地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2017年9月中央の動き


中央の動き


◎自治体の公益通報でガイドライン ― 消費者庁
 消費者庁は8月1日、公益通報への対応で自治体向けガイドラインを作成した。通報の放置や秘密漏えいなど不適切な通報対応の防止と適切な対応策について内部職員・外部労働者別にまとめた。通報対応の仕組み(内部規定など)の部署横断的な整備と、通報を受け付ける総合的な「通報窓口」の設置を求めたが、専門窓口設置が困難な場合も、職員倫理・労務環境の相談窓口や、総合窓口・消費生活センターなど既存の窓口の活用、他自治体との共同設置なども可能だとした。また、通報・相談の秘密保持・個人情報保護を徹底するため、通報対応の各段階ごとに遵守すべき事項などを予め取り決めておくよう求めた。このほか、通報への対応では「通報の受付・受理を拒んではならない」との基本を示した上で、通報に基づく調査の実施と調査結果に基づく措置、公表などの留意点を示すとともに、通報者への処分・嫌がらせなどについても適宜フォローアップし確認するよう求めた。
 なお、消費者庁調査によると、市町村の通報・相談窓口の設置は内部対応が52%、外部対応は31%と少なく、うち高知県ではそれぞれ15%、6%だった。同庁は今後、ガイドラインを踏まえた内部規定の策定や制度の整備などを各自治体に働きかける。


