地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年8月中央の動き


中央の動き


◎2015年の住基人口を発表 ― 総務省
 総務省は7月1日、2015年1月1日現在の住民基本台帳人口・人口動態を発表した。全国人口は1億2,822万6,483人で、前年より21万1,530人(0.16%)減少、6年連続の減少。うち、外国人住民は206万2,907人で、前年より5万9,528人(2.97%)増えた。14年の出生者数(日本人住民)は100万3,554人で調査開始(1979年)以降の最少に。逆に、死亡者は127万311人で最多となり、自然増減(同)は26万6,757人減と過去最大の減少となった。
 都道府県別では、東京が1,288万143人で最も多く、鳥取57万9,554人が最少。前年比では東京の7万2,516人(0.57%)増をトップに沖縄、埼玉、神奈川、愛知、千葉の6都県で増えた。減少では北海道の3万2,323人減が最も多く、減少率では秋田1.27%減が最も高かった。また、市区部人口は1億1,487万632人で、前年より15万4,091人(0.13%)減少。町村部人口は1,129万2,944人で11万6,967人(1.03%)減少した。このほか、人口2万人未満の市が歌志内市(3,823人)など19市、5万人超の町村は宮城県富谷町など3町。なお、14年中の出生者数10人未満が77団体あり、うち5団体は出生ゼロだった。


