月刊『自治総研』
2015年5月中央の動き
中央の動き |
◎全国都市の特色施策をネット公表 ― 全国市議長会 ◎6月に地方創生新型交付金など基本方針 ― 政府 政府は4月3日、まち・ひと・しごと創生本部を開いた。席上、安倍晋三首相は、「6月に『まち・ひと・しごと創生基本方針』を取りまとめ、今後の取組方針を示す」「(平成)28年度からの『新型交付金』を検討し基本方針に盛り込む」「首都圏からの地方への移住促進方策を検討する」よう指示した。また、21日から地方版総合戦略の策定の参考となる「ビッグデータ」の提供を始めた。 新型交付金は、地方側の「自由度の高い交付金」創設の要請を受けた形で2014年度補正予算に4,200億円計上されたが、各自治体が15年度中に「地方版総合戦略」を策定することを踏まえ、16年度から本格的な新型交付金を創設、地方の事業を全面支援する。一方、4月20日の全国知事会議では、自由度の高い新型交付金を求める意見とともに、国の財政が厳しい中「新型交付金が地方交付税と振替えられることが心配」との懸念の声も多く出た。石破茂地方創生担当相は、4月17日の閣議後会見で、新型交付金について「量と質」が課題だとしたが、財源については「(必要性を示して)概算要求・暮れの予算編成に向かっていきたい」と述べるにとどめた。 ◎少子化対策の国と自治体責務で報告案 ― 市長会 全国市長会の研究会は4月8日、少子化対策・子育て支援に関する研究会報告書と提言の案を了承した。6月の総会で正式決定する。報告・提言は、国に対し少子化に立ち向かう骨太の指針を示すとともに、医療・教育はナショナルミニマムとして国が責任を持つべきだと指摘。併せて、子どもたちが健全な将来の夢を持つための「ライフ・デザイン教育」の推進や役割に応じた国・地方間の財源配分などを求めた。同時に、都市自治体の役割として、支援サービスを「みえる化」するとともに、支援サービスのワンストップ化、出生率が高い地域の特徴である「地縁型・ネットワーク型地域力」の醸成促進にも取り組むべきだとした。 総務省が4月17日発表した人口推計(2014年10月1日現在)によると、総人口は1億2,708万3千人で、前年に比べ21万5千人(0.17%)減少。うち、65歳以上は3,300万人で、前年より110万2千人増加。一方、年少人口は1,623万3千人で同15万7千人減少。高齢者が年少人口の2倍を初めて超えた。なお、政府は4月1日、省庁の子ども・子育て支援等を一本化する「子ども・子育て本部」を発足させた。 ◎財政再建へインセンティブ改革を提案 ― 諮問会議 政府の経済財政諮問会議は4月16日、政府が夏にまとめる財政健全化計画に向けて、民間議員が「インセンティブ改革」を提案した。「頑張る者の取組を促す仕組みへシフト」すべきだとし、社会保障関係では国保支援金の傾斜配賦、重症化予防に取り組むなどの医療費抑制策などを提案。地方財政では、「行財政改革が遅れている自治体で一人当たり行政コストが高くなっている」とし、行政効率を見える化して行財政改革が遅れている自治体の取り組みを促すべきだとした。そのため、「地方交付税の単位費用を五年後を目途に優良事例に合わせることで自治体全体の取組を加速(横展開)」すべきだとした。これを受けて、安倍晋三首相は「効率的で質の高い公共サービスを実現するよう、国民・企業・自治体等の意識・行動の変化を促す仕組み構築へ議論を進めてほしい」と指示した。 一方、全国知事会は4月20日、2016年度の地方財政の論点を議論。社会保障関係費の自然増分など必要な地方一般財源総額の確保や地方創生の地方財政計画への計上と自由度の高い新たな交付金の創設を求める方針を打ち出したが、「地方創生交付金は増やすが、一般財源総額を大幅に減らすことになりかねない」との懸念の声も出た。このほか、財務省の財政制度等審議会や総務省の地方財政審議会、厚労省の「保険医療2035策定懇談会」、自民党の財政再建特命委員会も、財政健全化計画に向けて6月までに意見等をまとめる。 ◎農地転用許可権限の移譲で申合せ ― 知事会等 全国知事会は4月20日、地方分権一括法に盛り込まれた農地転用許可権限の地方移譲について「法令の規準に従った適正な運用を徹底する」などとする申合せを了承した。同様の申合せは、全国市長会と全国町村会も決めている。同一括法で4㌶超の農地転用が都道府県・指定市町村に移譲されるが、自民党を中心に「農地が守れない」などの批判が強いため、3団体が申合せを決めたもの。申合せは、併せて転用事務手続きの迅速化を図り地域実情に応じたまちづくりを進めるとした。また、農地の総量確保では、国の目標面積案と地方の意見が異なった場合は、国・都道府県・市町村の協議の場で議論し納得できる点を見いだすとした。 なお、政府が4月3日に閣議決定した農協改革関連法案には都道府県知事等の農地転用許可に際して30アール超は新たに設置する都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見を聞かなければならないとする農地法改正案も盛り込まれた。