地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2016年11月中央の動き


中央の動き


◎法制執務業務支援システムを開始 ― 総務省
 総務省は10月3日、各府省の法案等作成作業を支援する法制執務業務支援システム(e-LAWS)の本格運用を開始したと発表した。同システムの特徴は、①所管府省が確認・認証した正確な法令原本として活用できるデータベースを行政や国民に提供②法令の新旧対照表から「改め文」が自動作成されるなど法案担当者の負担の軽減 ― の2点。これにより、霞が関では法令立案などの作業が省力化・効率化。さらにテレワークの活用で育児・介護中の職員も自宅で法令作業ができるとしている。総務省は、来年度早期から約4,000本の全ての法律・政令について国民がインターネットで容易に検索・閲覧・利用できるようにする。
 また、総務省は10月31日、AIネットワーク社会推進会議の初会合を開いた。AIネットワーク化が社会・経済の各分野にもたらす影響・リスクの評価、社会全体にAIネットワークを推進するための課題等を総合的に検討し「AI開発ガイドライン」(仮称)を策定する。一方、経産省は10月21日、サイバーセキュリティ分野で初の国家資格となる「情報処理安全確保支援士」制度を開始した。企業や組織での安全な情報システムの企画・設計・開発・運用の支援やサイバーセキュリティの指導・助言を行うもので、来年4月に第1回支援士試験が実施される。


