地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年7月中央の動き


中央の動き


◎首都圏の高齢化で地方移住提言 ― 日本創生会議
 日本創生会議は6月4日、「東京圏高齢化危機回避戦略」を発表した。今後、東京圏では高齢化が深刻化するとし、医療介護体制が整っている地方圏への移住を提言した。「地方消滅」の第二弾。
 東京圏では、団塊世代の高齢化で、後期高齢者は今後10年間で175万人増加。介護需要も全国平均32%増 に対し東京圏では50%増と高い。このため、25年以降は東京圏全体で深刻な介護施設不足が生じると警告。さらに、介護人材も東京圏で80~90万人の増員が必要だが、東京圏への人材流入を高めれば「地方消滅」を加速するとも指摘した。このため、大規模団地の再生・空き家活用など高齢者の集住化の促進のほか、地方移住の環境を整えるべきだとし、日本版CCRC構想の推進などを提言。その参考に、医療介護体制が整っている圏域として函館市、松江市、鹿児島市など41地域を紹介した。


◎国土形成計画の最終案まとめる ― 国土審議会
 国交省の国土審議会は6月15日、今後10年間の国土づくりの方向性を示す「国土形成計画」と土地利用の目標を示す「国土利用計画」の報告案をまとめた。近く閣議決定する。
 国土形成計画では、急激な人口減少・少子化・高齢化に向けた国土づくりの目標に「対流促進型国土」の形成を打ち出した。具体的には、地方都市圏では、医療・介護、福祉、商業等の都市機能を中心部に集約する「コンパクトシティ」を、集落地域では生活サービス機能や地域活動を行う場などを歩いて動ける範囲内に集め、周辺集落とコミュニティバス等でつなぐ「小さな拠点」を形成する。一方、大都市圏では大都市のリノベーションを推進し機能の集積・集約化を推進するとともに、リニア中央新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成も打ち出した。住宅地の目標規模(2025年)は116万㌶と12年と同規模に据え置いた。
◎分権時代の議会のあり方で提言 ― 全国市議長会
 全国市議会議長会の「議会のあり方研究会」(中邨章座長)は6月17日、「地方分権時代における議事機関としての役割を果たす議会のあり方」と題する報告・提言をまとめた。
 提言は、「より市民に身近な議会にする」ため、ITを活用した情報の共有や、公聴会・参考人制度・議会モニターなど多様な市民参画を求めるとともに、請願・陳情も親しみのある「住民提案」「住民要望」に名称変更するよう提案。議会報告会も活用すべきだとした。また、通年議会の導入や大学研究者・弁護士など外部専門家の活用も提案した。一方、「議員の処遇」では、日本の地方行政の窓口は諸外国に比べ幅広いと強調し、監視する議会も一定規模の定数が必用だとした。議員報酬も「重責を担う応分の報酬が支給されるべき」だとし、議員を職業にできるレベルにまで引き上げる必要があるとした。「議会改革を推進する」ため、議長の短期交代の是正も求めた。
◎骨太方針や地方創生めぐり協議 ― 国・地方協議の場
 今年度初の「国と地方の協議の場」が6月17日、首相官邸で開かれ、骨太の方針や地方創生、地方分権改革をめぐり政府と地方六団体代表が意見交換した。
 冒頭、安倍晋三首相が「本年は地方創生元年。意欲あふれる地方の先駆的優良な取組支援のため来年度予算で新型交付金を創設する」と挨拶。山田啓二全国知事会長は「国は、地方交付税削減など冷や水をあびせる」ことのないよう地方財政への配慮を要請した。次いで、地方側は、地方歳出改革で「一律の行政比較はなじまない」と牽制。また、消費税の軽減税率で慎重な検討を求めた。地方創生では、地方六団体も「地方創生を日本創生につなげる決意で取り組む」との決意を表明。「まち・ひと・しごと創生事業費」の拡充を求めるとともに、新型交付金について、単なる既存補助金の振替えでない包括的なものとし、5年間を見据えた継続的な交付金とするよう要請した。
 なお、6月16日には「総務大臣・地方六団体会合」が開かれ、同様のテーマで意見交換が行われた。
◎人口減少社会の行政体制で論点整理案 ― 地制調
 第31次地方制度調査会は6月22日、人口減少社会に対応する地方行政体制のあり方についての「総括的な論点整理」をまとめた。次回から「議会制度・監査制度等の自治体ガバナンスのあり方」の審議に入る。来年5月までに答申する。
 論点整理は、今後も進む人口減少社会でも行政サービスの持続可能な提供の確保が喫緊の課題だと指摘。このため、連携中枢都市圏などの取組を推進するとともに、広域連携が困難な地域では都道府県の補完を提案した。同補完は市町村の申出により都道府県と協議するとし、その方法では連携協約や事務の代替執行、共同処理を活用、対象事務では消防や住基・戸籍等は慎重な検討が必要だとした。また、外部資源の活用では窓口業務など公権力行使が含まれる分野で地方独立行政法人の活用を提案した。このほか、三大都市圏では地方圏を上回る高齢化が進むとし、水平的・相互補完的・双務的な広域連携の必要性を強調するとともに、二地域居住など東京圏から地方圏への移住を進める方策も提案した。
◎マイナンバー制度の利用拡大 ― 政府・日本再興戦略
