地方自治総合研究所

MENU
月刊『自治総研』

2017年5月中央の動き


中央の動き


◎ふるさと納税返礼品で通知 ― 総務省
 総務省は4月1日、ふるさと納税の返礼品送付について各自治体に通知(総務大臣通知)した。自治体間で返礼品をめぐる競争が過熱しているとして、改めて金銭類似性・資産性が高い・高額なものなどの送付をしないよう要請。さらに、「3割を超える返礼割合を送付している地方団体は速やかに3割以下とする」よう是正を求めた。高市総務相は、3月31日の記者会見で、趣旨に反する事例に対して「今後は必要に応じ、総務省として個別の団体に直接、見直しを強く働きかけていくことを予定している」と強調した。ちなみに、2015年度のふるさと納税は約726万件・1,653億円で、前年度より約4倍増加。うち91%の団体で返礼品を送付、その費用は納税額の約4割を占めている。
 これを受けて、地方側では「制度本来の趣旨を踏まえ適切に対応する」(全国市長会)、「責任と良識ある対応を申し合わせる」(全国町村会)とのコメントを発表したが、一部知事からは「市町村が決める話し。(総務省要請は)望ましくない」(上田埼玉県知事)、「過熱気味でもいいのではないか」(吉村山形県知事)などの発言もある。


