地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年7月中央の動き


中央の動き


◎農地転用許可権限移譲で21団体を指定 ― 農水省
 農水省は6月1日、市町村にも農地転用許可権限を移譲する第1次の指定市町村に21団体を指定した。第5次地方分権一括法で、4㌶超の農地転用許可権限が都道府県に移譲されたが、併せて農水大臣が指定する市町村にも都道府県と同様の権限が移譲される。申請は手挙げ方式で、農水省では引き続き指定する。指定市町村は、横浜市、新潟市、長岡市、越前市、飯田市、津市、松阪市、鈴鹿市、名張市、鳥羽市、伊賀市、三重県東員町、同朝日町、同大台町、同度会町、同大紀町、同南伊勢町、岡山市、総社市、高梁市、諫早市。
 一方、第6次地方分権一括法で地方版ハローワークが創設されたが、7月5日の地方分権改革有識者会議で平井鳥取県知事は、厚労省の具体化に向けた対応が遅れていると批判。国のハローワークと同様の機能が確保できるよう改めて求人・求職情報の提供や財政支援措置を求めた。今回創設される新たな雇用対策では、ハローワーク利用者の利便性向上のため、自治体が行う無料職業紹介の届出を廃止するほか、自治体にハローワークの求人情報等がオンライン提供される。


