地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年4月中央の動き


中央の動き


◎人口減少社会の地方行政など審議項目決定 ― 地制調
 第31次地方制度調査会は3月2日の総会で、審議項目に①人口減少社会に対応する地方行政体制のあり方②議会制度や監査制度等の自治体ガバナンスのあり方 ― を決めた。4月3日から専門小委員会で詳細な審議に入った。人口減少関係では、市町村間の広域連携や大都市圏から地方圏への人口移動・地方圏域での定住促進等のために必要な地方行政体制のあり方など。ガバナンス関係では、議会の監視機能の役割や監査の独立性・専門性の発揮、住民訴訟等による行政チェックと長の責任のあり方などを挙げた。
 総会では、自民党委員から「将来、道州制議論も避けて通れない」などの意見が相次ぎ、町村側委員が「道州制で人口が増えるわけではない」と反論する場面もあった。なお、自民党の道州制推進本部は4月3日の役員会で「道州制推進基本法案」の扱いを議論したが、今国会での法案提出は慎重にする方針。


◎自治体の人事評価制度で報告 ― 総務省
 総務省の地方公共団体における人事評価制度研究会は3月17日、人事評価制度の実施要領などを盛り込んだ報告書を発表した。同制度は、「能力・実績に基づく人事管理の徹底」のため昨年の改正地方公務員法に盛り込まれたもので、2016年4月から施行される。
 人事評価の「実施規定」では、評価者や自己申告・面談手続等を例示。「評価記録書」では、国の「標語付与方式」と先進団体の「数値化方式」の2通りを示した。「実施要領」では、実際の人事評価を行う際の手引きとして目標の設定方法や面談上の留意点、評価記録書の記入要領などを例示した。さらに、「留意点」として、昇任等は人事評価結果を基本に運用、昇給も国の分布率(課長補佐以下はAは5%など)の範囲内でメリハリを付けた昇給が必要、評価結果の最下位職員の分限対象の基準も設けるなどとした。なお、同制度の準備状況調査(15年1月現在)によると、「規定」は整備済みが都道府県70%、指定都市80%と高いが、市町村は33%と遅れている。
◎減災7項目を初設定 ― 国連防災世界会議
 仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議は3月18日、防災対策の行動指針「仙台防災枠組み」を採択し閉幕した。新指針は、国・地方の優先行動として①災害リスクを管理する制度強化②強靱化に向けた防災投資③事前防災の強化とより良い復興 ― などに取り組むとした。また、「期待される成果目標」に、2030年までに被災者割合や病院・学校など重要インフラの損害を実質的に減らすなどの7指標を設定した。
 一方、政府は東日本大震災の集中復興期間が終わる16年度以降について今年夏にも新たな枠組みを示す。また、3月24日の閣議で災害対策基本法・廃棄物処理法改正案を決めた。巨大災害で大量に発生するがれきなどの災害廃棄物を国が市町村に変わって処理できるようにする。なお、3月30日付けで復興庁の次官に岡本全勝統括官(総務省出身)が就任した。
◎2015年度の分権提案募集を開始 ― 政府
 政府の地方分権改革有識者会議は3月19日、2015年度も地方からの提案募集を実施するなどの対応方針を決めた。提案事項の準備・検討充実のため、提案自治体に事前相談を義務付けた。このため募集を前倒し、3月23日から始めた。締切りは6月10日まで。内閣府では、同提案を受けて関係府省と折衝、年末にも対応方針を閣議決定する。15年度の募集では、地方創生の本格展開を踏まえ、地方創生に関する提案を重点事項として取り扱う。このほか、最近の見直し決定でその検証期間が経過していないもの等は支障事例が具体的に示された段階で各省調整を始める、補助要綱等の規制緩和の提案は予算編成後に回答をまとめるなど事務手続きの一部も見直した。
◎地方創生特区に3地域を選定 ― 政府
 政府の国家戦略特区諮問会議は3月19日、地方創生特区の第一弾として秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3団体を選定した。政府は昨年、国家戦略特区に6か所を選定したが、景気回復が遅れ気味の地方を活性化するため新たに選定した。年内に第二弾を決める。
 仙北市の「農林・医療ツーリズム」では、国有林野の民間開放や耕作放棄地の再生、温泉等の観光地で外国人医師を受け入れる。仙台市の「女性活躍・社会起業」では、ソーシャルイノベーション推進のため、開業手続きの迅速化や地域限定の保育士試験実施・都市公園内での保育所設置などを行う。愛知県の「産業の担い手育成」では、公立学校教育で産業人育成や外国人を含めた雇用環境の整備、先進医療の拡大や成長産業・先端技術の中枢拠点形成などを進める。
◎農地転用の移譲など分権一括法案を決定 ― 政府
 政府は、3月20日の閣議で第5次地方分権一括法案を決めた。2014年度に創設した「提案募集方式」の地方提案を受けて政府が1月に決めた「対応方針」に盛り込まれた権限移譲等の19法律を一括改正するもの。
