地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2015年10月中央の動き


中央の動き


◎先進政策で大賞・優秀政策 ― 知事会
 全国知事会は9月1日、第8回先進政策創造会議を開き、28件の優秀政策を選定。うち鳥取県の「県内中小企業と全国の生活者の『共創』による新商品開発支援」を先進政策大賞に決めた。知事会では、都道府県の政策能力向上を目的に「先進政策バンク」を設置・運用。現在約3,100件の政策が登録されている。
 大賞を受賞した鳥取県の政策は、全国から商品開発のアイデアを募るサイトを開設、県内参加企業がそれを基に商品開発。既に新商品を開発、大手企業との販路開拓に成功した事例も出ている。このほか、優秀政策に選ばれたのは、リーガルサポート(三重県)、「救急支援アプリ MySOS」の提供(和歌山県)、県有施設の屋根貸し太陽光発電 ― おひさまBUN・SUNメガソーラー(長野県)、レントゲン撮影用チャイルドシート(東京都)、運転免許センターで認知症早期発見システム化(熊本県)、木質バイオマス発電・ヒノキ製材品輸出(岡山県)、女性創業支援(山口県)など。


◎子ども医療費見直しで検討会 ― 厚労省
 厚労省は9月2日、「子どもの医療制度のあり方検討会」の初会合を開いた。子どもの医療費については多くの自治体が独自助成しているが、対象年齢や助成内容にバラツキが目立つとともに各自治体の財政負担になっている。また、国は同軽減措置に対し減額措置を実施している。このため、検討会では子どもの受診や自己負担、国民健康保険の国庫負担のあり方などを検討、来年夏にも報告をまとめる。
 子どもの医療費に対する自治体の援助(2014年4月現在)は、都道府県では全団体が通院・通学で実施。通院では41団体が12歳までを対象にしている。市町村は、1,742団体が通院・入院で実施。うち、通院では353団体が修学前まで、255団体は7~12歳まで、さらに930団体は15歳まで援助している。なお、全国知事会は子どもの均等割保険料軽減措置の導入などを要望。全国市長会は子ども医療費などは国が全国一律で実施するよう提言をまとめている。

◎地域おこし協力隊員の定住状況で調査 ― 総務省
 総務省は9月8日、地域おこし協力隊員の定住状況(2015年3月末現在)を発表した。同制度は、都市地域から過疎地域等に移住し地域おこしを支援するもので、2009年度に発足。14年度は444自治体が1,511人を受け入れている。任期満了した隊員(回答267団体)は945人で、うち443人(47%)は同一市町村内に、114人(12%)は近隣市町村内にそれぞれ定住。このほか、93人(10%)は他の条件不利地域に定住していた。同一市町村に定住した隊員の進路をみると、210人が民間企業や自治体などに就業、79人は就農したほか、76人(17%)が起業していた。総務省は、14年度から起業経費の財政支援を始めている。
 また、高市早苗総務相は9月8日の記者会見で、同省が都内に設置した「移住・交流情報ガーデン」の利用状況を紹介した。開設して5カ月だが、約6,500人が利用、うち約2,000人に移住相談員が移住候補地を紹介した。その結果、移住したい地域では、長野県・北海道・島根県が上位を占めたという。

◎地方創生で政策アイデアコンテスト募集 ― 政府
 政府のまち・ひと・しごと創生本部は9月15日から「地方創生・政策アイデアコンテスト2015」の募集を開始した。政府は、自治体の取組を情報面から支援する「地域経済分析システム(RESAS)」を提供・公開しているが、これを活用した動きを後押しするのが狙い。募集テーマは、「地域の人口減少・少子高齢化を○○で解決」「地域への観光客・まちの賑わいを○○で増やす」「地域の○○産業を○○で元気にする」などで、高校生以下と大学生以上の2部門で募集。今年12月に最終審査と表彰を行う。
 一方、内閣府は9月8日、地方創生先行型上乗せ交付の申請状況を発表した。2014年度補正予算で計上されたもので、総額は300億円。しごとづくりや小さな拠点など先駆性ある事業分(タイプ1)では、706団体(47都道府県、659市町村)が1,155事業について合計417億円を申請。総合戦略策定団体への交付分(タイプ2)では、734団体が1,605事業で合計68億円を申請した。タイプ1は1団体当たり都道府県が3~5億円、市町村は3,000~5,000万円、タイプ2は1団体当たり1,000万円で、11月にも交付決定する。

◎制度・地方財政WGなどが始動 ― 諮問会議
 経済財政諮問会議の「経済・財政一体改革推進委員会」の下に設置された「制度・地方財政」「社会保障」などの3ワーキンググループと、「公共サービス」「健康増進・予防サービス」のプラットフォームが相次いで審議をスタートさせた。いわゆる「骨太の方針2015」に盛り込まれた経済・財政再生計画を推進するためKPIなどを設定、これを受けて年末にも諮問会議で「改革工程表」を決定する。
 制度・地方財政WGは、8月31日に続き9月17日に第2回会議を開いた。検討課題には、民間の活用による公共サービスの産業化や先進的自治体の経費水準の基準財政需要額算定への反映や留保財源率の見直し、マイナンバー導入によるIT化と業務改革、国・地方の公務員人件費の増加抑制などを挙げている。会議では、地方税財政データや自治体の業務改革の取組状況の見える化などを審議したが、委員から「地方財政の効率化や重点化を通じた歳出の抑制に最終的な目的がある」との発言が出た。また、公共サービスイノベーション・プラットフォームは自治体の先進的な取組を全国展開することで公共サービス改革を推進しようとするもの。9月14日の初会合では、総務省が自治体の業務改革モデルプログラムや地方行政サービス改革の留意事項等を説明したが、地方側委員から「地方が効率化したことで経費もかからなくなったとして、地方交付税の削減の材料にすることは容認できない」との懸念の声も出た。