◎内閣改造で総務相に野田聖子氏 ― 政府
 第3次安倍第3次改造内閣が8月3日発足、総務大臣に野田聖子氏が就任。また、8月7日には副大臣に奥野信亮氏(地方行財政・行政評価等)、坂井学氏(情報通信・郵政・内閣府副大臣兼務)、総務政務官に小倉將信氏、山田修路氏、小林史明氏がそれぞれ就任した。野田氏は、1987年に岐阜県議会議員、93年に衆議院議員(旧岐阜1区)に当選(8回)、96年の小渕内閣で郵政大臣に閣僚史上最年少で就任、2012年に自民党総務会長など歴任。8月4日の記者会見で、「日本全体のあらゆるシステムを変えねばならない時期がきている。実は、新規で地方の経済活性化、ICTなど足腰の強い政策、新たな財源捻出について温めてきたものがあり、みなさんにお披露目したい」と述べた。また、8月25日の記者会見で、ふるさと納税返礼品の見直し要請について「どういう効果があったのか確認する」と述べ、柔軟に対応する方針を示唆した。
 一方、自民党は8月3日、党5役人事を決定した。二階俊博幹事長、高村正彦副総裁が留任、政務調査会長に岸田文雄氏、総務会長に竹下亘氏、選挙対策委員長に塩谷立氏が就任した。また、政務調査会の総務部会長に赤間二郎氏、憲法改正推進本部長に保岡興治氏、道州制推進本部長に根本匠氏が就任した。
◎月例給とボーナス引上げを勧告 ― 人事院
 人事院は8月8日、2017年度の国家公務員の月例給を0.15%(631円)、ボーナスを0.1カ月引き上げるよう国会と内閣に勧告した。ボーナスは成果主義強化の一環として勤勉手当に配分する。また、給与制度の総合的見直しでは引き続き俸給表や諸手当の見直しを実施するとした。この結果、年間給与は平均5万1,000円増える。月例給・ボーナス両方の引上げ勧告は4年連続。また、非常勤職員のボーナスを増額するほか結婚・忌引休暇で常勤職員と待遇格差がないよう見直すとした。一方、長時間労働の是正では各府省の職員団体の意見を聞きながら措置を検討するとの指摘にとどめた。一宮人事院総裁は、談話で「4年連続の給与引上げは職員の士気向上につながる」と強調した。なお、財務省・総務省は同日、人勧どおり引き上げた場合、国の人件費は約520億円、地方は約1,370億円、計約1,890億円増加すると発表した。
 一方、自治労は同日、人勧に対する見解を発表した。月例給・ボーナスともに4年連続の引上げ勧告を「組合員の期待にこたえる内容」と評価した上で、ボーナス引上げを勤勉手当にあてたことは「不満が残る」などと指摘。今後の2017秋季闘争で首長との交渉・合意による賃金確定をはかるとした。
◎地域の気象防災業務強化で報告書 ― 気象庁
 気象庁は8月10日、自治体の防災対応の判断に役立つ防災気象情報の改善策などを盛り込んだ報告書を発表した。近年の多発する自然災害に対応するため、各気象台長と首長の「顔の見える関係」構築や市町村ごとの気象・災害特性・過去の災害履歴などを盛り込んだ「気象防災データベース」(仮称)を整備。さらに、緊急時に自治体を支援できるよう予め応援計画を策定するとともに、災害発生時には都道府県・市町村に「気象防災対応支援チーム」(仮称)を派遣する。また、国交省は8月25日、洪水時に特化した低コストの水位計の試験計測を開始すると発表した。中小河川では、予算的制約などから水位計を設置していない河川が多く、逃げ遅れによる人的被害も発生。このため、2018年度から国管理河川への設置を進めるほか、都道府県管理の中小河川への設置も支援する。
 一方、8月29日早朝の北朝鮮弾道ミサイル発射に即応した全国瞬時警報システム(Jアラート)の情報伝達が北海道・東北の12道県・617市町村で実施されたが、総務省消防庁は7道県16市町村で音声が流れないなどのトラブルがあったと発表した。政府は北朝鮮のグアム島周辺への発射計画発表を受けて8月18日に四国・中国9県で送受信訓練をしたばかりだった。
◎新下水道ビジョン加速戦略を策定 ― 国交省
 国交省は8月10日、国が今後5年程度で実施すべき8つの重点項目を盛り込んだ新下水道ビジョン加速戦略を策定した。地域のバイオマスステーション化など下水道活用による付加価値向上のほか、複数市町村による点検調査・工事・維持管理等の一括発注、さらにデータベース化した維持管理情報の活用などマネジメントサイクルの確立、防犯カメラ等による浸水情報の収集などを進めるとした。また、国交省・農水省・環境省は8月22日、汚水処理の普及状況を発表した。下水道・農業集落排水施設・浄化槽等による全国の汚水処理人口普及率が初めて90%を超えたが、なお人口5万人未満の普及率は78%に留まっている。都道府県別では、東京・兵庫・滋賀が99%台と高いが、徳島59%、和歌山62%、大分75%で低い。
 また、国交省の無電柱化推進検討委員会は8月10日、脱・電柱社会に向けた中間報告をまとめた。防災、安全・円滑な交通確保、景観形成から無電柱化の必要性が高まっていると指摘。限りある予算の中で防災緊急輸送道路、バリアフリー法の特定道路、世界遺産周辺の道路から優先的に無電柱化を進めるよう求めた。併せて、地域レベルでの合意形成のため都道府県・市町村で無電柱化推進計画の策定も求めた。
◎持続可能性市町村リストを発表 ― 民間研究所
 持続可能な地域社会総合研究所は8月21日、国勢調査(2010年・15年)を基に将来人口を予測した全国持続可能性市町村リスト・マップを発表した。全国の過疎市町村(797団体)では、30代女性(コーホート変化率)が41%の団体で増加、さらに12%の団体では実質社会増を実現していた。一方、30年後の人口減少が50%を超える団体が47%あるなどの厳しい現実も分かった。しかし、人口比1%の定住増加があれば41%の団体で人口安定化(30年後の総人口が1割減未満)を実現できるとした。日本創生会議が14年に896市区町村を「消滅可能性都市」としたが、同総研では「小規模町村の健闘が目立つ」など「田園回帰1%戦略」の有効性が証明されたと強調した。
 一方、文科省は8月14日、東京23区の私立大学の定員増を18年度以降は認めない方針を盛り込んだ大学設置認可に関する告示改正案を公表した。東京一極集中の是正に向けて政府が6月に閣議決定したまち・ひと・しごと創生基本方針2017を受けたもの。なお、総務省が8月8日発表した我が国の人口重心(国勢調査の人口を重さに換算した中心点)は、関市立武儀東小学校から東南東の約2.5キロ㍍だった。前回調査に比べ南南東へ約1.6キロ㍍移動した。長期的にみると、東京一極集中を反映して毎回、東京方面に向けて約1~3キロ㍍移動している。
◎会計年度任用制度の導入でマニュアル ― 総務省
 総務省は8月23日、会計年度任用制度の導入に向けた事務処理マニュアルをまとめた。改正地方公務員法等を受けて、今後、臨時・非常勤職員を任用している全団体で、①臨時・非常勤職員の実態把握②臨時・非常勤職員全体の任用根拠の明確化・適正化③任用・勤務条件等の設計や職員団体との協議、条例・規則の制定など会計年度任用職員制度の整備 ― への対応が必要となるとし、その留意事項などを説明した。また、法施行(2020年4月1日)に向けた今後のスケジュールとして、17年内に実態を把握し、職員団体との協議を経て18年度には任用・勤務条件等を確定。併せて、特別職・臨時的任用の適正化を検討し会計年度任用職員制度に移行するなどの再設定が必要となるなどとした。
 一方、安倍首相は8月3日の組閣後の記者会見で、「働き方改革は実行の段階に入る」と述べ、今秋の臨時国会に関連法案の成立を図る意向を強調した。政府は「罰則付き労働時間上限規制」や「裁量労働時間の対象拡大」「高度プロフェッショナル制度」導入などを盛り込んだ労働基準法改正案を提出するが、連合は8月25日、裁量労働制の対象拡大などの労働基準法改正に反対する集会を開催した。
◎2018年度の予算概算要求を発表 ― 総務省
 総務省は8月31日、総務省重点施策2018と2018年度の予算概算要求を発表した。重点施策では、①地方の一般財源総額確保②ICTによる経済成長実現③働きやすい社会実現④防災・減災、復旧・復興⑤利便性の高い行政運営 ― の5つを掲げた。また、概算要求では前年度比1,063億円(0.9%)増の総額16兆2,836億円を計上。うち、地方交付税(交付ベース)は2.5%減の15兆9,264億円と地方交付税率引上げを要求した。
 また、自立促進に向けた取組では、過疎地域等自立活性化推進事業(シェアリングエコノミー)1億円を新規計上したほか、ローカル10,000プロジェクト18.7億円に東京オリンピック等に向けた推奨モデル枠を新設。さらに、地域運営組織の形成促進0.2億円、集落ネットワーク圏推進5億円、連携中枢都市圏構想推進1.3億円などを計上。働き方改革では、会計年度任用職員制度の円滑導入0.2億円を新規計上したほか、自治体の女性職員の活躍・働き方改革0.2億円、ふるさとテレワーク7億円などを計上。消防・防災関係では、大規模災害時における被災市町村の人的支援のシステム構築0.2億円を新規計上するとともに、企業・大学連携による消防団への女性・若者等の加入促進4.9億円を計上した。このほか、マイナンバーカードの円滑発行219億円、公的個人認証サービス等の利活用促進11.2億円などを計上した。

 

(井田 正夫・月刊「自治総研」編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)