月刊『自治総研』
2017年12月中央の動き
中央の動き |
◎マイナンバー制度の情報連携を本格運用 ― 総務省 ◎改訂・TPP等関連政策大綱を決定 ― 政府 離脱した米国を除く太平洋連携協定(TPP)署名11カ国の閣僚会合は11月11日、ベトナムで「包括的および先進的なTPP」で大筋合意した。これを受けて、政府は11月24日、新たな総合的なTPP等関連政策大綱を決めた。農林水産業支援では国産チーズの競争力強化や木材製品の国際競争力向上・加工施設の効率化、小麦の実質的関税撤廃、牛・豚肉生産者向け赤字補てんの強化など。また、政府調達の合意内容の正確な説明や輸出促進策なども盛り込んだ。 一方、政府の規制改革推進会議は11月17日、林業の成長産業化と森林資源の適切管理推進の提言をまとめた。林業は地域経済の重要な柱となるが、森林所有者の多くは小規模零細で経営意識にも乏しいため、意欲と能力のある森林経営体に集積・集約化が必要と指摘。このため、市町村が仲介となって森林の集積・集約を進める仕組み創設や市町村による森林の公的管理、さらに市町村を超えた森林管理に都道府県が業務を代行できる仕組みなどを提言した。また、同会議の農林ワーキンググループは11月24日、卸売市場を含めた流通構造改革推進の提言案をまとめた。新たな食品流通構造の中で、中央卸売市場の開設者を都道府県・人口20万人以上に限定する規制を撤廃、第三者販売の禁止・商物一致・直荷引き禁止の規定も一律に適用すべきではないなどとしている。 ◎地方公務員の給与改定等の取扱いで通知 ― 総務省 総務省は11月17日、国家公務員の給与改定取扱いが閣議決定されたことを受けて、地方公務員の給与改定の取扱いについて各自治体に通知した。月例給、期末・勤勉手当の引上げでは国に準じるとともに不適正な給与等の見直しを要請。同時に、国家公務員の退職手当の支給水準が2018年1月1日から引き下げられることを踏まえ、地方も国の制度改正に準じて適切な措置を講じるよう求めた。併せて、年内に条例成立が困難な場合も、前回の退職手当引下げ時の「駆け込み退職」事例を踏まえ行政運営に支障が生じないよう必要な措置も求めた。野田総務相は、同日の記者会見で「5年前、駆け込み退職、特に学校の先生が卒業式前に取り分が減ってしまうとお辞めになり国民に非常にショックを与えたことは忘れてはならない」と述べた。 一方、厚労省の柔軟な働き方検討会は11月20日、副業・兼業のガイドライン案を提示した。副業・兼業のメリットに、①労働者は、離職せずに別の仕事に就きキャリアを形成、所得も増加②企業も、労働者が社内で得られない知識・スキルを獲得 ― などを挙げた。一方、留意点に就業時間や健康管理、職務専念義務・秘密保持義務・競合避止義務の確保なども指摘した。検討会は、「テレワーク」関連の指針とともに今年度中にも取りまとめる予定。 ◎防災拠点の公共施設で耐震化調査 ― 総務省消防庁 総務省消防庁は11月17日、防災拠点となる公共施設の耐震化調査結果(2017年3月末)を発表した。熊本地震では一部庁舎等の崩壊で災害対策の支障となったが、対象施設18万2,337棟のうち92.2%の16万8,063棟で耐震性が確保されていた。都道府県別では、東京98.8%、静岡・愛知97.1%、大阪・宮城96.8%で高く、広島81.0%、長崎84.8%、北海道85.1%、奈良85.2%、山口85.5%で低い。施設別では、文教施設98.1%、消防本部90.4%、診療施設89.6%、社会福祉施設86.5%などで、庁舎は81.3%だった。消防庁は同日、公共施設の耐震化診断・耐震改修の推進を各都道府県等に通知した。また、消防庁は11月2日、避難行動要支援者名簿の作成状況を発表した。改正災害対策基本法で市町村に同名簿作成と関係者への提供が義務付けられたが、2017年6月1日現在、93.6%が作成済みで、同名簿の提供先は民生委員が92.1%で最も多かった。 一方、林野庁は11月2日、流木災害に対する治山対策検討チームの中間取りまとめを公表した。今年7月の九州北部豪雨で流木が下流に大きな被害を与えたが、山地災害の発生メカニズムを分析、同様の災害が全国各地で発生する可能性があるとした。ただ山腹崩壊危険地区は18万4千カ所もあるため、荒廃状況を踏まえ事業箇所を選定し対策を実施すべきだとした。 ◎地方自治法施行70周年で記念式典 ― 総務省 総務省は11月20日、地方自治法施行70周年記念式典と記念シンポジウムを都内で開催した。式典では、安倍首相が「急速な少子高齢化に直面しており、国と地方は力を合わせて克服しなければならない。政府は地方の活力なくして日本の活力なしの基本姿勢で臨む」と祝辞。また、山田全国知事会長は「地方分権一括法で国と地方は上下・主従から対等・協力となった。地方自治の重要さを住民と共有し、さらに発展させたい」と決意表明した。