月刊『自治総研』
2016年3月中央の動き
中央の動き |
◎諮問会議経財一体改革委などが審議再開 ― 政府 ◎新型交付金など地域再生法改正案を閣議決定 ― 政府 政府は2月5日、新型交付金などを盛り込んだ地域再生法改正案を閣議決定した。新型交付金(地方創生推進交付金・補助率2分の1)は国が認定した自治体作成の地域再生計画事業に対し交付する。2016年度は1,000億円が計上された。企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)も同計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に寄附した企業の法人住民税・法人税・法人事業税に特例を適用する。 また、「生涯活躍のまち」(日本版CCRC構想)も法制化する。中高年齢者が健康時に地方や「まちなか」に移住し健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができる地域づくりを進める。都道府県が地域再生計画を、市町村が「生涯活躍のまち形成事業計画」を作成。同事業計画には、中高年齢者の就業・生涯学習活動、有料老人ホームなど住宅整備、介護サービスの提供体制などの施策を盛り込む。国は人的支援や新型交付金などで支援する。 ◎都市の公共交通のあり方で報告書 ― 全国市議長会 全国市議会議長会の都市行政問題研究会は2月5日、「都市における公共交通のあり方」に関する報告書をまとめた。人口減少等で公共交通の経営が厳しくサービスも低下する一方、住民の通勤・通学、通院などのため交通手段の確保が大きな課題となっていると指摘。このため、まちづくりとの連携による公共交通の利便性向上・サービス充実・利用者の増加を一体で実現するよう提言。また、公共交通ネットワークの生活圏単位が複数市町村にまたがる場合は、定住自立圏や連携中枢都市圏などの利用を求めた。併せて、各都市が制定した公共交通条例(新潟、金沢、高松、福岡、熊本)は理念・計画策定にとどまっているとし、都市自らが方向性を決定し住民等に説明すべきだとした。 さらに、国は各都市の公共交通政策を側面から支援、都道府県は市町村をまたぐ広域幹線的な路線を支援、公共交通事業者は運転手確保など利便性を向上、住民も行政の公共交通の利用推進施策に協力するなど、関係主体が一致協力すべきだと提言した。 ◎2016年度地方財政計画を決定 ― 政府 政府は2月9日、2016年度の地方財政計画を決定した。一般財源総額を、前年度同額確保を明記した骨太方針2015を踏まえて前年度比1,307億円(0.2%)増の総額61兆6,792億円を計上した。地方税が同1兆2,103億円(3.2%)増加する中、地方交付税を前年度とほぼ同額(0.3%減)の16兆7,003億円確保。一般財源比率は67.5%(前年度66.9%)に上昇した。また、地方税・地方譲与税の回復で財源不足が5兆6,063億円(前年度比28.3%減)に減少。臨時財政対策債も3兆7,880億円(同16.3%減)に抑制し、歳出特別枠を重点課題対応分に振替えるとともに別枠加算を廃止した。 一方、まち・ひと・しごと創生事業費として前年度に引き続き1兆円を確保したほか、重点課題対応分として①自治体情報システム構造改革推進事業1,500億円②高齢者の生活支援の地域のくらしを支える仕組みづくり500億円③森林吸収源対策等500億円 ― を創設。このほか、公共施設の老朽化対策として1兆2,198億円(維持補修費)などを計上した。 ◎2016年度地方交付税法改正案を閣議決定 政府は2月9日、2016年度の地方交付税法改正案を閣議決定した。新たに民間委託など歳出効率化を基準財政需要額算定に反映させる「トップランナー方式」を導入した。対象23業務のうち16業務を16年度から着手。具体的には、3~5年かけて学校用務員事務・小学校は2,927千円(見直し前3,707千円)、体育館管理は29,441千円(同31,370千円)、住民基本台帳は13,265千円(同17,586千円)などへ引き下げる。また、地方税徴収率も上位3分の1の団体の徴収率を基準に、5年後、都道府県税個人均等割は98.6%(同98.0%)、固定資産税(土地)は98.6%(同98.0%)などにそれぞれアップする。なお、民間委託できない小規模自治体等には段階補正で調整する方針。 このほか、特別交付税の割合6%の継続や地方債の協議不要基準緩和など届出対象の拡大、退職手当債の特例期間10年間延長なども盛り込んでいる。 ◎マイナンバーカード活用へ検討会 ― 総務省 総務省は2月12日、「マイキープラットフォームによる地域活性化検討会」の初会合を開いた。民間も利用できるマイナンバーカードに搭載されているICチップの空き容量と公的個人認証を活用した地域経済活性化策を検討する。具体的には、自治体の図書館・美術館・生涯学習カード、商店街のポイントサービスの共通化などを想定。検討の前提として、これらのサービスを呼び出す共通情報基盤に限定し図書貸出し履歴や商品の購入履歴情報は保有しない、窓口・店頭ではカードリーダーを利用し職員や店員等にカードを手渡さないなどとした。