月刊『自治総研』
2017年4月中央の動き
中央の動き |
◎過疎地域の集落対策のあり方で提言 ― 総務省 ◎地方公務員法改正案などを閣議決定 ― 政府 政府は3月7日、地方公務員法・地方自治法改正案を閣議決定した。自治体の臨時・非常勤職員が約65万人に増加する中、通常の事務職員を守秘義務が課されない「特別職」として採用するなどの混乱もみられるため任用を厳格化する一方、待遇改善を盛り込んだ。具体的には、特別職を「学識経験等に基づき助言、調査等を行う者」に、臨時的任用は「常勤職員に欠員が生じた場合」にそれぞれ厳格化する。一方、一般職の非常勤職員には「会計年度任用職員」の規定を設けてその採用や任期等を明確化する。併せて、同職員には期末手当を支給できるよう給付規定を整備。施行は、自治体側の準備に配慮し2020年4月1日とした。 一方、政府の働き方改革実現会議は3月28日、「働き方改革実行計画」を決めた。同一労働同一賃金では違いがなければ同一、違いがあればそれに応じた支給を求めるとし、関連法案を踏まえガイドラインを確定。長時間労働の是正では、残業上限を月45時間・年360時間とし、違反には罰則も科す。同日の会合で、安倍首相は「日本の働き方を変える改革の歴史的な一歩」と強調するとともに、計画の進捗状況を点検する「フォローアップ会合」を設置する方針を示した。 ◎地方自治法改正案を閣議決定 ― 政府 政府は3月10日、地方自治法等改正案を閣議決定した。昨年の第31次地方制度調査会答申を受けたもの。ガバナンス強化のため、都道府県・政令市の長は「内部統制に関する方針」を策定(市町村長は努力義務)し、毎年、内部統制評価報告書を議会に提出する。また、監査委員が「監査基準」を定め公表するとともに、「勧告制度」「監査専門委員」も創設する。なお、議選監査委員の選任義務付けは緩和。併せて、決算不認定の場合の長から議会への報告規定も整備する。また、長や職員等の損害賠償責任について、善意かつ重大な過失がないときは、条例で賠償責任額を限定、それ以上の額を免責することを定めることができるとした。なお、同免責の参酌基準・下限額は国が設定する。併せて、議会が損害賠償請求権を放棄する場合は監査委員の意見聴取を義務付けた。このほか、地方独立行政法人の業務に窓口関連業務を追加する。 なお、全国市長会は同法案に対し「国が定める免除に関する参酌基準・免除の下限は萎縮効果の低減も踏まえ適切に設定する」よう求める意見を発表した。 ◎憲法審査会が審議を再開 ― 衆議院 衆議院憲法審査会は3月16日、憲法改正議論を再開した。「参政権の保障」に関連して①1票の格差や投票率の低下など選挙制度②緊急事態の国会議員の任期の特例や解散権 ― のあり方をテーマに議論。また、3月23日には同テーマについて有識者から意見聴取した。16日の各派代表の意見表明では、自民党の上川陽子氏が大規模災害時の国会議員任期を延長する緊急事態条項創設の必要性を強調したが、民進党の枝野幸男氏は「単純に結論を出せる問題ではない」、公明党の北側一雄氏も「慎重な議論が必要だ」と述べた。有識者からは同テーマについて賛否両論が述べられた。 一方、全国知事会の地方分権研究会は3月29日、憲法と地方自治をテーマに議論した。宍戸常寿東京大学教授が立法プロセスへの地方の参画、参議院のあり方と合区問題について講演。日本国憲法の「地方自治の本旨」に国・広域自治体・基礎自治体の役割分担を定めるとともに、都道府県の憲法上の位置付けをこれまで以上に明確にすべきだと指摘。併せて、地方議会の議論がこれまで不十分だったとし、長と議会の関係を統治プロセス全体の観点から検討すべきだとした。また、自民党の憲法改正推進本部は3月14日、有識者ヒアリングの一環として斉藤誠東京大学教授から「地方自治と憲法の関係」について意見聴取した。 ◎マイナンバーの本格運用10月に延期 ― 総務省 総務省は3月17日、マイナンバーカードによる公的個人認証サービス(情報連携)の本格運用を当初の7月から10月頃に延期する方針を明らかにした。併せて、「マイナポータル」の本格運用も同じく延期する。自治体窓口での混乱等を防ぐためで、1月の実施予定を7月に延期したが再度の延期となった。これに関連して、同省はマイナンバーカードの利活用を年度別に一覧表にした「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ」を公表した。同日の記者会見で高市総務相は、「情報連携は予定通り今年夏からはじまるが、自治体職員の事務習熟の期間も必要だと思い、マイナポータルと情報連載は7月から3か月ほど試行的運用期間とし、秋頃に両者の本格運用を開始する」と述べた。