地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年6月中央の動き


中央の動き


◎新教育委員会制度の移行等で調査 ― 文科省
 文科省は5月1日、新教育委員会制度への移行と教育委員会の現状調査を発表した。教育委員長と教育長の一本化や総合教育会議の設置など改正地方教育行政法が今年4月1日から施行されたことを踏まえ、全自治体を対象に調査した。
 新教育長を任命したのは、都道府県・政令市は19団体(28%)で、47団体は経過措置で旧教育長が在職。市町村も新教育長の任命は275団体(16%)で、1,422団体は旧教育長が在職している。新教育長の任命は8~9割が旧教育長の辞任を受けて新たに任命した。また、新教育長は都道府県・政令市、市町村ともに教育行政経験者が最も多かった。なお、都道府県・政令市では約半数が「議会で候補者が所信表明」、市町村では約半数が議会議決のみで決めている。
 現状調査では、教育委員会会議の開催(2013年度平均)は、都道府県・政令市が22.9回、市町村が15.6回だが、地域住民の意向反映等のため、夕方以降に開催(都道府県・政令市15%、市町村15%)、移動教育委員会の開催(同16%、21%)、情報のホームページ掲載(同97%、40%)などの工夫も行われている。また、教育委員会と首長との意見交換会(同43%、63%)なども行われている。