4月にも中間報告をまとめる。 総務省は同日、今年から民間に開放された電子証明書を活用する事業者として初めて3社を大臣認証した。3社は、ケーブルテレビで個人向け行政情報の配信、スマートテレビで個々の家庭に防災情報の提供、パソコン等から母子健康手帳の閲覧などを提供する。また、マイナンバーの周知徹底のため、自治体の優れた広報の取組を表彰する「マイナンバー・マイナンバーカード広報大賞」を設けることにし、同日、各自治体に通知した。今年7月にも表彰する。 ◎町村議会の実態調査を発表 ― 全国町村議会議長会 全国町村議会議長会は2月20日、全国町村議会実態調査結果(2015年7月1日現在)を発表した。928町村の現議員数は1万1,161人で前年より136人減少。うち女性は1,051人(9%)で、女性議長は21人だった。議員報酬(全国平均)は21万2,349円で、前年より1,900円(0.9%)アップ。政務活動費は192町村(21%)で条例化、1人当たり交付額は月額9,596円だった。このほか、会期の通年制は45町村(うち召集回数運用31)で採用。また、委員会で77町村(8%)が参考人を招致、議会基本条例は246町村(27%)、政治倫理条例は191町村(21%)で制定。休日議会は32町村(3%)、夜間議会は18町村(2%)で実施。住民懇談会・議会報告会も346町村(37%)、議会モニター・議会アドバイザーを32町村(3%)で導入していた。 一方、全国都道府県議会議長会は標準傍聴規則で携帯を禁止していた「つえ」を削除した。今年4月の障害者差別解消法施行に向け1月22日の役員会で決めた。全国町村議会議長会は昨年5月に削除している。 ◎同一労働同一賃金で法制化へ ― 一億総活躍国民会議 政府の一億総活躍国民会議は2月23日、非正規雇用労働者の待遇改善策などを議論した。安倍首相は、「非正規雇用の待遇改善は待ったなしの重要課題」だと強調。同一労働同一賃金の実現に向け「我が国の雇用慣行に留意しつつ法改正の準備を進める」と述べた。また、どのような賃金差が正当でないかなどのガイドラインを制定するため、専門的検討の場を設置する考えも示した。併せて、65歳までの定年延長・65歳以降の雇用継続に向けた支援・環境整備策の検討も指示した。同会議では、このほか若者の就業促進、障害・難病のある人の就業促進策なども審議した。 また、自民党の一億総活躍推進本部は2月17日から議論を再開。都市より低い地方の賃金問題を重点に議論する。4月に提言をまとめ、政府が5月公表予定の「ニッポン一億総活躍プラン」に反映させる。 ◎2015年国勢調査で人口速報 ― 総務省 総務省は2月26日、2015年国勢調査の人口速報結果を発表した。人口は1億2,711万人で前回(10年)より94万7千人(0.7%)減少した。減少は調査開始(1920年)以来初めて。都道府県では、沖縄、東京、愛知など8都県で人口が増加。39道府県で人口減少となった。大阪は初めて減少に転じた。市町村では、303(18%)で増加、1,416(82%)で減少。うち5%以上減少した市町村が約半数に拡大した。世帯数は5,340万世帯で3%増加。1世帯人員は2.38人と世帯規模は縮小している。なお、今回初めて実施したインターネット回答は37%で、滋賀県の48%がトップ。 この速報値を基に衆院小選挙区の「一票の格差」を試算すると、最少は宮城5区の27万2,077人で、最大の東京1区63万5,097人に比べ2.33倍となった。格差2倍以上が37選挙区あった。なお、全国の同選挙区の議員1人当たり人口は43万882人となる。また、同省は2月16日、就業若者への選挙権年齢引下げの周知徹底を求める総務大臣書簡を経済団体等に送付した。 ◎人口減少の行政体制等で答申 ― 地方制度調査会 第31次地方制度調査会は2月29日、「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」を決めた。近く安倍首相に提出する。 人口減少社会の中でも市町村が引き続き持続可能な行政サービスを提供できるよう、広域連携が可能な地域では連携中枢都市圏などを推進する一方、広域連携が困難な地域では、市町村の申出による「都道府県の補完」を提言した。都道府県の職員が執務スペースの共有化や訪問などで補完する。また、窓口業務など公権力の行使にわたる包括的な業務を地方独立行政法人に委託できる制度創設を提言した。ガバナンス確保では、長の内部統制体制の整備・運用の基本方針の作成・公表を制度化。また、全自治体共通の統一的な監査基準策定など全国的な共同組織構築などを提言。議会では、決算不認定に対する長の説明責任を果たす仕組みと、議選監査委員の設置の選択制を提案。住民訴訟制度では、軽過失の場合の長等への責任追及のあり方見直し、違法性等を確認する仕組み創設などを提言した。
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(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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