地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年9月中央の動き


中央の動き


◎経済対策受け第2次補正予算案を編成 ― 政府
 政府は8月2日、世界経済の需要低迷などリスク懸念に対応するため総額28.1兆円の経済対策を閣議決定した。一億総活躍社会の実現加速に3.5兆円、21世紀型インフラ整備に10.7兆円、復興対応に3兆円などを計上。国内総生産を1.3%押し上げるとした。
 これを受けて政府は8月24日、第2次補正予算案を決定した。総額3兆2,869億円で、一億総活躍社会の実現加速に7,119億円、21世紀型のインフラ整備に1兆4,056億円、復興・防災対応に1兆4,389億円などを計上。うち、総務省は総額975億円で、マイナポータルと連携した子育て支援ワンストップサービスの実現(7億円)やマイナンバーカード等への旧姓併記を可能とするシステム改修(94億円)、チャレンジふるさとワーク(10億円)などを計上。また、厚労省は保育所等の整備推進(427億円)、介護人材の確保・介護離職防止(166億円)など計5,698億円、国交省はリニア中央新幹線・整備新幹線の整備加速(3,212億円)、外国人観光客4000万人時代のインフラ整備(608億円)など計1兆2,257億円、農水省は農林水産分野のイノベーション(117億円)、農地大区画化・汎用化(370億円)など計5,739億円をそれぞれ計上した。