◎交付税の成果主義重視など提言へ ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は、5月12日から政府が6月末にまとめる財政健全化計画に向けた議論を開始。5月19日の会合では、民間議員が公的分野の産業化、インセンティブ改革、見える化などを提案した。
 うち、地方財政では、地方交付税制度を「財源保障機能重視から成果主義重視」に転換すべきだとし、このため自治体間の行政コスト比較を徹底して単位費用を低コスト団体に合わせる仕組み導入を提案。リーマンショック後の特別措置の早期解消や、「交付税の法定率の見直し検討」「留保財源率(現状25%)を20%に引き下げ」も提案した。また、地方創生の新型交付金も「地方交付税の見直し、各府省補助金の縮減等で財源を確保」するなど他財源との「振替え」を求めた。このほか、人口20万以上の自治体にPPP・PFI導入原則化も提案した。これに対し、高市早苗総務相は6月1日の諮問会議で、地方も国と合わせて歳出改革に取り組むとし、歳出効率化団体を交付税算定に反映させるほか行政サービスの民間委託を推進するとした。同時に、一般財源総額確保の必要性も訴えた。
◎政府の財政再建計画反映へ中間整理 ― 自民党特委
 自民党の財政再建に関する特命委員会は5月13日、「中間整理」をまとめるとともに、14日から各論に向け地方3団体などとの意見交換を開始した。6月中に報告をまとめ、政府の財政健全化計画に反映させる。
 中間整理は、政府の2020年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を堅持するとした上で、「社会保障の高齢化分を上回る増加を効率化対象」とすべきだとした。毎年度1兆円増加する社会保障費のうち高齢化に伴う自然増5,000億円を除く分を効率化対象とする。地方財政についても「国と歩調をあわせて歳出改革が必要であり、歳出抑制の具体的規律が不可欠」とした。また、「歳出額の目標設定も必要」とする一方、毎年度、歳出抑制額を割り当てる機械的目標であってはならないとも指摘した。これを受けて、全国知事会は14日の意見聴取で、地方歳出は大半が義務付け経費であり行政コスト比較による一律削減は困難だと指摘。併せて、「アベノミクスの成果を地域に行き渡らせる」ため地方創生と景気回復に取り組む地方への支援を要請した。全国市長会・全国町村会も、社会保障費の増加をこの12年間は職員14万人・総人件費2.2兆円削減で対応してきたが「さらなる削減は困難だ」と訴えた。
◎日本版CCRC構想で自治体意向調査 ― 政府
 政府は5月14日、日本版CCRC構想有識者会議を開き、同構想に対する自治体の意向調査結果を示した。「推進したい意向がある」とした自治体が202団体(11.3%)あり、75団体は「地方版総合戦略」に盛り込む予定だと回答した。また、今後の予定では「既に取組を開始」が33団体あり、29団体は「今年度中に取組を開始予定」としている。今後の推進では、「コーディネート人材の育成・確保」などの財政支援を求める意見が多かった。取組意向のある自治体は北海道 (函館市、知内町など31団体)、長野県(松本市、南牧村など14団体)、熊本県(熊本市、長洲町など9団体)、鹿児島県(姶良市、十島村など8団体)で多い。政府は2016年度からの同構想創設を目指し、有識者会議が今年夏にも中間報告をまとめる。
 また、政府は5月18日、地方移住の機運盛り上げのため経済界や自治体などと「国民会議」を発足させ、「行動宣言」をまとめた。同日、「ふるさと投資」連絡会議も開いた。内閣府調査によると、金融機関の約7割が既に自治体と接触しているという。
◎議会欠席理由に「出産」追加 ― 市・町村両議長会
 全国市議会議長会と全国町村議会議長会は5月26、28日、標準会議規則の会議欠席規定に「出産のため出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる」との規定を追加した。これを受けて、各市・町村議会でも同様の規定改定が行われる。同規定追加については、有村治子男女共同参画担当相が5月中に両議長会の会長に「女性議員が活躍できる環境を整備し議会の活性化」に向けた検討を要請。両議長会とも男女共同参画の一環として標準会規改定を決めた。
 議員の「出産」欠席については、橋本聖子参院議員の出産を契機に、参議院が2000年3月に、また衆議院も翌01年3月に、それぞれ公務・疾病に次いで出産も「一時的な事故」の例として規則を改定した。これを受けて、全国都道府県議会議長会も、2002年の規則改定で欠席理由に「公務、疾病、出産その他の事故」を追加。これで、国会・地方議会の全議会で「出産」を理由にした会議欠席が可能となった。
◎自由度高い新型交付金など要請 ― 地方六団体
 石破茂地方創生担当相と地方六団体の第3回意見交換会が5月26日、開催された。席上、石破担当相は新型交付金について「何のためのものかを確立が先で、各自治体が活用してこんなに良くなるというコンセプトをつくることが必要」と述べた。これを受けて、山田啓二全国知事会会長(京都府知事)は「地方創生が失敗し、地方が衰退すれば日本の再生はない」として国・地方が共に頑張る必要性を強調した。
 また、地方六団体は「地方創生のさらなる推進に向けて」と題する提言を提出した。「地方六団体は、地方創生を日本創生につなげる決意・覚悟で取り組む」とした上で、今年度創設された「まち・ひと・しごと 創生事業費」の拡充と一般財源の総額確保を要請。併せて、新型交付金について単なる既存補助金の振替えでなく包括的なものにするとともに、自由度の高い弾力的な交付金とすること、さらに規模は2014年度補正 予算で創設された地方創生先行型交付金を大幅に上回る額を確保するよう求めた。併せて、国も結婚や出産・子育てを後押しする経済的支援制度の創設や多様な産業の創出・育成や雇用マッチングのためのハロー ワークの地方移管なども要請した。
◎大規模災害時のがれき処理で指針案 ― 環境省
 環境省は5月27日の第1回大規模災害時の災害廃棄物対策検討会に、廃棄物対策行動指針(案)を示した。大規模災害発生時でも災害廃棄物を円滑・迅速に処理するため対応方針(行動指針)を整理するもので、近く、指針をまとめる。
 指針案は、大規模災害では「平時とは次元の異なる対応が必要」だとし、国(地方環境事務所)が中心になり地域ブロック単位(全国8か所)に関係者が参画する協議会を設置。協定の締結や、災害廃棄物対策の行動計画を策定する。同計画には、災害シナリオの設定と災害廃棄物の発生量推計のほか、既存施設の活用方針、地域ブロック内の最終処分場の活用方針と他地域ブロックとの連携方針、さらに地域ブロック内の有識者や建設業協会・解体業組合など民間事業団体と連携したネットワーク構築と、各関係者の役割と具体的な対応内容などを盛り込む。このほか、発災後の処理指針に盛り込む事項では、「自治体で処理困難な場合は、国により代行処理を行う」ことも掲げた。
◎許認可等の統一把握結果を発表 ― 総務省
 総務省は5月29日、許認可等の統一把握結果を発表した。国の事務として行う許可・認可・届出などの件数(根拠法令の条項数)を2014年4月1日現在で調べたもの。総件数は1万4,818で、前年(13年)の1万4,407より411増えた。中央省庁再編後の推移をみると、02年の1万621が、05年1万2,376、08年1万3,461、11年1万4,249などと一貫して増えている。
 許認可等を府省別にみると、国交省の2,641をトップに、厚労省2,420、金融庁2,283、経産省2,176、農水省1,630などで多い。また、許認可等の「強さ」等でみると、届出・提出など「弱い規制」が7,536で全体の50.9%を占め、許可や認可など「強い規制」が4,760(32.1%)、認定・検査など「中間の規制」が1,787(12.1%)などとなっている。なお、「強い規制」は02年が37.5%、11年は33.1%などと減少傾向にある。また、根拠法令別にみると、法律に規定されているものが1万461で全体の70.6%を占め、次いで省令が3,415(23.0%)などとなっている。
◎地域の産業・雇用でチャート等発表 ― 総務省
 総務省は5月29日、「地域の産業・雇用創造チャート ― 統計で見る稼ぐ力と雇用力」を発表した。併せて、地域の基盤産業強化・創出を検討する都道府県の募集を始めた。地域の産業・雇用創出チャートは、公表データを加工して、全都道府県・市町村ごとに「飲食店」「介護事業」「繊維工業」など各産業の「稼ぐ力」と「雇用力」を縦横軸にグラフ化したもの。高市早苗総務相は、同日の閣議後会見で「各都道府県・市町村で何が基盤産業であるかを理解いただき、今後の人口対策にも使っていただけるもの」と紹介した。基盤産業の検討募集は、地域特性に応じた基盤産業の強化・創出を目的に基盤産業のポテンシャルやボトルネック等を調査・分析・整理し産業政策モデルを構築するため5団体程度を募集(6月18日まで)する。
 また、5月26日に「地域経済好循環拡大推進会議」を開いた。地域経済の好循環を拡大して強い地域経済をつくるため、国や自治体(地方3団体)、地域産業界、地域金融機関等が一同に集い、産・学・金・官地域ラウンドテーブル関係事業や市町村の創業支援事業計画などについて情報交換した。また、5月28日(金沢市)から7月にブロックごとの連絡会を開催する。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)