◎消費増税再延期で財源確保など要請 ― 地方3団体
 安倍首相が、6月1日の記者会見で消費税増税の30カ月再延期を表明した。伊勢志摩サミットで合意した共通リスク認識を理由に挙げたが、併せて2020年度の財政健全化目標の堅持も強調。同時に、アベノミクスの果実を活用し、保育・介護の受け皿各50万人の確保・整備も「約束通り実施する」と表明した。
 これを受けて、全国市長会と全国町村会は6月2日、「我々市町村が社会保障の充実確保に適切に対応できるよう、必要な財源を確実に確保することを強く求める」との共同声明を発表。また、全国知事会の地方税財政委員会は6月23日、「(社会保障充実の費用は)国の責任で安定財源を確保すべきである。その際、地方に負担を転嫁する制度改正等を行うことがあってはならない」との提言案をまとめた。7月28日開催の全国知事会議で正式決定する。一方、麻生財務相は6月7日の記者会見で「(消費税率を)上げるのを前提に、あれします、これしますといったことはできません。やれる範囲は自ずと限られてくる」との認識を示した。安倍首相は「アベノミクスの加速で税収を一段と増やしたい」とするが、英国のEU離脱もあり社会保障の財源確保でも「リスク」が強まってきそうだ。
◎耐震基準未満庁舎なお市町村の2割 ― 政府答弁書
 政府は6月7日、災害対策本部が設置されている庁舎で耐震基準を満たさず、かつ業務継続計画を策定していない自治体(2015年)が都道府県はゼロだが、市町村では365団体(21%)あるとの政府答弁書を送付した。民進党の井坂衆院議員への質問趣意書に答えたもの。一方、文科省は近く公立小中高校の学校施設一斉調査を実施する。校舎は建築後25年経過が全体の約7割もあり、その老朽化対応が課題となっている。
 また、内閣官房国土強靱化推進室は5月24日、「国土強靱化地域計画」の「策定ガイドライン(第3版)」を公表した。第3版では、市町村を重点に改定。併せて「地域強靱化計画関連Q&A」を新たに掲載した。国交省は6月23日、市町村向けの「津波防災地域づくり推進計画作成ガイドライン」を作成した。このほか、総務省は6月16日、災害情報を一斉配信する「Lアラート」の利用者が1,000団体を突破、40都道府県が運用を開始したと発表した。
◎地域運営組織のあり方で論点整理 ― 内閣府
 内閣府の地域運営組織に関する有識者会議は6月14日、夏の中間報告に向けた「論点整理」をまとめた。論点整理は、地域運営組織の取り組みを推進するための課題に①法人化の推進②人材の育成・確保③資金の確保④事業実施のノウハウ⑤行政の役割・多様な組織との連携 ― を挙げた。具体的には、地域運営組織の活動・事業実施・寄付金の受け皿として地域限定NPO法人など多様な法人類型を整備するほか、地縁型組織のガバナンス、公民館との連携など「人材群」形成や専門的人材の活用、事業収入で事業継続できる仕組み構築、会計・税務や実務のためのガイドブック・研修などを提案。さらに、行政にも職員派遣等の人材支援や財政的支援の必要性を指摘した。
 一方、内閣府の生涯活躍のまち形成支援チームは6月2日、岩手県雫石町、南魚沼市、輪島市、都留市、佐久市、鳥取県南部町、北九州市の7団体を支援団体に決めた。今後、事業主体の選定や移住・住まい提供など基本計画の作成等を支援する。なお、総務省は6月24日、自治体の移住相談窓口の受付相談数(2015年度)が14万2,000件あったと発表した。長野、高知、北海道、島根、福井の各道県で多かった。
◎ふるさと納税の現況調査結果を発表 ― 総務省
 総務省は6月14日、2015年度のふるさと納税の調査結果を発表した。受入実績は約1,653億円、約726万件で、前年に比べ金額で4.3倍、件数で3.8倍増えた。受入額トップは都城市42.3億円。次いで、焼津市38.2億円、天童市32.3億円が続く。このほか鹿児島県大崎町、備前市、佐世保市、平戸市、伊那市、佐賀県上峰町、浜田市の各団体も20億円を超えた。また、ふるさと納税を募集する際に91%の団体で使途を「選択できる」と回答。返礼品も91%で送付していた。なお、ふるさと納税にかける経費は総額793億円(受入額の48%)で、うち返礼品調達は633億円(同38%)だった。返礼品について総務省は今年4月の通知で高額品などの見直しを要請したが、これを受けて34団体が見直しを実施、57団体が見直しを予定していると回答した。
 高市総務相は、同日の記者会見で、返礼品経費が4割近くにのぼることについて「(総務省要請を踏まえ)制度の趣旨に沿った良識ある対応をお願いしたい」と述べるとともに、「制度を抜本的に改正することを考えていない」とした。なお、内閣府は6月28日、企業版ふるさと納税について6県・83町村から計105件の申請があったと発表した。
◎認知症など行方不明者の状況を発表 ― 警察庁
 警察庁は6月16日、2015年中の行方不明者の状況を発表した。届出受理した行方不明者は8万2,035人で、前年より1%の微増となった。近年、8万人台前半で推移する中で、認知症が1万2,208人(15%)いるなど、調査を始めた12年の9,607人(12%)に比べ毎年増加している。同不明者のうち99%は昨年中に所在が確認されたが、150人は発見に至っていない。
 厚労省推計では、認知症の人が25年には700万人に増える。このため、政府は昨年、新オレンジプランを策定、認知症高齢者等の関係省庁連絡会議も設置した。5月31日の同会議では、国交省から14年度中の鉄道事故758件のうち認知症の人が関係するものが27件あり、死者287人のうち22人が認知症の人だったことが報告された。また、厚労省は6月24日、認知症本人等への4自治体の支援状況調査を発表した。熊本県山鹿市では認知症サポーターを養成、北海道砂川市では認知症初期集中支援チームを設置、兵庫県川西市では医療・介護関係者等で情報共有、岩手県岩手町では地域での見守り体制整備などの事業を展開している。
◎参議院選挙の各党選挙公約を評価 ― 全国知事会
 全国知事会は6月19日、参議院選挙における9政党の選挙公約の評価結果を発表した。同会が5月に各党に要請した「日本創生実現に向けた十の提言」から評価した。自民党公約では、本社機能の地方移転や事前防災・老朽化対策、地方財源の安定的確保、さらに参院選挙制度のあり方で地方の意見を反映する仕組み検討などを評価。一方、国民健康保険の国庫負担減額調整措置の見直しに触れていないことを評価できないとした。民進党では、待機児童解消や地方の財源確保などを評価。一方、地方への新たな人の流れ創出や防災・減災に資する社会資本整備、地方分権改革に触れていないことを評価しなかった。
 また、公明党では政府機関の地方移転や国保の減額調整措置見直し、子ども貧困対策などを評価する一方、地方への権限移譲や車体課税見直しに言及していないことを評価できないとした。共産党では、国保の減額調整措置見直しや子育て環境充実などを評価する一方、地方分権改革に触れていないことを評価できないとした。おおさか維新の会では、道州制導入を前提にしているものの中央政府の役割限定など地方分権改革の明記を評価。一方、防災・減災に資する社会資本整備に触れていないことなどを評価できないとした。
◎地方団体の働き方改革研究会が初会合 ― 総務省
 政府は6月24日の次官級連絡会議で、今年も7・8月に早朝出勤・早期退社する「ゆう活」を実施することを確認した。国家公務員はフレックスタイム制も活用しながら取り組む。昨年、「ゆう活」を国は約22万人(中央省庁は約8割)、自治体も合計171団体(41都道府県、16政令市、114市町村)で実施した。また、政府の地域働き方改革支援チームは6月10日、第2回会合を開いた。閣議決定されたまち・ひと・しごと創生基本方針2016の働き方改革をめぐり意見交換した。
 一方、総務省の地方団体の多様な人材活用と働き方改革研究会が5月31日、初会合を開いた。改正地方公務員法で義務付けられた人事評価制度や再任用、臨時・非常勤職員の増加など職種・任用形態に応じた人事管理などを検討、年内にも報告をまとめる。なお、総務省は臨時・非常勤職員の実態調査をはじめた。05年・08年・12年に続く4回目。自治体の臨時・非常勤職員は12年現在、約60万人に増加している。
◎2015年国勢調査の抽出速報を発表 ― 総務省
 総務省は6月29日、2015年国勢調査の抽出速報集計結果を発表した。人口は1億2,711万人で、前回調査(10年)より94万7千人(0.7%)減少。調査開始(1920年)以来初の減少となった。年齢別では15歳未満が1,586万人(13%)、15~64歳が7,591万人(61%)、65歳以上が3,342万人(27%)で、65歳以上人口が調査開始以来の最高を記録した。65歳以上人口割合を都道府県別にみると、秋田(34%)、高知(33%)、島根(33%)等で高く、沖縄(20%)、東京(23%)、愛知(24%)で低い。また、全都道府県で65歳以上人口が15歳未満人口を上回った。65歳以上人口のうち単独世帯人口も562万人(17%)に増加した。
 就業状況をみると、労働力率(15歳以上人口に占める労働力の割合)は60%と前回より1.4ポイント低下。産業分類別では、「卸売業・小売業」17%、「製造業」16%、「医療・福祉」12%で割合が高いが、前回に比べ「医療・福祉」が2.0ポイント上昇している。都道府県別では、「卸売業・小売業」は大阪(19%)、「製造業」は滋賀(26%)、「医療・福祉」は高知(18%)、「建設業」は福島(11%)で割合が高い。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)