◎地方版総合戦略の策定状況を発表 ― 内閣府
 内閣府は7月3日、地方版総合戦略の策定状況を発表した。都道府県では10月までに36団体(76%)、12月までに4団体(9%)が策定を予定。市町村では10月までに766団体(44%)、12月までに351団体(20%)がそれぞれ予定。604団体(35%)は年度内の策定を予定している。なお、高知県・和歌山県と会津若松市など7市は策定済み。総合戦略の推進組織は、設置済みが都道府県では31団体(66%)だが、市町村では379団体(22%)で、1,006団体(58%)は準備中だった。さらに、設置団体のうち「産官学金労言」の全てが参画しているのは都道府県は23団体(74%)あったが、市町村では144団体(38%)にとどまっている。このばらつきについて石破茂担当相は同日の記者会見で「やはり危機感が乏しい。やらなくても国の支援が受けられるという意識がある」と不満を示した。
 また、同日開催した「日本版CCRC構想有識者会議」で、都市から高齢者を受け入れる「共同体」の名称を「生涯活躍のまち」とする方針を示した。
◎地方税収が増加、政府税調は所得税改革へ ― 政府
 総務省は7月9日、2014年度の地方税収入決算見込額を発表した。地方法人特別譲与税を含めた総額は38兆4,224億円で、前年度より1兆7,530億円(4.8%)増加した。5年連続の増収。景気回復に伴う企業業績の改善で、地方法人2税が5兆7,730億円、前年度比13.6%増加。個人住民税も12兆3,050億円、1.8%増加した。地方消費税も税率アップで3兆1,064億円、17.2%増加。固定資産税も8兆6,449億円、1.3%増に。なお、自動車取得税は税率引き下げで863億円、55.4%の大幅減となった。
 一方、政府の税制調査会は7月2日から所得税の抜本改革に着手した。政府が決定した「骨太の方針」で税体系全般にわたるオーバーホールを進めるとし、夫婦共働きの子育て世帯の支援などを明記したことを受けたもの。17日の総会では、経済社会の構造変化 ― 人口構造・家族の変化 ― について財務・総務両省が報告した。今秋にも中間とりまとめ、来夏に答申する。
◎首相が分権提案募集の実現を指示 ― 分権推進本部
 政府の地方分権改革推進本部は7月14日、第5次地方分権一括法の施行や今年度の地方分権改革提案募集の取組状況などを議論。安倍晋三首相は、提案募集について「『地方の発意による地方のための改革』となるよう、提案の最大限実現にむけ強力なリーダーシップの発揮」を各閣僚に指示した。
 なお、内閣府の地方分権改革推進室は7月1日から分権改革提案募集で地方から提案された334件について関係府省に検討を要請した。8月から提案募集検討専門部会等で集中調査を開始、関係府省からのヒアリングなどを経て12月に「対応方針」を閣議決定する。また、7月1日、ハローワークの国・地方一体的実施の提案の進捗状況を公表した。各自治体の提案内容に沿って事業が開始されたのが都道府県33件、市区町115件、共同提案1件など。都道府県では若者向け・中高年齢者向け支援や子育て、U・Iターン支援の一体的実施などが、市区町村では生活保護受給者等や障害者向け支援の一体的実施などが行われている。なお、全国知事会は一体的実施で効果が実証されているとしてハローワークの早期地方移管を求めている。
◎諮問会議で最低賃金引上げを指示 ― 安倍首相
 安倍晋三首相は7月23日開かれた経済財政諮問会議で、「政府として、最低賃金の大幅な引上げが可能となるよう、中小・小規模事業者の環境整備やサービス産業の生産性向上に全力を挙げる」と述べ、関係大臣に最低賃金引上げに向けた対応を指示した。
 同日の会議では、内閣府が資料を提示。その中で、経営者はデフレマインドで賃金引上げに消極的だが、デフレ脱却・経済再生の重大なハードルになりかねないとし、賃金が物価上昇をリードするため「政府が一定の役割を果たすことも重要」だとした。その上で、最低賃金の引上げ(10~20円)で約400万人の賃金が上昇すると総雇用者所得は400~900億円程度増加するとの試算も示した。なお、厚労省の中央最低賃金審議会は7月30日、引上げ幅の目安18円を答申した。
◎来年度の概算要求基準を決定 ― 政府
 政府は7月24日、2016年度予算の概算要求基準を閣議了解した。裁量的経費の要求は2015年度予算の9割とする一方、成長と財政再建を両立させるため約4兆円規模の特別枠「新しい日本のための優先課題推進枠」を設けた。また、社会保障関係は前年度予算額に6,700億円加算要求を認めるが、自然増は過去3年間の増加額(1.5兆円)を目安にする。地方交付税は「経済・財政再生計画」との整合性に留意し要求する。なお、経済財政諮問会議は7月23日、「経済・財政一体改革推進委員会」の設置を決めた。主要歳出分野ごとにKPIを設定、改革工程表を作成する。
 一方、総務省は同日、概算要求で留意すべき事項など地方財政措置・合計32件を各府省に申し入れた。共通事項では、地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減や自治体の財政負担増を伴う施策抑制など。個別事項では、地方創生の新型交付金について地方の予算編成に支障を来さないよう内容の早期明示や乳幼児医療費の国庫負担金減額措置の廃止などを要請した。
◎2015年度の普通交付税大綱を決定 ― 総務省
 総務省は7月24日、2015年度の普通交付税大綱を決定した。総額は前年度比0.8%減の15兆7,495億円で、内訳は道府県分が8兆3,705億円(1.0%減)、市町村分が7兆3,790億円(0.5%減)。また、不交付団体は前年度より5団体増えて60団体となった。前年度、不交付団体だった群馬県上野村、君津市、神奈川県愛川町、御前崎市、滋賀県竜王町が交付団体に移り、交付団体だった太田市、群馬県大泉町、小金井市、国分寺市、羽村市、東京都瑞穂町、御殿場市、裾野市、湖西市、日進市の10団体が不交付団体となった。
 算定改定では、地方財政計画に計上した「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)に対応し、既存の「地域の元気創造事業費」(3,900億円)等に加え、新たに「人口減少等特別対策事業費」(6,000億円)を創設。人口を基本に、地方創生の「取組の必要度」「取組の成果」を算定に反映させた。また、市町村合併団体への一本算定の「復元」を拡充した。
◎参院選「合区案」で懸念表明 ― 知事会・町村会
 来年夏の参院選挙で初めて「合区」を導入する公職選挙法改正案について、全国知事会は7月24日、「合区案」に懸念を表明する緊急アピールを公表、全国町村会も7月23日の理事会で同趣旨の緊急要望を決めた。知事会は、参院は発足当初から「地方代表」の性格を持っており、人口のみの区割りは地方創生の流れにも反すると指摘。「人口の多寡にかかわらず、都道府県単位の代表が国政に参加する仕組み」を要請。町村会も、合区により地域課題などの情報が国会に届かなくなるとし「全ての地域の事情や声が国会に十分反映できる選挙制度とすることが必要」だと訴えた。
 参院選挙区改革案は、最高裁が前回の参院選を「違憲状態」と指摘したことを受けて「鳥取・島根」「徳島・高知」を合区するとともに、宮城、新潟、長野の定数を各2減、北海道、東京、愛知、兵庫、福岡を各2増する。7月28日の衆院本会議で可決成立した。
◎「地方創生宣言」など採択 ― 全国知事会議
 全国知事会議が7月28、29日の両日、岡山県で開かれ、「地方創生宣言 ― 地方創生から日本創成へ」を採択したほか、「少子化対策の充実・強化」「子どもの貧困対策の充実・強化」「地方税財源の確保・充実」「地方分権改革の推進」「地方創生に向けた文化・スポーツ振興施策」「TPP協定」などの緊急要請・提言などを決めた。地方創生宣言は、「若者も高齢者も住みたい地方へ」など「日本創成」への取組方針を示した上で、地方回帰の加速化や産業の競争力強化、地域資源の活用など地方が取り組む「行動リスト」と、政府機関の地方移転や若者の就労支援の強化、少子化対策の抜本強化など「国への緊急要請」をまとめた。このほか、地方税財源では新型交付金について前年度補正予算で措置された先行型交付金1,700億円を大幅に上回る規模を求めたほか、地方分権改革ではハローワークの地方移管などを要請した。
 一方、意見交換で石破茂地方創生担当相は新型交付金について国費で1,000億円、事業費ベースで2,000億円規模を目指すとした。このため、知事会側から「1,700億円を上回る規模を」など不満が相次いだ。
◎道州制基本法の国会提案見送り ― 自民党本部
 自民党の道州制推進本部は7月30日、道州制基本法案について、昨年の本部総会の議論や地方六団体の意見を踏まえると「基本法案を国会に提出する環境にない」として提出を断念。「基本法の旗を掲げ」つつ、国民や自治体への趣旨の説明を強化する方針を決めた。このため、道州制パンフレット作成や県連と連携した勉強会などを開催する。併せて、北海道で実施されている道州制特区の対象拡大など手続きの見直しや広域連合を活用した道州制モデルの構築などを検討する。
 自民党はこれまでの選挙マニフェストで道州制の導入を明記、審議機関「道州制国民会議」の設置などを盛り込んだ道州制基本法案も策定済みだが、全国町村会・同議長会が強く反対、昨年の道州制本部でも議員から反対論が噴出、本部を1年開催できなかった。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)