 農地転用では、2~4haの農地転用の国協議を廃止するとともに、4ha超の農地転用も国との協議を付した上で都道府県に移譲。農水大臣が指定する「指定市町村」にも都道府県と同様の権限を移譲する。併せて、国と地方による新たな農地の総量確保の仕組みも構築する。また、権限移譲では麻薬小売業者間の譲渡許可や、特定新規中小企業者への投資確認、事業承継支援措置の認定などを都道府県に、指定都市立特別支援学校の設置認可、火薬類の製造許可などを都道府県から指定都市に移譲する。このほか、義務付け・枠付け見直しで、保育所型認定こども園の認定有効期間を廃止するほか、特定農山村の基盤整備計画・市町村の建築主事の設置の「知事同意協議」を「協議」に見直す。
◎市町村の地方創生支援へ職員派遣 ― 政府
 政府は3月20日、地方創生に取り組む小規模市町村を支援するため国家公務員などを派遣する「地方創生人材派遣制度」の対象に、北海道ニセコ町や沖縄県石垣市など38道府県・69市町村を決めた。派遣するのは、国交省・総務省各8人や農水省7人、経産省4人などのほか、大学15人、民間12人。4月から2年間、副市町村長や地方創生担当部長などの補佐役として地域づくりを支援する。16年度以降も新たな派遣を募集する。なお、政府は2月27日、地方創生に関する自治体からの問い合わせに一元的に対応する「地方創生コンシェルジュ」に、農水省161人、国交省154人、経産省123人など17府省の871人を選任した。
◎少子化社会対策大綱を決定 ― 政府
 政府は3月20日、「少子化社会対策大綱」を閣議決定した。今後5年間を「集中取組期間」と位置付け、子育て支援では、待機児童の2017年度解消や、保育の受け皿の量的拡充(17年度の認可保育所定員267万人)、保育士等の処遇改善による質向上や地域子育て支援拠点、一次預かり、多様な保育等を充実。放課後児童クラブも待機児童解消へ19年度末に122万人整備するなどの数値目標を示した。このほか、自治体や商工会議所・企業等が行っている結婚支援事業を充実するため自治体の新たな取組を支援する。また、多子世帯には保育料無償化の対象拡大や保育所優先利用、「子育て支援パスポート事業」での多子世帯への支援を充実する。さらに、自治体と民間団体・企業が連携するプラットフォームの構築・強化を進めるなど、総合的な子育て対策を実施する市町村を70%以上(14年末・14%)とするなどの目標も掲げた。
◎小さな拠点形成へ特例 ― 地域再生法改正案
 政府は3月24日の閣議で、自治体が地域再生計画(総理大臣認定)に地域住民と協議して「小さな拠点づくりの将来ビジョン」を作成することなどを柱とした地域再生法改正法案を決めた。
 具体的には、市町村が地域再生土地利用計画に集約する施設として①生活サービス施設(診療所、保育所、公民館、商店、ガソリンスタンド等)②就業機会の創設施設(地場産品の加工・販売所、観光案内所等) ― を設定、届出や勧告・斡旋などにより立地を誘導する。このため、農地転用許可や開発許可に特例を与える。また、農用地等保全利用区域を設定し地域ブランド作物栽培を援助する。併せて、集落と地域再生拠点を結ぶネットワーク確保のため、市町村の地域再生計画に自家用有償旅客運送者が集落生活圏で行う事業を位置付けるとともに、地域住民の運送の際に少量の貨物運送も可能にする。このほか、税制特例で地方にある企業の本社機能の強化を支援する。
◎高齢者移住構想を検討、移住ガーデンも開設 ― 政府
 政府は3月25日、高齢者が地方に移住し自立した社会生活を継続的に営める構想の具体化に向け「日本版CCRC構想有識者会議」を発足させた。住まいや医療だけでなく、生涯学習やボランティアを楽しみながら生活できる高齢者向け居住環境を創設する。大都市からの地方移住と地域の活性化が狙い。米国ですでに2千カ所整備されている。今夏にも中間報告をまとめ、2016年度からモデル事業の展開を目指す。このほか、政府は都内にある17府省の政府機関や全国250の政府所管研究機関等を地方移転するため地方側から提案募集を始めた。来年3月にも移転機関を決める。
 また、総務省は3月25日、地方への居住・就労・生活支援など移住関連情報の提供や相談の一元的な窓口として「移住・交流情報ガーデン」を東京駅近くに開設した。同省は併せて、地方移住に関連する関係省庁・自治体の情報をワンストップで検索できるポータルサイト「全国移住ナビ」も稼働させた。
◎地域組織の実態・小さな拠点で報告書 ― 総務省
 総務省は3月27日、「暮らしを支える地域運営組織」「小さな拠点形成に向けた新しい『よろずや』づくり」の報告書をまとめた。地域の人々が中心に生活機能を支える地域運営組織の活動確保や中山間地域での日常的な店舗の確保方策などを提言した。
 地域運営組織は、全国4分の1の市町村に1,600超あり、高齢者交流や見守り・買い物支援などを実施。8割超の市町村が必要性を認識しているが、約7割が任意団体で、財政基盤が脆弱・人材不足などが課題。このため、NPOなどの法人化や、「民・共・公」領域からの資金獲得による財政基盤の強化、地域内外の人材活用を提案した。また、中山間地域では、人口減少で毎日の買い物の商業機能が縮小。このため「小さな拠点」形成が求められる地域に「よろずや」の整備を提案した。従来の「雑貨屋」ではなく、中山間地域でも出展可能なボランタリーチェーンなど民間事業者の活用や、コミュニティビジネスとして地域住民が支える持続可能な店舗づくりを進めるよう求めた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)