月刊『自治総研』
2017年8月中央の動き
中央の動き |
◎事務次官に安田充氏など幹部人事を発令 ― 総務省 ◎2016年度のふるさと納税の実態を発表 ― 総務省 総務省は7月4日、2016年度のふるさと納税調査結果を発表した。受入額は約2,844億円で前年度に比べ約1.8倍増加、受入件数も約1,271万件で同1.7倍増えた。受入額トップは都城市の73億円。また、94%の団体が返礼品を送付している。一方、7月28日発表したふるさと納税の税額控除額(16年1~12月)は1,767億円で、東京都466億円、神奈川県187億円、大阪府151億円、愛知県128億円で多い。なお、高市総相は7月25日の記者会見で、群馬県草津町長の返礼品「くさつ温泉商品券」継続の要請について「返礼品競争を放置していては、ふるさと納税制度の継続ができなくなる」と述べた。同省は、今年4月の返礼品是正を求めた通知を踏まえ約200団体で個別指導。約9割は見直すが20団体弱が「見直しの意向無し」と回答している。 また、ふるさと納税制度を考える初の全国首長会議が7月12日、都内で開催された。「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」などが主催、120自治体が参加した。会議では、竹中北海道上士幌町長や黒田長崎県平戸市長がふるさと納税の取組状況などを紹介。総務省の池田市町村税課長は総務省通知に沿った返礼品過当競争是正などを要請したが、西川福井県知事は返礼品過当競争も「やがて落ち着く」と述べた。 ◎地方分権改革の地方提案を発表 ― 内閣府 内閣府は7月7日、2017年の提案募集方式の地方提案が前年を8件上回る311件あったと発表した。市区町村からの提案が130団体に増加、共同提案も増えた。行政分野では医療・福祉関係が115件と最も多い。マイナンバー利用事務の情報連携項目の追加(山口県全市町村等)、地域公共交通の制度・運用の見直し(全国市長会等)、罹災証明制度の見直し(大分市等)、認証ドローン等の飛行中止の制度化(山梨県山中湖村等)などが提案された。内閣府は関係府省と調整し、年末に対応方針を閣議決定する。一方、全国知事会は7月21日、地方分権推進特別委員会の報告をまとめた。国会に「地方分権推進委員会」を常設、提案募集制度では国の直接執行事務も対象とするよう求めた。 また、総務省は7月7日、広域連携が困難な市町村の補完のあり方研究会報告を発表した。都道府県が市町村の事務を補完する「事務の代替執行」は活用が低調で小規模市町村のニーズとも乖離しており、新たな支援手法が必要だと指摘。このため、①都道府県が市町村と一体となって行政サービスを提供する「協働的な手法」②小規模市町村が規模能力や実情に即した事務実施を可能とする「処理水準・手法の柔軟化」 ― について評価と課題などを整理した。 ◎都市のスポンジ化対応で中間まとめ ― 国交省 国交省は7月10日、「都市のスポンジ化」への対応方策の中間とりまとめを発表した。人口減少で都市内部でも空き地・空き家がランダムに発生、コンパクトシティ推進の支障となることから、その対応と予防措置を提案した。既に発生したスポンジ化には、原則市場メカニズムに委ねる一方、行政は近隣住民の隣地統合や有効活用する者への引き渡しなど情報集約とマッチングの発揮、サービス施設休廃止による都市機能喪失防止のため行政が把握・利用調整できる仕組み検討などを提案。また、予防策では土地利用に関するルールを官民で設定しエリアマネジメントするほか、地域住民・民間団体等による都市計画実現に寄与する活動を認定・支援する仕組み検討などを求めた。 また、国交省の地域公共交通活性化・再生の将来像懇談会は7月21日、提言を発表した。交通事業者には生産性向上や増収策に向け路線やダイヤル見直し、スクールバス等の一本化、貨客混載の活用などを求める一方、自治体には、地域公共交通ビジョンを作成するなど交通政策への取組強化を求めた。併せて、地元住民にも「乗って残す」必要性を自覚し、住民が「マイレール」「マイバス」意識を持って自ら地域公共交通を積極的に利用するよう求めた。 ◎買物弱者で実態調査、関係府省に通知 ― 総務省 総務省は7月19日、買物弱者の実態と対応策を調査し、関係府省に改善策を通知した。買物弱者の実数は農水省約372万人、経産省約700万人程度とばらばらだが、今後も人口減少等から増加が推測される。また、買物弱者対策の事業者(67市町村の183事業者)の実態をみると、実施主体は営利企業(75)、商工会(25)、社会福祉法人(23)など様々で、193取組のうち黒字は87取組、30取組は補助金等で赤字を補てん、中には赤字を自己負担し取組を継続している例もあった。このため、自治体は買物弱者の実態を把握、関係府省は各所管行政と買物弱者対策の関わりを整理し関係施策の情報を共用するよう提言。併せて、移動販売許可・移動販売車の設置基準の見直しも求めた。 