このほか、地方自治功労者として網走市や市原市、奈良県川上村、鹿児島県長島町など124市町村と、121団体の民間団体等、地方議会議員・職員ら261人、民間人ら139人を個人表彰した。 シンポジウムでは、「地方自治法70年の歴史と展望 ― 人口減少社会における地方自治制度の在り方について」をテーマに、神野直彦東京大学名誉教授、西尾勝東京大学名誉教授、蒲島郁夫熊本県知事、谷口尚子慶応大学准教授、山崎結子青森県外ケ浜町長が、70年を経た自治法や地方行財政の課題をめぐり議論した。 ◎地方大学の振興策等で最終報告素案 ― 内閣府 内閣府の地方大学振興・若者雇用等有識者会議は11月21日、最終報告(素案)をまとめた。全国の大学生287万人の40%が東京圏に集中する一方、地方の大学では18歳人口の減少等で経営が悪化。東京一極集中是正には地方大学振興策のみならず東京の大学定員抑制をセットで立法措置により抜本的な対策を講じるべきだと強調。具体的には、東京23区では国立・公立・私立大学(大学院・専門職大学・留学生は除外)は定員増を認めない。なお、スクラップ・アンド・ビルドによる学部・学科の改変等は認める。また、地方大学の振興では自治体・地方大学・地元産業界によるコンソーシアムを構築し、地方の振興計画を策定。国は、大学への補助金配分の見直しや新たな交付金で支援するとした。なお、全国知事会は11月24日、「全国知事会からの提言」に「東京23区内の大学の定員増抑制の立法措置を講じる」ことを盛り込んだが、小池東京都知事が反対を表明、その旨が提言に明記された。 一方、梶山まち・ひと・しごと創生相と地方六団体の意見交換会が11月20日、開催された。梶山担当相が地方大学振興のため「地方大学・地域振興交付金」を創設するなどの方針を示した。六団体側からは「子ども医療費の全国一律保障制度の創設」(全国市長会)、「地方大学の保有資産有効活用」(全国町村会)、「地方創生推進交付金の総額確保と申請手続き簡素化」(全国市議会議長会)などの意見が出た。 ◎2018年度地方税制改正で意見 ― 地方財政審議会 総務省の地方財政審議会は11月21日、2018年度地方税制改正に関する意見をまとめた。森林環境税(仮称)を国税として創設。個人住民税均等割に上乗せして市町村が賦課徴収、森林整備を行う市町村に森林環境譲与税として譲与する仕組みを提案した。また、地方消費税の清算基準の抜本改正も提案。3つの配分基準(統計データ・人口・従業員数)のうち従業員数基準を廃止。また統計データでも持ち帰り消費が推定される家電大型専門店や自販機の販売額なども除外する。このほか、①機械・装置等の固定資産税の特例措置拡大は慎む②ゴルフ場利用税の廃止は不適当 ― なども提言した。なお、11月24日の全国知事会議で東京都などが地方消費税の配分基準見直しに反対を表明。東京都税制調査会は11月24日、同配分基準について人口基準を引き上げず統計データに応じた部分を充実するよう求める答申を発表した。 一方、財務省の財政制度等審議会は11月29日、18年度予算編成に関する建議をまとめた。18年度予算も歳出改革の「目安」を遵守すべきだとした上で、地方財政では①基金残高の増加を財政資金の効率的配分に反映②地方税収の上振れ分を地方交付税総額削減に反映 ― するよう提案した。 ◎地方自治の憲法改正草案を公表 ― 全国知事会 全国知事会は11月24日、2018年度税制改正の提案と防災・減災対策の緊急決議を採択。また、憲法における地方自治の在り方検討WT報告書を公表した。憲法改正では①地方公共団体は基礎的・広域的な団体とし、国は原則として国家存立・全国的政策等を担い、国・地方団体間で適切な役割分担を図る②国は政策の立案・実行に当たり地方六団体と協議の場を設置③地方団体は法律等の関与で裁判を受ける権利を有する④参議院選挙の選挙区設置では広域的地方団体ごとの区域を単位とする選挙区を含む ― などの改正草案を示した。 また、同日、政府主催の全国知事会議が開催され、安倍首相や各閣僚と意見交換が行われた。知事会側は、「憲法改正に向けた国民世論の喚起」を要請したほか、地方の基金増加の地財余裕論は誤解であり地方一般財源の確保、消費税増加分の使途変更では地方の声を反映、東京23区の大学定員増抑制の立法措置などを求めた。これを受けて、安倍首相は、憲法改正は(国会の)憲法審査会で議論するものとした上で、「知事会で熱心に憲法改正を議論していることに敬意を表する。皆様の提案は非常に重要だと考えている。積極的な発言を期待している」と述べた。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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