これに対し、4月7日の全国市長会の会議で、市長から「寝耳に水の話だ」などの批判が相次ぎ、内閣府の満田誉地方分権改革推進室次長は、農協改革の関連で「今回実現できるものとしては精一杯のところだ」との認識を示した。 ◎マイナンバー制度で緊急要請 ― 全国知事会 全国知事会は4月21日、マイナンバーの付番・通知が今年10月に迫る中、国民理解が不十分だとして円滑導入に向けた緊急要請をまとめ政府に提出した。要請は、制度の概要やメリットに加え「個人番号カード」の手続きや注意点などを早急に周知・広報するよう求めた。併せて、行政機関をかたった不正勧誘や悪質商法、フィッシング詐欺などの恐れもあるとし、注意喚起・情報提供や監視体制の確保なども要請。さらに、全自治体・民間事業者にも説明会や研修会の開催・マニュアルの作成を求めた。 政府は3月の閣議でマイナンバー制度の付番・通知を10月1日、来年1月から本格導入することを決めたが、今年1月の内閣府調査では、同制度を知らない人が72%にのぼったほか、民間調査でもシステム対応が完了した企業は18%などと、周知・対応が遅れている。 ◎連携中枢都市圏の関係省支援策を発表 ― 総務省 総務省は4月24日、連携中枢都市圏構想の関係省支援策をまとめた。同圏域は、地方創生の「コンパクト化とネットワーク化」に向けて総務省が進めていた地方中枢拠点都市圏を関係省の構想と統一したもの。同省は、今年1月に連携中枢都市圏の財政措置を発表。4月10日から新たな広域連携促進事業の公募も始めた。 関係省の支援策では、医療・教育等の高度公共アプリ導入の基盤整備(総務省・4億円)、実践型地域雇用創出(厚労省・58億円)、保育所等の広域入所(同)、食のモデル地域育成(農水省・4億円)、都市農村共生・対流総合対策交付金(同・20億円)、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金(同・61億円)、地域に根ざした中核企業候補・周辺企業群の創出・育成(経産省・5億円)、地域公共交通確保維持改善(国交省・290億円)、社会資本整備総合交付金(同・9,018億円)などが盛り込まれている。 ◎投票率が低下、無投票当選は大幅増 ― 統一地方選 第18回統一地方選挙が4月12・24日、237首長、747議会で行われた。統一率は27.5%。10道県知事選では、与野党対立となった北海道・大分県で自民党が勝利したほか、残る8県でも自民支援が全員当選。5政令市長選では札幌市で民主党など野党支援の新人が当選、133市区長では、大分・京田辺両市で自民系が、世田谷区・瀬戸市では民主系がそれぞれ勝利した。41道府県議員では、自民が1,153人と改選議席の過半数を獲得、民主は264人に大幅減少。共産党は111人に増やし、「空白県」も解消した。 投票率は、知事・政令市長選では、「対決型」の北海道・大分県と札幌市の首長選で前回を上回ったが、他はいずれも低下。福岡県(38.85%)をはじめ神奈川県、福井県、三重県、徳島県、相模原市、静岡市、広島市では50%を割った。市長も50.53%(市議48.62%)、区長44.11%(区議42.81%)、町村長69.07%(町村議64.34%)といずれも前回を下回った。さらに、27市長、53町村長が無投票当選したほか、県議では大阪・山口を除く39道県で501人、市議は14市246人、町村議は89町村930人が無投票当選した。一方、女性が道府県議で207人、市区町村で1,774人と大幅に増えた。なお、高市早苗総務相は4月28日の記者会見で投票環境の整備に取り組む意向を明らかにした。 ◎地方議会のあり方で報告 ― 総務省・全国町村議長会 総務省の地方議会研究会は4月30日、報告書をまとめた。地方分権の推進に対応した議会機能の発揮策などを整理したもの。政策形成機能では、大規模団体は会派を通じた政策形成が必要だとする一方、小規模団体では政策形成・監視機能について住民参加による補完も考えられるとした。また、事務局職員の専門性確保や法制担当課など事務局の共同設置、議員の専門性を高めるため全国研修機関などの積極的な活用が期待されるとした。なお、議員のなり手確保や議員に求められる役割・資質、選挙制度のあり方などは論点などを整理するにとどめた。 また、全国町村議会議長会は4月3日、「地方創生に向けた町村議会の対応」と題する報告をまとめた。少ない議員定数・議員報酬などが議会力をダウンさせているとし、この「負の連鎖」から脱却するため安心して議会・議員活動に専念できる処遇と身分保証の必要性を強調。併せて、議会事務局の充実や専門的知見、参考人・公聴会制度の活用なども提案した。さらに、地域の声を集約し、人口減少の防止策や地域の維持発展策など地方創生では「地方版総合戦略」の策定段階から関与し責任の一端を担うべきだとした。
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(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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