地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2017年3月中央の動き


中央の動き


◎地方大学の振興等で有識者会議発足 ― 内閣府
 内閣府は2月6日、地方大学の振興・若者雇用等に関する有識者会議の初会合を開いた。東京一極集中の是正に向け地方大学の振興や地方での雇用創出、東京での大学の新増設抑制などを検討するため、学識者や首長ら13人で構成。検討する「論点」に、①地方大学の役割や、地方大学振興に向けた地方自治体・産業界との連携、18歳人口減少と大学経営②東京の大学・学部の新増設抑制と地方移転の考え方③地方で若者の雇用を創出する方策④東京圏の大学生・若者就業者のUIターンの促進方策 ― などを挙げた。5月にも中間報告をまとめる。2月16日の第2回会合では、全国市長会や公立大学協会など関係団体が意見陳述。水谷網走市長は、東京農業大学(オホーツクキャンパス)との連携による地元産品の開発などの取組を紹介し、地方大学の入学定員充足率の緩和などを要請した。
 また、内閣府は2月17日、「そうだ、地方で暮らそう! 国民会議」の第3回会合を都内で開いた。同会議は、地方居住推進に向け産官学金労言など国民各層が一体となって国民的・社会的気運を盛り上げようと15年5月に発足させた。会議では、「ライフスタイルの見直し」をテーマに、実際に東京圏から地方圏に移住した人や、地方でサテライトオフィスなどを展開している企業経営者らが講演した。