 政府は6月30日、マイナンバー制度の徹底利活用を盛り込んだ「日本再興戦略」改訂2015を閣議決定した。セキュリティ強化と歩調を合わせてマイナンバー利活用範囲を拡大する。具体的には、16年1月から国家公務員身分証との一体化を進めるほか、16年度中に個人番号カードを利用した住民票・印鑑証明・戸籍謄本等のコンビニ交付の人口6千万人超を目指す。さらに、17年度以降、年金・国税・地方税等の行政手続きを一括処理、医療費控除の申告手続の簡素化等のサービスを提供するなどとしている。
 なお、日本年金機構情報漏洩事件の発覚で、既に衆院を通過したマイナンバー法改正案が参議院でストップ。関係閣僚も年金分野での活用に慎重な姿勢を示したことから、全国知事会など地方3団体がそれぞれ、情報漏洩被害拡大防止策とともに来年1月からの導入などを緊急要請。また、総務省は6月24日、地方自治体情報セキュリティ対策緊急会議を開催。マイナンバー制度と自治体のセキュリティ対策などを説明した。
◎インセンティブ改革など骨太の方針決定 ― 政府
 政府は6月30日の閣議で「経済財政運営の基本方針2015」(骨太の方針)を閣議決定した。18年度までの「集中改革期間」の目標に「基礎的財政収支の対GDP比マイナス1%」を掲げるとともに、社会保障関係費の増加を過去3年間の増加(1.5兆円程度)を「目安」に抑制することも示した。
 歳出改革では、①公的サービスの産業化②インセンティブ改革③公共サービスのイノベーション ― を前面に打ち出し、地方財政では、地域の活性化と頑張る地方を支援する仕組みへの地方交付税制度の改革と、国・地方を通じた歳出効率化に取り組む。併せて、地方交付税の別枠加算・歳出特別枠も平時モードに切り換える。さらに、窓口業務等の民間委託の加速、公営企業の廃止・民営化なども盛り込んだ。このほか、社会保障では医療・介護提供体制の適正化など、社会資本整備では人口減少を踏まえた重点化、文教でも少子化を踏まえた予算の効率化・民間資金の導入促進などを盛り込んだ。なお、コスト比較で効率化を見える化し先進自治体の行政水準を交付税の単位費用に反映させる「トップランナー方式」について、総務省は取り組む方針を示しているが、自治体から批判の声も多い。
◎骨太方針に向け各審議会等が意見 ― 各省・自民党
 同「骨太の方針」策定に向け、各省審議会や自民党が6月中に相次いで意見等をまとめた。
 財務省の財政制度等審議会は1日の建議で、①地方一般財源総額はリーマンショック前の水準を目安に見直す②地方創生の新型交付金は既存の補助金の統廃合で財源確保③救急出動の有料化検討 ― などを提言。これに対し、総務省の地方財政審議会は9日の意見で①行政サービス提供のため一般財源総額を確保②地方交付税の財源保障機能は堅持、地方が工夫可能な歳出の算定は見直す③地方創生のため恒久財源を確保 ― すべきだとした。このほか、厚労省の保険医療2035策定懇談会は9日、35年の目指すべき医療・保険の姿を示した上で、新たな財源確保を関係者と議論・決定する仕組み導入を提言した。一方、自民党の財政再建特命委員会は16日、「不確実な税収増の議論や歳出抑制の先送り議論は政府・与党の責任放棄」だとし、後期高齢者の窓口負担のあり方見直しなどの具体策を挙げて「歳出額の目標設定」を明記した。
◎地方創生の基本方針2015を閣議決定 ― 政府
 政府は6月30日、「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を閣議決定した。「地方創生の深化」により「稼ぐ力」「地域の総合力」「民の智恵」を引き出し、ローカル・アベノミクスの実現を目指すとした。
 「地方のしごとづくり」では、地域企業の経営体制の改善・人材確保や、観光業強化のため日本版DMO(地域観光マネジメント機構)を育成する。「ひとの流れづくり」では、高齢者の地方移住を支援する日本版CCRC構想や、本社機能・政府関係機関の地方移転を進める。また、「結婚・出産・子育て」では、地域の先駆的・優良事例の横展開や「働き方改革」を進める。併せて、妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援を持続的に進める。「地域づくり」では、都市のコンパクト化と「小さな拠点」の形成のほか、東京圏での医療・介護問題への対応も盛り込んだ。さらに、「多様な支援」では、情報・人的支援に併せて、従来の「縦割り」事業を超えた財政支援を行う「新型交付金」を創設するとしたが、その具体的な制度設計や額などは年末の予算編成に先送りした。
◎地方の提案52件を重点審議へ ― 分権有識者会議
 政府の地方分権改革有識者会議は6月30日、2015年度の地方からの提案事項の審議を開始した。2年度目になる提案募集には83団体から334件の提案があった。会議では52件を重点事項として集中審議、年末にも対応方針を決定する。一方、全国知事会はハローワーク特区で意見を提出した。特区で地方移管の成果が検証されたとし、特区延長と実施箇所拡大を求めた。
 重点事項では、移住希望者が空き家で体験滞在できるよう旅館業の規制緩和(福井市等)、介護保険施設への転居高齢者の「住所地方特例」の適用拡大(鳥取県等)、認定こども園の認定権限の政令市への移譲(指定都市市長会)、公営住宅建替事業の現地建替要件の緩和(埼玉県等)などが提案されている。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)