明かにした。併せて、地方創生が15年度から実質的に動き出すとして、「各計画や目標数値を精査し、自治体の成果があがることを確実にする」と述べた。なお、経済財政諮問会議は6月にも今年夏の財政健全化計画に向け骨太方針をまとめる。
 また、全国市長会は2月20日、「まち・ひと・しごと創生対策特別委員会」の初会合を開いた。同会合で、政府のまち・ひと・しごと創生本部の山崎史郎地方創生総括官は、地方版総合戦略について「できたら10月くらいまでに策定していただけるとありがたい。いろんな面でバックアップしたい」と述べた。
◎財政健全化計画へ議論が本格化 ― 諮問会議等
 政府の経済財政諮問会議は2月12日、今年夏にまとめる財政健全化計画に向け議論をスタートさせた。民間議員が経済再生・財政健全化の目標として基礎的財政収支のGDP比を2020年までの5年間で3.3%(15年度比)改善するよう提案。これを受けて、安倍晋三首相は「20年度の財政健全化目標は堅持する。関係大臣と協力し(再建)計画策定に向け検討してほしい」と指示した。一方、内閣府は中長期の試算で、基礎的財政収支が20年度も9.4兆円赤字となると報告。計画達成には、さらなる歳出・歳入改革が必要となる。
 甘利明経済財政担当相は同日の衆参両院での経済演説で、引き続き社会保障・税一体改革に取り組むとし、医療・介護の「見える化」を進め支出の効率化・適正化を図る意向を強調した。一方、厚労省は2月24日、「保険医療2035策定懇談会」の初会合を開いた。20年後の保険医療システムの姿を示した上で、財政健全化に向けた対応策を夏にもまとめる。また、財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会も2月26日、財政健全化計画の策定に向けて審議を始めた。社会保障と地方財政の改革が焦点となる。自民党も2月5日に「財政再建に関する特命委員会」を発足させた。6月にも改革案をまとめ政府に提出する。
◎医療保険改革関連法案まとめる ― 厚労省
 国と地方3団体の国保基盤強化協議会は2月12日、国民健康保険制度の見直しで合意した。これを受けて、厚労省は近く医療保険制度改革関連法案を国会に提出する。同法案は国保制度の見直しが柱で、2018年度から都道府県が財政運営の責任主体となる。具体的には、都道府県が市町村ごとの標準保険料率を提示するとともに給付費の全額を市町村に交付。市町村は、資格管理や保険給付、保険料率の決定、賦課・徴収、保険事業などを引き続き担う。このため、毎年約3,400億円の財政支援拡充を実施する。
 関連法案では、このほか、都道府県が地域医療構想と総合的な目標(医療費の水準・医療効率提供の推進)を計画に設定、保険者が行う保険事業に予防・健康づくりに関する被保険者の自助努力への支援を追加する。また、後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入や、負担の公平化(入院時給食代の引上げ、健康保険の標準報酬月額の上限引上げ)なども盛り込んだ。
◎農地転用の制度設計など対応へ ― 六団体PT
 地方六団体の農地制度のあり方に関するPTが2月5日、農地転用許可の権限移譲などが閣議決定されたことを受けて、今後の取り組みについて協議。今後、同制度を適正運用・活用するとともに、マクロ・ミクロの制度設計についても地方六団体として対応していく方針を決めた。
 農地転用許可制度の権限移譲については、同PTが昨年、農地の総量確保目標を国・都道府県・市町村で設定。その上で農地転用許可等を市町村に移譲するよう提言。今回、閣議決定された「対応方針」では、①2~4haの農地転用の国協議は廃止②4ha超の農地転用は大臣協議の上、都道府県に移譲③大臣指定市町村にも都道府県同様の権限移譲 ― が盛り込まれた。
◎東京圏へ10万人の転入超過 ― 総務省
 総務省は2月5日、住民基本台帳人口移動を発表した。2014年の市町村間移動者数は490万人、都道府県間移動者数は225万人で、それぞれ11年、3年の連続減少。一方、東京圏は10万9,408人の転入超過となった。19年連続で、超過数も前年より1万2,884人増えた。名古屋圏は803人、大阪圏は1万1,722人の転出超過で、さらに、全ての道府県との間でも東京圏が転入超過だった。都道府県別にみると、転入超過は東京7万3,280人が最も多く、以下、埼玉1万4,909人、神奈川1万2,855人など7都県で転入超過。逆に、北海道の8,942人を筆頭に、静岡7,240人、兵庫7,092人など40道府県で転出超過となっている。市町村別にみると、転入超過は407団体(23.7%)で、76.3%の1,311団体で転出超過となっている。
 これを受けて、石破茂地方創生担当相は2月6日の閣議後会見で「東京への流入が増大する傾向にある。危機感をもって対応しなければならない」と述べた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)