また、マイナンバーカードの交付枚数が約1千万枚(8%)に留まっていることについて「まだ普及枚数としては不十分。本日、市町村別の交付枚数率を公表した」と述べ、交付率トップの都城市などのノウハウを横展開したい考えを示した。 一方、内閣府は3月27日、RESAS(地域経済分析システム)アプリコンテスト」の最優秀賞に「RESAS×オープンデータ ~ひなたGISで照らす故郷の未来」(宮崎県情報政策課・宮崎市)を選んだ。 ◎大災害時の市町村行政機能確保で報告 ― 総務省 総務省は3月21日、大規模災害時の市町村行政機能の確保検討会報告書を発表した。現在、大災害時に政府が首長等幹部の安否や庁舎の損壊・移転状況などの基礎的情報を把握する仕組みがない。このため、大災害時に、市町村行政機能のうち①トップマネジメントの機能②人的体制の充足③物的環境(庁舎施設等) ― を早期(12~24時間以内)に把握できるよう、被災市町村が簡単に記入・集計できる「簡単なチェックリスト方式」の導入を提言。その「様式」案も示した。また、これらの報告がない場合は都道府県・総務省が電話や現地派遣等で直接状況を把握すべきだとした。併せて、都道府県・市町村にこの仕組みの担当部署を予め決定するよう求めた。これを受けて、高市総務相は3月21日の閣議後会見で、早期に「災害時の体制」整備を全自治体に要請すると述べた。 また、総務省消防庁は3月15日、消防の広域化・消防の連携・協力に関する答申を発表した。人口減少や災害の多様化に対応するため、消防指令の共同運用や消防車両の共同整備、境界付近の消防署所の共同設置、さらに高度・専門的な違反処理・特殊火災原因調査などの予防業務の連携・協力などを提言。2017年度から6年間で進めるべきだとした。 ◎地方分権改革シンポジウムを開催 ― 内閣府 内閣府は3月23日、都内で地方分権改革シンポジウムを開催した。地方分権改革普及の一環として開催したもので、山本地方創生担当相が「シンポジウムを契機に、それぞれの地域の未来について改めて考え、地方の声を上げていただきたい」とあいさつ。また。地方分権改革有識者会議の神野座長が「地域の未来を創る地方分権改革」と題して基調講演。これまでの地方分権改革を総括した上で、今日の地方分権改革は「地方の現場で実践し、その成果を住民に還元する段階だ」と指摘。このため、「提案募集方式」を活用して現場レベルに残る具体的な支障を取り除くなど「行政サービスに住民が合わせるのでなく、住民に行政サービスを合わせる」よう要請。「地域住民の地域住民による地域住民のための分権改革が地域社会の未来をつくる」と訴えた。次いで、取組事例として佐藤宇都宮市長が、提案募集制度を活用して保育士等の給与改善手続きを迅速化したほか、条例制定権の活用で自転車レーンの延長日本一を実現したなどと紹介。このほか、「子ども・子育て」「地方創生」をテーマにパネルディスカッションが行われた。 一方、農水省は3月24日、農地転用許可権限等の指定市町村に岩手県紫波町、長野県高森町、四日市市、亀山市、三重県多気町、広島市の6団体を指定(第4回)した。うち、紫波町、高森町、広島市は農振法に基づく開発許可も移譲される。第5次地方分権一括法で4㌶超の農地転用が都道府県に権限移譲されたが、農水省が指定する市町村にも同様の権限が移譲される。今回の指定で41団体が指定市町村となった。 ◎行政手続コストの削減方針を決定 ― 政府 政府の規制改革推進会議は3月29日、行政手続コストの削減方針を決めた。行政手続簡素化の3原則に、①行政手続の電子化の徹底②同じ情報は一度だけ③書式・様式の統一 ― を挙げた。対象には、申請・届出、調査・統計の協力、手数料・税の納付、書類の作成・保存・表示義務、本人確認事務など9手続を挙げた。会議で、安倍首相は「行政手続コストの20%以上の削減を目指す」とし、各省庁に今年6月までの削減計画策定を指示。併せて、「自治体ごとに書式・様式が異なり多くの作業時間がかかる実態がある。国と連携して改善するよう協力を要請する」と述べた。 一方、総務省は3月28日、戸籍謄本の提出を求める申請手続の見直しを関係省に勧告した。多くの手続で戸籍謄本の提出を求めているが、住民票だけで本人確認は可能だとして公有水面埋立免許など14手続について戸籍謄本の提出を不要とするよう法令改正等を勧告。また、結婚等で氏名の変更を戸籍謄本で確認する医師免許の申請など26手続については氏名等の変更がある場合のみ戸籍謄本を求め、その他は住民票などで確認するよう勧告した。併せて、相続時など戸籍謄本を返却していない手続についても返却すべきだとした。
|
(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
|