◎企業版ふるさと納税で102事業を初認定 ― 内閣府
 内閣府は8月2日、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の第1回対象事業に6県・81市町村の102事業を決定した。夕張市の児童館・図書館等の複合拠点施設の整備に札幌市の企業が4年間で5億円寄付する。このほか、湯沢市の地熱を活用したハウス栽培、岐阜県・各務原市の航空宇宙産業の人材育成・確保などが認定された。また、地方創生推進交付金(新型交付金)の第1回交付対象事業として744団体の745事業を決めた。地域産業などしごと創生が333事業・109億円、移住・定住など人の流れが201事業・36億円、まちづくりが160事業・29億円など。
 一方、総務省は8月2日、ふるさと納税の税額控除実績を発表した。2015年のふるさと納税額は1,470億円で前年比4.3倍、寄付金税額控除額は998億円で同5.4倍。適用者も43万人から129万人に増えた。控除額が多かったのは都道府県では、東京104億円、神奈川41億円、大阪34億円など。市町村では、横浜31億円、名古屋19億円、大阪17億円などだった。
◎第3次安倍再改造内閣が発足
 第3次安倍再改造内閣が8月3日、発足した。菅義偉官房長官や高市早苗総務相ら主要閣僚を留任させた一方、新設した働き方改革担当相に加藤勝信一億総活躍担当相を兼務させた。また、5日の閣議で副大臣・政務官人事を決めた。総務省では、地方行財政担当の副大臣に原田憲治氏、政務官に富樫博之氏が就任した。なお、政府は3日の初会議で内閣の基本方針として、①復興の加速②一億総活躍社会の実現③世界の中心で輝く日本 ― を決めた。また、安倍首相は3日の記者会見で「最大のチャレンジは働き方改革だ。同一労働同一賃金を実現する」と強調。高市総務相も5日の会見で「ローカルアベノミクスの取組、地方への人と情報の流れを加速させる新施策を打ち出す」と述べた。
 一方、自民党は8月3日、幹事長に二階俊博氏、政務調査会長に茂木敏充氏、総務会長に細田博之氏を充てたほか、8月24日の本部長等人事で、総務部会長に葉梨康弘氏、憲法改正推進本部長に森英介氏、道州制推進本部長に石田真敏氏らを決めた。
◎国公給与の3年連続引上げ勧告 ― 人事院
 人事院は8月8日、2016年度の国家公務員給与について、月給を平均0.17%、ボーナスを0.1月分それぞれ引き上げるよう勧告した。月給・ボーナスの引上げ勧告は3年連続。併せて、17年度から配偶者扶養手当の段階的見直しも勧告した。配偶者・父母等の月額1万3,000円を半減する一方、子ども分6,500円を1万円に増額する。また、育児・介護と仕事の両立に向け、17年1月から①最長6カ月の介護休暇を3回まで分割を可能とする②介護時間を新設し、最長連続3年・1日2時間までとする ― とした。
 一方、自治労は同日、自治労見解を発表した。政府に官民較差に基づく給与引上げの確実な実施を求めるとともに、「骨太方針2016」に基づく人員削減の圧力に抗し国の不当な干渉を行わないよう総務省・国会対策をさらに強化するとした。
◎地域運営組織で中間報告 ― 内閣府有識者会議
 内閣府の地域運営組織に関する有識者会議は8月10日、中間報告をまとめた。農山漁村地域では人口減少・高齢化で集落の存続が危ぶまれているが、集落単位で地域課題の解決に取り組む地域運営組織の量的拡大と質的向上に向け、地域住民主体型のNPO法人や地縁型組織に適した法人制度の検討を求めた。また、同組織のリーダー・担い手・事務局体制整備のため、都道府県・市町村・中間支援組織が連携した人材育成等を求めた。さらに、行政の役割として市町村はパートナーとして人材・資金面などでの連携・支援、都道府県は広域的視点から市町村や現場の取組をサポートする支援体制、国には現行の支援制度の改善や拡充などを求めた。年内にも最終報告をまとめる。なお、地方創生総合戦略では目標に「小さな拠点」1,000カ所、地域運営組織3,000団体の形成を明記している。
 また、国交省は8月5日、国土審議会計画部会の住み続けられる国土専門委員会の初会合を開いた。昨年閣議決定された国土形成計画の推進に向け、人口減少地域でも持続可能な地域づくりのため内発的発展が支える地域づくり、移住・2地域居住、コミュニティ再生、さらに大都市における高齢化の対応策などを検討する。来年春にも中間報告をまとめる。
◎介護サービスの負担見直しに着手 ― 厚労省
 厚労省の社会保障審議会は8月19日、介護保険部会を開き、介護サービスの利用負担・費用負担の見直しを議論した。厚労省は、①2015年8月から導入した一定以上所得者の2割負担②高額介護サービス費③低所得者対策の補足給付④介護納付金の応能負担・総報酬割の導入 ― などの課題を提示し、その見直しなどを要請した。政府が昨年閣議決定した「経済・財政再生計画」の改革工程表では医療・介護提供体制の適正化、負担能力に応じた負担・給付の適正化などの結論を16年末までに出すと明記していた。厚労省は、年内に結論をまとめ来年度の介護保険制度改正に反映させる。
 一方、同省の国立社会保障・人口問題研究所は8月5日、2014年度の社会保障費用を発表した。うち社会保障給付費は総額112兆1,020億円で、前年に比べ1兆3,970億円、1.3%増加、過去最高を更新した。一人当たりでは88万2,100円だった。分野別では、高齢(年金・介護保険等)が54兆8,747億円で全体の47%を占め、次いで保険(医療保険・公費負担医療給付費等)が39兆5,385億円、34%を占めた。
◎公営企業経営の支援へ人材ネット ― 総務省
 総務省は8月23日、公営企業を経営する自治体を支援するため、「公営企業経営支援人材ネット」事業を開始すると発表した。同省は、各公営企業に広域化や民間資金・ノウハウ活用、定員・給与適正化などの「経営戦略」の策定を要請。今年1月には「経済・財政再生計画」の集中改革期間内の策定を改めて通知。このため、事業経営に精通した専門知識・ノウハウを持つ自治体職員OBや大学教授ら15人をリスト化、各自治体で活用できるネットワークを構築した。
 また、8月26日からテレワークマネージャーの派遣申請の受付を開始した。テレワーク導入を検討する民間企業や自治体への同システム導入等のノウハウを持つ専門家を派遣する。同省は「ふるさとテレワーク」導入自治体の助成を来年度概算要求でも9億円計上した。このほか、8月1日、マイナンバーカードの交付通知書送付率が今年6月末で84.5%に上昇したと発表した。一方、地方3団体は8月8日、総務省に対しマイナンバー制度の国・自治体の情報連携が来年から開始されることを踏まえ、障害発生時の迅速な原因究明・復旧に向けた地方への支援体制などを要請した。
◎農村振興プロセスで事例集発表 ― 農水省
 農水省は8月24日、農村振興に向け特色ある発展を実現した先進的な事例を整理した初の「農村振興プロセス事例集」を発表した。具体的には、高収益な枝豆の安定生産・加工・販売で日本一の農業所得を実現(北海道中幌内村)、集落全体で取り組む環境保全型農業を通じた米輸出を展開(横手市)、企業の農業参入と荒廃農地の再生を組み合わせたフードバレーの実現(山梨県北杜市)、地域女性による農家レストランの運営・食文化の伝承(遠野市)、うめの一大産地の形成と世界農業遺産への認定(田辺市等)、基盤整備・法人設立・農地集積による「一集落一農場」の実現(浜田市)、大都市近郊で全国有数の路地野菜産地の形成(三浦市)など30件の事例を紹介した。同省は、今後も事例数を増やす予定。
 また、政府は8月24日、新たな土地改良長期計画(2016~20年度)を閣議決定した。個性と活力ある豊かな農業・農村の実現に向け、16~20年度の事業量を水田の汎用化約15.9万㌶、水田の大区画化約8.3万㌶、畑の区画整理・排水改良約3.1万㌶、畑地かんがい施設の整備約2.5万㌶などとした。
◎2017年度の予算概算要求を発表 ― 総務省
 総務省は8月31日、2017年度の予算概算要求と、重点施策集「総務省イニシアティブ2017」を発表した。概算要求では、地方一般財源総額を「経済・財政再生計画」(2015)を踏まえ2016年度地方財政計画と実質同水準確保などを基本に前年度比4.3%増の16兆6,743億円を要求。地方交付税(交付ベース)は15兆9,588億円(前年度4.4%減)と交付税率の引上げを事項要求した。また、新規に「チャレンジ・ふるさとワーク」(12.5億円)、市町村の業務継続計画策定支援など自治体の災害対応能力強化(0.5億円)などを要望。このほか、条件不利地域の都道府県と市町村の連携等(2.1億円)、集落ネットワーク圏の形成(9億円)、地方への移住・交流(1.4億円)、地域おこし協力隊の拡充等(1.5億円)などを要求した。
 一方、地方六団体は8月25日、自民党総務部会関係合同会議で17年度地方税財政で要望。地方創生推進交付金の要件緩和やトップランナー方式・パフォーマンス指標の設定では条件不利地域等に配慮するよう求めた。併せて、消費増税の再延期でも保育受け皿等を充実するとしているが、地方への負担転嫁はあってはならないと牽制した。これを受けて高市総務相は一般財源総額の確保に努める意向を強調する一方、消費増税延長で来年度の地方財政は厳しい状況が予想されるとの懸念を示し、地方六団体側にも支援を要請した。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)