一方、総務省は7月5日、住民基本台帳に基づく人口(2017年1月1日)を発表した。総人口は1億2,558万3,658人で前年より30万8,084人、0.24%減少した。8年連続の減少で、減少数は過去最大。また、出生数は98万1,202人で初めて100万人を割った。都道府県別では、6都県で前年より増加、41道府県で減少した。東京が7万7,400人増加した一方、北海道は3万3,593人減少した。また、市区では78%の635団体で減少、町村では88%の822団体で減少している。 ◎2018年度予算概算要求を受け申し入れ ― 総務省 政府は7月20日、2017年度予算の概算要求基準を閣議了解した。年金・医療で高齢化等の増加6,300億円を認めるが、財政健全化計画に沿って社会保障全体の伸びを5,000億円に圧縮する。その他の経費も一律10%減とする一方、「人づくり革命」に向けた人材投資や生産性向上施策には約4兆円の特別枠を設ける。これを受けて、総務省は同日、2018年度予算の地方財政措置について各府省に申し入れた。幼児教育・保育の早期無償化と待機児童解消の財政措置や国民健康保険の円滑な都道府県移行と財政支援拡充の確実な実施、老朽化対策も含めた社会資本整備総合交付金制度の改善などを要請した。一方、内閣府が7月18日発表した中長期経済財政試算では、2020年度の基礎的財政収支は8.2兆円の赤字で、政府目標の黒字化達成にはさらなる税収増か歳出削減が必要となる。 一方、総務省は7月25日、2017年度普通交付税大綱を閣議報告した。総額は15兆3,501億円(前年度比3,482億円、2.2%減)で、まち・ひと・しごと創生事業費で「取組の成果」に応じた算定にシフトさせたほか、トップランナー方式で新たに2業務を追加した。なお、不交付団体は前年度より1団体減の76団体となった。交付団体となったのは栃木県上三川町、羽村市、富士市、佐賀県玄海町の4団体、不交付団体になったのは宮城県女川町、八潮市、摂津市の3団体。 ◎町村総会など町村議会のあり方で研究会 ― 総務省 総務省は7月27日、町村議会のあり方研究会の初会合を開いた。深刻な地方議員のなり手不足解消に向け兼職・兼業禁止の緩和や、夜間・休日議会の開催、議員待遇の改善、さらに町村総会のあり方などを検討する。なお、同研究会発足の一因となった高知県大川村議会は7月26日、議会存続の可能性が出たとして「村総会」検討の保留を決めた。また、総務省は7月7日、地方議会・議員に関する研究会報告書を発表した。自治体の多様性を踏まえ、実態に合わせた選挙制度を検討すべきだとし、①市区町村議会では比例代表選挙、制限連記制を導入しつつ選挙区設置を進める②都道府県議会は原則一律の選挙制度とし、比例代表選挙を基本に選挙区選挙の並立制・併用制などを提案した。 一方、自民党の地方議員年金検討プロジェクトチームは7月6日、「地方議員への年金・医療保険の適用に関する新制度案」を決めた。今後、各党と調整した上で関係法案を提出したい考え。地方議員年金は、財政難から2011年に廃止されたが、全国都道府県議会議長会など議会3団体が議員年金復活(厚生年金への加入)を自民党に要請していた。なお、議員年金復活を求める意見書採択議会が1,000団体を突破した。 ◎岩手で全国知事会議を開催 ― 全国知事会 全国知事会議が7月27・28日の両日、盛岡市で開催された。東日本大震災の被災地開催を踏まえ「岩手宣言 ― 千年国家の創造」や各種提言などを決めた。 岩手宣言では、「被災地に寄り添い支え続ける」「災害を風化させず次世代につなげる」「あらゆる災害に負けない『千年国家』を創りあげる」と謳った。オリンピック・パラリンピック施策の提言では、聖火リレーに併せて文化プログラムを開催するなど大会効果を全国に波及させる。一方、地方大学の特別決議では、特色ある地方大学への改革支援と併せて盛り込んだ「東京の大学の新増設抑制と地方移転促進」に東京都が反対。「大学の定員増の抑制」に修正した。また、地方税財源の充実・確保の提言では、地方一般財源の総額確保と併せ、地方の基金残高増加を理由にした地方財政余裕論は「断じて容認できない」とした。一方、人口を重視した地方消費税の清算基準見直し、森林吸収源対策の税財源確保では、東京都などが反対した。このほか、真の地方自治確立の決議では、参議院の「合区問題」の抜本的解決と憲法92条の「地方自治の本旨」を具体的に規定するよう求めた。これを踏まえ、山田会長は憲法改正の知事会案を議論するプロジェクトチーム設置を提案し了承された。
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(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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