◎人口推計・将来人口を発表 ― 総務省・厚労省
 総務省は4月14日、国勢調査に基づく人口推計(2016年10月現在)を発表した。総人口は1億2,693万3千人で、前年比16万2千人(0.1%)減と6年連続減少。うち、65歳以上人口は3,459万1千人で、初めて27%を超えた。都道府県別では40道府県で減少。秋田、青森、高知の3県で減少率が1%を超えた。
 また、厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は4月10日、2015~65年の人口を推計した日本の将来推計人口を発表した。総人口は15年の1億2,709万人が53年には1億人を割り、65年には8,808万人になる。うち、老年(65歳以上)は15年の3,387万人が42年には3,935万人に増加するが、以後は減少に転じて65年には3,381万人となる。その割合は15年の27%が36年に33%、65年には38%、2.6人に1人となる。一方、年少(0~14歳)は、21年に1,400万人台に減少、56年には1,000万人を割り、65年には898万人に。その割合も15年の13%が65年には10%に低下する。生産年齢人口(15~64歳)も、15年の7,728万人が65年には4,529万人に減少。その割合は61%から51%に低下する。
◎議員報酬の在り方検討へ ― 全国町村議会議長会
 全国町村議会議長会は4月14日、町村議会議員の議員報酬等の在り方検討委員会を発足させた。最近、議員のなり手不足と高齢化が深刻化している。2015年4月実施の統一地方選挙では、373町村議会で改選されたが、うち89町村(24%)で立候補者が定数を下回り無投票で当選。また、同会調査(2016年7月現在)では町村議員の平均年齢は63歳で、60~70歳未満が54%、70~80歳未満が19%を占める。一方、議員報酬月額は約21万3,000円で、政務活動費の条例制定は194町村(21%)に留まる。このため、同議長会では、議員のなり手不足の原因の一つが低額な議員報酬にあるとし、現在の町村議員にふさわしい議員報酬の在り方を検討することにした。約2年かけて報告をまとめる。
 一方、全国知事会は4月14日、会長に山田京都府知事を選任した。3月に立候補を締め切り、無投票での当選となった。2003年の会長選挙導入以降、4期連続当選は初めて。任期は2年。また、全国市長会は4月3日の会長立候補締切りで、松浦防府市長の就任が決まった。6月の全国市長会議で正式決定する。
◎待機児童対策会議で自治体から意見聴取 ― 厚労省
 厚労省は4月17日、待機児童対策会議を開き、川口市や足立区、茨木市、西宮市など首都圏・関西圏等の9首長と意見交換した。その中で、首長からは隣接市の高い地域手当などで保育士の争奪戦となっているとして地域手当の見直しを求めた。これを受けて塩崎厚労相は、男性の育休取得促進など働き方改革が待機児童解消につながるとの認識を示し、「今後も工夫を続けたい」と述べた。なお、同省が発表した待機児童数は2016年4月の2万3,553人が10月には2万4,185人に増えた。また、15年度の認可外保育施設調査によると、ベビーホテルは1,579か所、その他の認可外保育施設が5,344か所で、前年に比べそれぞれ170か所、945か所減少。入所児童数はベビーホテル3万121人、その他認可外保育施設が14万7,756人で、前年より2,402人、2万1,251人減った。
 一方、自民党の人生100年時代の制度設計特命委員会は4月13日、初会合を開き、「子ども保険」の制度化の検討を始めた。社会保険料を上乗せして幼児教育や保育の無償化の財源とするもので、夏にも報告をまとめ経済財政諮問会議の骨太方針に反映させる。
◎国と地方の在り方めぐり議論 ― 衆議院憲法審査会
 衆議院憲法審査会は4月20日、「国と地方の在り方(地方自治等)」をめぐり参考人4人から意見聴取した。5月11日には同テーマで各党の自由討議を行う。
 参考人質疑では、大津浩明治大学教授が国家意志決定権力の一元的集中を避けるための「対話型立法権分有」が「地方自治の本旨」の第一の要素だとし、地域の立法機能など憲法改正私案を提案した。佐々木信夫中央大学教授は、規律密度の高い地方自治法を廃止し自治基本法に変え、多様な自治制度を地域が選択できるようにすべきだとした。また、都道府県制度を抜本的に見直し道州制移行と「州制度移行国民会議」の設置を本格的に検討すべきだと提案した。これに対し、斎藤誠東京大学大学院教授は、地方自治法(自治体に関する法令の立法原則)や自治体の司法的救済を訴える権利を定めるヨーロッパ自治憲章を憲法レベルで規定するよう提案。併せて、首長を議会が選択できることも模索すべきだとする一方、「集権的な道州制には反対だ」と明言した。このほか、小林武沖縄大学客員教授は、「憲法第八章を改正する事情は存在しない」とした上で、米軍基地の建設に住民が反対している事例を挙げて「沖縄では国と地方の関係のあり方が極端に歪められている」と批判した。
◎当面の地方行財政の課題など説明 ― 総務省
 総務省は4月21日、全国都道府県財政課長等会議を開き当面の地方行財政について説明した。その中で、黒田武一郎地方財政局長は、地方一般財源総額は2018年度まで総額確保されるが、今後は「政策の成果測定の要求が強まる」として、公共施設総合管理計画策定などのガバナンスを要請。同時に、全自治体の基金積み立てが過去最高となっているため「赤字国債・臨財債で財源を確保する中での基金積み立てに問題点も指摘されている。これも念頭に財政運営に対応する」よう要請した。このほか、担当課長等が、①地方行政サービス改革の見える化・比較可能な公表に向け5月からヒアリングを実施②熊本地震では指定管理施設にも避難者が集まったため、避難所運営の基本方針等を指定管理者間で決める ― ことなどを求めた。
 一方、経済財政諮問会議の下部組織、経済・財政一体改革推進委員会は4月28日、各ワーキンググループが示した今後の対応方向などを議論した。なお、「国と地方のシステムワーキング・グループ」では、地方交付税の制度改革・補助金等の経済効果の検証、十分に活用されていない空き家・農地等の効率的活用などについて議論を進めている。
◎森林環境税と地方消費税清算で検討会 ― 総務省
 総務省は4月21日、森林吸収源対策税制に関する検討会を発足させた。昨年暮れの与党税制改正大綱で「森林環境税創設に向けて具体的な仕組みを検討し2018年度税制改正において結論を得る」とされたことを受けたもの。市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てる森林環境税(仮称)創設に向け、①税の目的・性格、基本的な枠組み②税収の使途③税収の配分の考え方(配分先、配分の基準)④都道府県等の超過課税との関係 ― などを検討、秋に「最終とりまとめ」を行う。なお、同税制について全国市長会・全国町村会は早期導入を要請しているが、全国知事会は高知県を皮切りに35団体(15年度)で森林環境税を独自課税しており、「都道府県が積極的にかかわってきていることも踏まえた仕組み」とするよう要請している。
 また、4月25日に地方消費税に関する検討会を発足させた。地方消費税の税収を最終消費地の都道府県に適切に帰属させるための清算基準などを検討する。
◎非常勤職見直しでマニュアル作成へ ― 総務省
 総務省は4月21日開催した全国都道府県財政課長等会議で、今国会提出中の地方公務員法等改正案を踏まえ臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保を要請。その中で、新たに設ける「会計年度任用職員」の任用や勤務条件など待遇改善に向けたマニュアルを夏までに策定する方針を明らかにした。また、同職員に期末手当の支給が可能となるが、高市総務相は4月13日の参院総務委員会で「(現時点で全国の財政負担見積もりは困難だが)地方団体の実態を踏まえ地方財政措置をしっかり検討する」と述べた。
 一方、人事院は4月19日、退職金の官民比較調査の結果、民間(2,459万円)より公務(2,537万円)が78万1,000円(3.1%)上回っているとし、政府に退職給付水準の見直しを求めた。また、人事院は5月1日から国家公務員の給与改定勧告の基礎となる民間給与実態調査を実施すると発表した。
◎これからの移住・交流で中間報告 ― 総務省
 総務省の「これからの移住・交流施策のあり方検討会」は4月25日、中間報告をまとめた。地方圏域では人口減少・高齢化で地域づくりの担い手不足が深刻化しているが、地域外の人材もその担い手の重要な役割を果たしうるとして「定住・移住人口」でもない、地域の人々と多様に関わる「関係人口」との継続的・複層的なネットワークの形成を提案した。また、総務省は同日、都市部の若者が一定期間、地方で働きながら地域住民と交流などを実施する「ふるさとワーキングホリデー」に石川、福井、岐阜、京都、鳥取、島根、岡山、高知、福岡、宮崎の10府県を指定。さらに、「お試しサテライトオフィス」モデル事業(お試し勤務)に北海道下川町、群馬県みなかみ町、南房総市、高山市、南伊豆市、岡崎市、五條市など5市町村、鹿児島県伊仙町の8地域を指定した。
 一方、内閣府は4月11日、国の研究機関・研修機関(50機関)の地方移転の年次プランを発表した。移転内容と目指す将来像・今後の取組・推進体制についてそれぞれ5~10年の年次プランを盛り込んだ。なお、総務省は4月3日、統計データ利活用センター(仮称)を和歌山県に設置し、統計ミクロデータ提供などの業務を18年度から実施すると発表した。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)