◎市議会活動で実態調査を発表 ― 全国市議会議長会
 全国市議会議長会は10月14日、全国813市区の2015年中の市議会活動実態調査を発表した。1年間の市長提出議案は9万7,465件で99%が原案可決されたが、修正可決が137件、否決が160件あった。また、議員提出議案は8,938件で、うち1,162件が条例案だった。歩行喫煙防止条例(仙台市)、自治会等応援条例(出雲市)、地酒で乾杯推進条例(常陸太田市)などが可決された一方、学校給食費助成条例(荒川区)、非核港湾条例(小樽市)などが否決されている。このほか、議会基本条例を444団体(55%)が制定。議会関連の自治基本条例は225団体(28%)で制定している。また、政務活動費は88%の団体で交付しており、交付対象は41%が会派、23%が議員など。議員一人当たり交付額(月額)は1万~2万円が228団体(28%)、2万~3万円が170団体(21%)、3万~5万円が113団体(14%)で、政令市は13市が30万円以上だった。
 一方、10月20日、首相主催の都道府県議会議長との懇談会が開かれ、野川全国都道府県議会議長会会長が多発している政務活動費の不正受給をめぐり「襟を正し、住民の付託と信頼に応えたい」と陳謝した。なお総務省は9月30日付けで各都道府県に政務活動費の適正化を通知している。また、同議長会は10月25日の総会で地方議員の厚生年金加入実現を求める決議を採択した。地方議員年金は市町村合併等による議員の大幅減少で積立金破綻が確実となり2011年で廃止された。同決議は全国市議長会、同町村議長会も要請している。
◎歳出改革でWGが地方団体ヒアリング ― 諮問会議
 経済財政諮問会議は10月14日から2017年度予算編成に向けた議論をスタートさせた。同日の会議では有識者議員が「メリハリを効かせた歳出改革の推進」を提案。2020年度の財政健全化目標実現に向け、公的サービスの産業化やインセンティブ改革、トップランナー方式の推進などを検討、年末にも方針をまとめる。
 一方、諮問会議の「制度・地方行財政ワーキング・グループ」は10月27日、地方3団体などから意見聴取した。地方3団体は、地方が国に先んじた行政改革を実践し成果を挙げていると強調する一方、地方一般歳出の大半は国の法令等による義務的な経費だとし、トップランナー方式は条件不利地域に配慮するなど対象拡大に慎重な対応を求めた。さらに、「(財務省の地方財政計画の過大計上批判について)地財ショック後は基金残高が減少、現状は不断の行革努力で最低限必要な基金残高を死守している」(平井鳥取県知事)、「各歳出にPDCAサイクルを導入、実績や成果を国が一律に検証するのは不適当だ」(本間ひたちなか市長)、「地方創生で地域経済底上げに取り組んでいるときに財政基盤を揺るがし意欲をそぐべきではない」(山崎・岡山県鏡野町長)などと指摘した。
◎働き方改革で第2回実現会議 ― 政府
 政府は10月24日、第2回働き方改革実現会議を開いた。柔軟な働き方のあり方や多様な採用機会の提供などをめぐり各議員が意見表明。安倍首相は「テレワークは子育て・介護と仕事の両立の手段、副業・兼業はオープンイノベーションや企業の手段として有効。その普及は極めて重要だ」と述べ、その具体化を指示した。併せて、長時間労働を招かないための労働時間管理のガイドライン策定も指示した。これを受けて、経産省は「兼業・副業を通じた創業・新事業創出」「雇用によらない働き方」など3つの研究会を発足させた。今年度中に報告をまとめる。
 一方、政府は10月14日、2016年度の人事院勧告の完全実施を閣議決定した。これを受けて総務省は同日、地方公務員の給与改定の取扱いを各都道府県等に通知した。国の給与改定に合わせて給与適正化なども講じるよう要請。民間賃金が高い地域でも国家公務員との均衡に留意するよう求めた。なお、10月25日までに全都道府県人事委員会の給与勧告が出そろった。41道府県が月給の引上げを勧告したが、熊本県は熊本地震で、東京、三重、高知の3都県は較差がわずかなため改定を見送った。一方、大阪府と佐賀県は引下げとした。
◎いじめ・不登校などで調査結果 ― 文科省
 文科省は10月27日、2015年の児童生徒問題行動調査を発表した。小・中・高校等のいじめ認知件数は22万4,540件で、前年より3万6,468件(16%)増えた。児童生徒1,000人当たりでは16.4件(前年度13.7件)となる。同件数を都道府県別にみると、京都府の90.6件をトップに宮城県70.8件、山形県48.4件、宮崎県47.2件などで多く、佐賀県の3.5件、香川県4.5件、広島県・福岡県の各5.1件などで少ない。なお、最高・最低の差が前年の30.5倍から25.9倍に低下した。また、いじめ防止推進法に基づく「地方いじめ防止基本方針」を都道府県では100%、市町村は77%で策定、「いじめ問題対策連絡協議会」は都道府県98%、市町村65%でそれぞれ設置していた。小・中学校の長期欠席者数は19万4,933人で、うち不登校児童生徒は12万6,009人、その割合は1.26%(前年度1.21%)だった。
 また、文科省のいじめ防止対策協議会は10月12日、いじめ防止対策の素案をまとめた。都道府県のいじめ認知件数の差が大きいため、「いじめの定義」の解釈を明確化するとともに、いじめ認知数が多いことを肯定的に評価すること、市町村での地方いじめ防止基本方針の策定促進、児童生徒の目線にたったアンケート調査の採用などを求めている。
◎国勢調査に基づく選挙区人口を算出 ― 総務省
 総務省は10月26日、2015年国勢調査人口と同確定値に基づく選挙区人口を発表した。総人口(10月1日現在)は1億2,709万5千人で、前回調査(10年)に比べ0.8%減少。調査開始(1920年)以来初の減となった。都道府県では沖縄、東京など8都県で増加、39道府県で減少した。市町村では300団体で増加したが83%の1,419団体で減少、うち49%の市町村では5%以上の減少となった。また、65歳以上が3,346万5千人(27%)、15歳未満が1,588万7千人(13%)でいずれも過去最多・最少を記録した。
 また、同確定値に基づく選挙区別人口を算出した。衆院小選挙区では11都道府県の32選挙区で「1票の較差」が2倍以上となった。併せて、今年成立した衆院選挙制度改革関連法に盛り込まれた「0増10減」の対象を選挙区では青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県、比例代表では東北、北関東、近畿、九州の4ブロック(各1削減)とした。なお、全国知事会は10月13日、先の参院選で導入された「合区」解消に向けて参議院を地方代表と位置付けることなどを内容とする憲法改正要綱をまとめた。一方、自民党の憲法改正推進本部は10月18日に再開、衆院憲法審査会も11月10日から審議をはじめる。
◎地方財政計画の過大計上を指摘 ― 財務省
 財務省の財政制度等審議会は10月27日、地方財政計画と決算との乖離を理由に同計画が過大計上されているとし、地財計画の歳出を抑制する方針を打ち出した。2013年度決算では計画額が決算額より0.6兆円過大だとし、地方税収の上振れ分を地財計画でも清算するほか、一般行政経費(単独事業)の標準的財政需要でない経費を検証、歳出特別枠を廃止すべきだとした。一方、高市総務相は翌28日の記者会見で、財務省が批判する給与関係経費のうち0.6兆円は非常勤職員分の歳出、基金取り崩しの0.5兆円は東日本大震災関連であり、この2つだけでも逆に地財計画が決算額を0.5兆円下回るなどと指摘、「近年では地財計画の歳出規模が決算額を1兆円程度下回っている。財務省と総務省の試算は真逆で、(財務省の)試算方法について大いに疑問を感じている」と批判した。
 また、国と地方の協議の場が10月27日開催された。席上、地方側は17年度予算編成について地方一般財源総額の確保と臨時財政対策債の縮減・廃止、トップランナー方式では交付税の財源保障機能が損なわれないよう慎重な対応を要請。このほか、①緊急防災・減災事業債の恒久化・拡充②保育の受け皿50万人分確保と保育士・介護職員の処遇改善のための地方財源確保③ゴルフ場利用税の現行制度堅持 ― などを要請した。これを受けて、安倍首相は、「地方に住む若い皆さんが未来を描けるよう全力を尽くしたい」と述べた。
◎自治体の非常用電源の調査結果など発表 ― 総務省
 総務省は10月28日、自治体の業務継続計画策定状況(2016年4月1日現在)を発表した。都道府県は100%で策定、市町村は前年より95団体増えたが730団体(42%)にとどまった。また、非常用電源も都道府県は全団体が整備、市町村は207団体(12%)が未整備だった。さらに、整備団体でも地震対策を都道府県は全団体が整備しているが、市町村では375団体(整備団体の24%)が未整備だった。
 また、総務省が10月14日に発表した2016年度の東日本大震災の被災地への地方公務員派遣状況によると、全国の自治体から派遣された職員は2,071人で、うち都道府県が1,110人、政令市が232人、市町村が729人だった。一方、内閣府は10月11日、被災自治体が支援を受ける体制づくりを検討する有識者会議を発足させた。支援要請の手順や必要な物資の把握方法などを検討、年度内にもガイドラインを作成する。また、10月27日に災害時に自治体が発令する「避難準備情報」の名称見直しなどを検討する有識者会議を発足させた。年内に報告をまとめる。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)