◎2017年度の地方財政計画などを閣議決定 ― 政府
 政府は2月7日、2017年度の地方財政計画を閣議決定した。地方交付税総額を16兆3,298億円(前年度比2.2%減)、地方税・地方譲与税を41兆6,027億円(同1.1%増)などとし、地方一般歳出を70兆6,333億円(同1.0%増)、地方財政計画の規模を86兆6,198億円(同1.0%増)とした。また、まち・ひと・しごと創生事業費を前年度と同様1兆円確保するほか、熊本地震での庁舎被害を踏まえ市町村役場緊急保全を新たに追加した「公共施設等適正管理推進事業費」3,500億円を計上。併せて、緊急防災・災害事業費を東日本大震災の復興・創生期間である20年度まで継続する。このほか、社会保障の充実分として1兆8,388億円を計上、国民健康保険への財政支援(財政安定化基金)1,700億円、社会保障4経費の負担増分3,748億円、「ニッポン一億総活躍プラン」に基づく保育士・介護人材の処遇改善事業費1,913億円を計上した。
 また、政府は同日、2017年度の地方交付税法改正案と地方税法等改正案を閣議決定した。地方交付税総額確保のため地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金等を活用。また、財源不足額を国と地方が折半して補てんするルールを19年度まで3年間延長。併せて、県費負担教職員の給与負担事務の政令市への移譲に伴い個人住民税所得割の税源移譲を基準財政需要額に100%算入する。地方税法等改正案では、配偶者控除等で所得控除額の上限を引き上げるほか、タワーマンションの固定資産税を実際の取引価格で補正する一方、中小企業の設備投資特例措置を一部追加する。
◎土地改良法等改正案などまとめる ― 農水省
 農水省は2月9日、土地改良法等改正案と農村地域工業導入促進法改正案を決めた。近く閣議決定し国会に提出する。同省が進める農地中間管理機構による農地集約では、担い手は基盤整備されていない農地を借り受けしないが、貸し付ける農地所有者は基盤整備の費用を負担する用意がないため農地の集積が滞ることが危惧されている。このため、農地中間管理機構が借り入れた農地について、農業者の申請・同意・費用負担を求めずに都道府県営事業として基盤整備事業を実施できる制度を創設。併せて、農業用用排水施設の耐震化も国・自治体が事業参加者の申請・費用負担・同意なく実施できることにする。また、農村地域の工業導入の対象産業を工業等から業種を拡大、法律名も「農村地域への産業導入促進法」に変更する。
 一方、山本公一環境相は2月14日の閣議後会見で、宴会等での食べ残しを少なくする「30・10(さんまるいちまる)」運動を「ぜひ生活の中に定着させていきたい」と述べ、経済界などに協力を求める考えを明かにした。同運動は、松本市が宴会などでの「食品ロス」削減を狙いに2011年から始め、現在、18道県・62市区町で実施。環境省が発足させた「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」にも275自治体が参加し、食べきり運動を進めている。
◎逃げ後れゼロへ水防法等改正案を閣議決定 ― 政府
 政府は2月10日、水防法等改正案を閣議決定した。最近の洪水被害の頻発・激甚化を踏まえ、洪水等からの「逃げ後れゼロ」「社会経済被害の最小化」に向け、自治体や河川管理者・水防管理者などの関係者が連携体制を構築する「大規模氾濫減災協議会制度」を創設するほか、市町村長が中小河川での住民避難確保のための水害リスク情報を住民に周知する制度を創設。さらに、洪水や土砂災害のリスクが高い区域にある要配慮者利用施設の管理者に「避難確保計画」の作成と避難訓練の実施を義務付ける。また、自民党は2月14日、津波対策推進法改正案を了承した。議員立法で今国会に提出する。「世界津波の日」制定を受けて、法案に国際協力への配慮規定を追加するほか、自治体のハザードマップ作成の財政援助を22年3月まで延長する。
 一方、文科省と気象庁は2月15日、「活断層の地震に備える」(全国版・地方版)を作成した。先の熊本地震での被害を参考に、陸域の浅い地震が起きる仕組みや主要活断層の評価、過去の被害などを解説している。また、河田恵昭中央防災会議委員が2月7日、自民党憲法改正推進本部で講演。首都直下地震・南海トラフ巨大地震・東京水没は日本を衰退させる「国難災害」だと指摘。このため、憲法改正で非常事態条項を明記するとともに、「防災省」と「地方防災庁」(複数地域)を設置すべきだと訴えた。
◎ふるさと納税の返礼品見直しを表明 ― 高市総務相
 高市総務相は2月14日の閣議後会見で、ふるさと納税の返礼品について、不適切な事例は個別に見直しを働きかけるが、「まだ問題があると認識している。あらゆる課題を一度洗い出し、適宜、有識者や自治体実務者の意見も参考にしながら課題がどこにあり、どう改善できるか検討。春を目途に進めたい」と述べた。ふるさと納税の返礼品をめぐり自治体間で競争が過熱、一部自治体で商品券を送付しその多くがネット販売されている事態が生じている。なお、総務省では昨年4月に換金性の高いものなどふるさと納税の趣旨に反する返礼品を行わないよう各自治体に通知している。
 一方、総務省は2月10日、2016年に活動した地域おこし協力隊が4,158人と、前年に比べ1.5倍も増加したと発表した。また、受け入れた自治体も863団体と前年より1.3倍増えた。なお、隊員のうち74%が20~30代で、男性が62%を占める。高市総務相は同日の記者会見で、「今後は5,000人程度まで増加を想定しながら、隊員のなり手掘り起こし、サポート体制の強化、企業支援などに取り組みたい」と述べた。
◎「骨太の方針」へ審議開始 ― 経済財政諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は2月15日、「今後の課題・取組」を決めた。夏の「骨太の方針」策定に向け、人材への投資、潜在成長率の引上げのほか、社会保障改革、財政健全化への取組強化などに重点的に取り組む。うち、財政健全化では、社会保障制度改革や国と地方のシステム改革などを挙げた。国・地方関係では、十分に活用されていないストックの効率的活用(インフラ、土地、空き家、データ等)などを検討する。
 これを受けて、諮問会議の専門調査会として設置された「経済・財政一体改革推進委員会」は2月16日、「社会保障」「国と地方のシステム」など4ワーキンググループの当面の検討事項を決めた。国・地方WGでは、①地方財政の現状評価と補助金等の効果検証のしくみ②インフラマネジメントの生産性・効率性向上を図るデータプラットフォーム構築等の推進 ― などを検討。併せて、「工程表」に明記された地方財政のトップランナー方式、まち・ひと・しごと創生事業費の「必要度」から「成果」への配分シフト、窓口業務の民間委託などの進捗状況を検証する。
◎2017年の提案募集の実施決定 ― 地方分権有識者会議
 政府の地方分権改革有識者会議は2月20日、2017年の提案募集の実施を決めた。提案市町村は毎年増えているが、3年間の提案市町村は133団体(8%)に留まっているため、さらに提案の掘り起こしを進めるほか、提案の際の参考に3年間の全提案の内容・最終的な調整結果をデータベース化し公表する。また、対応方針で「自治体の意向を踏まえ検討」とされた事項についてフォローアップを強化する。なお、政府は2月17日、第7次地方分権一括法案をまとめた。近く閣議決定し国会に提出する。認定こども園の認定事務権限を都道府県から政令市に、指定障害福祉サービス事業者等の届出受理・立入検査等の事務権限を中核市に移譲、都道府県による土地利用基本計画の策定・変更の国への協議を意見聴取に見直すなど権限移譲4法律・義務付け等見直し6法律を一括改正する。
 一方、全国知事会は2月2日、第3回地方分権研究会を開催した。同会は、新たな地方分権改革を展望するため16年に発足させた。今回は、地域のガバナンスと住民自治をテーマに、座長代理の横道清孝政策研究大学院大学副学長が講演し意見交換した。また、全自治体を対象に昨年暮れに実施した「支障事例アンケート」結果の概要を報告した。
◎地域公共交通の活性化で「議論の整理案」 ― 国交省
 国交省の地域公共交通活性化・再生将来像懇談会は2月21日、「議論の整理」をまとめた。モータリゼーションの進展や人口減少で地域公共交通の利用者が減少・路線廃止が続いているが、関係者の危機意識が希薄だと指摘。国には、地域公共交通活性化再生法の周知徹底を要請。自治体には、交通担当がいないなど公共交通の理解不足から地域間格差が拡大しているとし、活性化再生法に基づき近隣市町村・バス事業者との連携や住民も含めた関係者全体の協議会開催などを求めた。地域住民には「公共交通は乗らなければなくなるもの」との意識共有が不可欠だとし、住民が主体となってコミュニティ交通を企画・運営することが必要だと強調した。なお、内閣府が2月11日公表した「公共交通に関する世論調査」では、鉄道・バスに68%が「不満がある」と回答。運行本数が少ない、遅延するなどで不満が高い。ただ、39%が「鉄道・バスがもっと利用しやすいと出かける回数が増える」と回答した。
 一方、政府は2月20日、関係閣僚会議を開き「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決めた。2020年東京パラリンピックに向け、来年度中に交通バリアフリー基準・ガイドラインを改正するほか、学習指導要領を改訂し「心のバリアフリー」の指導を強化する。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)