◎第4次社会資本整備重点計画を閣議決定 ― 政府
 政府は9月18日、第4次社会資本整備重点計画を決めた。インフラ老朽化や脆弱国土、地方の疲弊などの課題解決に向け、道路・公園・河川など2020年度までに整備すべき4つの重点目標を定めた。
 老朽化対応では、施設ごとの長寿命化計画の策定率100%を目指すほか、メンテナンス産業の競争力を強化。また、災害対応では、巨大地震・津波のリスク低減のため緊急輸送道路上の橋梁の耐震化率81%(17年75%)を目指すほか、危険な密集市街地面積を解消する。激甚化する気象災害に対し河川整備率(県管理)を60%(同55%)にする。人口減少・高齢化への対応では、都市コンパクト化に向け立地適正化計画の作成市町村を150団体とするほか、特定道路のバリアフリー化率100%(同83%)、汚水処理人口普及率96%(同89%)などを目指す。さらに、大都市圏の国際競争力強化のため三大都市圏環状道路整備率80%(同68%)を目指すなどとした。

◎我が国の高齢者などを発表 ― 総務省・厚労省
 総務省は9月20日、我が国の高齢者(2015年9月15日現在)を発表した。65歳以上の高齢者は3,384万人(26.7%)で、前年に比べ89万人(0.8ポイント)増加。過去最高を更新した。うち、80歳以上は1,002万人(7.9%)で、初めて1千万人を超えた。また、高齢者の就業者は681万人と過去最高となった。うち非正規が73.1%で、その理由では「自分の都合のよい時間に働きたい」が31.6%と最も多かった。高齢者世帯の消費支出は、「保健医療」が二人世帯平均に比べ1.39倍、「交際費」は1.36倍で高かった。一方、ネットショッピングの利用は12.0%で、12年間に5倍増加。さらに、電子マネーも29.4%が利用していた。
 また、厚労省が9月11日発表した百歳以上高齢者(2015年9月1日)は前年より2,748人増え6万1,568人(うち女性87.3%)となった。百歳以上高齢者は1981年に1千人、98年に1万人超など増加の一途をたどっている。なお、国が行う百歳高齢者表彰の対象者は前年比1,022人増の3万379人となっている。

◎ハローワーク移管で意見聴取 ― 分権雇用対策部会
 政府の地方分権改革有識者会議・雇用対策部会は9月28日、第3回会合を開き、ハローワークの事務権限移譲をめぐり全国知事会や厚労省、連合などから意見聴取した。ハローワークの移譲問題では、国と地方側が対立。11年6月からハローワークと自治体窓口の「一体的実施」、12年10月から県知事が指示できるハローワーク特区(埼玉・佐賀両県)を導入。9月2日の有識者会議で、その成果・課題を検証することを決めた。年内にも特区を拡大するかなどを判断する。
 意見聴取で、知事会は一体的実施や特区では「国と自治体の寄合世帯ゆえの課題がある」と指摘。ハローワークを地方移管することで①起業誘致など産業政策と一体となった雇用政策を展開②就職相談から職業相談までワンストップで可能③生活支援などのサービスも受けられる ― などと強調。全国市長会は、東京都中野区での一体的実施の取組状況を報告した。また、連合は国と自治体の協同連携による就労支援・生活支援を一体的に実施するとともに運営協議会への地域労使の参画を図るべきだとした。一方、厚労省は、ハローワーク特区で国・県の連携が強化されたほか、一体的実施も149自治体で実施され、自治体主導でハローワーク一体となった工夫が可能に。さらに国と自治体の「雇用対策協定」が38自治体で締結など、現行制度でも大きな成果を挙げていることを強調した。

◎個人番号カード利活用で懇談会 ― 総務省
 総務省は9月29日、個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用推進懇談会を発足させた。来年1月からマイナンバー制度が始まることから、個人番号カードの具体的利活用方策や、自治体の個人番号の独自利用、電子調達、民間分野でのICTの利活用などを検討。来年夏にも報告をまとめる。高市早苗総務相は9月25日の記者会見で、セキュリティの観点から各自治体に要請していた住民基本台帳システムとインターネットの分離が10月5日の段階で全市町村で完了する見通しを明かにした。併せて、「サイバー攻撃は一定程度発生することを前提にしたリスクの最小化」に政府挙げて取り組む考えを強調した。また、高市総務相を本部長とする「個人番号カード交付円滑化推進本部」を10月1日に立ち上げた。
 一方、同省は9月25日、2015年国勢調査で初めて実施したインターネット回答数が1,917万5,769件にのぼったと発表した。前回を基に試算すると回答率は37%になる。うち約3割がスマートフォンからの回答だった。回答率は滋賀県の48%をトップに、富山、岐阜、愛知、奈良など17県で4割を超えた。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)